ガチャ192回目:最後のトロフィー

 俺達は再びエンキに乗り込み、最初の砂場へと移動を始めた。最初の砂場は、現在この第二層で一番人気が少ない場所だからな。強化体を沸かせるには一番都合が良い。

 まあ、今までの傾向からして強化体は通常版のレベル2倍。つまりは70な訳だから、『ジャイアントロックゴーレム』と同等のレベルになるはずだ。苦戦はしないとは思うが、それでも一応世間には強化体は内緒な訳だし、誰かに見られるのはあまりよろしくない。秘密裏に湧かせて、とっとと倒してしまいたい。


「それじゃ、釣りよろしく」

「はいですわ」


 といったところで、アイラはにこやかに微笑んだ。

「ご主人様? 今日私、いつも以上に仕事をしている気がします」

「……そうだね」

「帰ったらご褒美を頂けると」

「……わかった。労わせてもらうよ」

「だ、旦那様」

「もちろんアヤネもな」

「はいですわ!」

『ゴ』


 エンキが隣でサムズアップした。君らゴーレム達はそれが好きだね?

 そうして難なくゴーレムを撃破していき、100体討伐を完了すると、いつものように煙が発生し、猛スピードで岩山を駆け上がって行った。


「連れて参ります」


 アイラは返事を待たずに煙を追いかける。彼女には煙は見えていないだろうに、俺の視線の動きだけで出現を感知してるよな。そんなことを考えながら眺めていると、岩山の頂上付近に、薄っすらと見えた煙が急激に膨張し、中からゴーレムが現れるのが視えた。

 けれど、あまりに距離がある為か『真鑑定』が機能しない。だが、目算……『ストーンゴーレム』と『ジャイアントロックゴーレム』の中間くらいの大きさだろうか?

 アイラが一撃を入れ、こちらに向かって走って来る様子が見えた。アレからは危険な香りはしないし、問題なさそうだな。


「エンキ、奴の動きを封じてくれ。俺がトドメを刺す」 

『ゴ!』

「旦那様、わたくしは?」

「応援してて」

「はいっ、旦那様ファイトですわー!」


 アイラはエンキの股下をくぐって後ろに回り、代わりにエンキが前に出て掴み合う。

 さて、今の内に……。


*****

名前:ストーンゴーレム

レベル:70

腕力:675

器用:75

頑丈:900

俊敏:30

魔力:300

知力:15

運:なし


装備:なし

スキル:鉄壁Ⅱ、城壁Ⅱ、砂塵操作Lv2、限界突破

ドロップ:ゴーレムコアⅢ、ストーンゴーレムのトロフィー

魔石:大

*****


 うーん……弱いな。エンキとの勝負は掴み合いから押し合いへと変化しているが、どう考えてもエンキが勝っている。エンキ、スキルすら使ってないだろ。

 『限界突破』を持つとはいえ、やっぱり強化体は『レアⅠ』を強化しただけに過ぎないか。さっさと仕留めてしまおう。


「『紅蓮剣』」


『ボッ!』


「おっ?」


 トドメに武技スキルを使ってやろうと思ったのだが、剣に纏わる炎がいつも以上に燃え盛った。

 そういえば、『炎の刻印』を手にしてからまだ試していなかったな。


「……これなら」


 俺はとある事を思い付き、エンキの頭の上に乗って剣を大きく振りかぶる。


「『剛力Ⅲ』『怪力Ⅳ』『阿修羅』『金剛力Ⅱ』『力溜め』『衝撃』」


『ボボボボッ!!』


 炎が大きく膨れ上がり、莫大な力が剣に秘められているのを感じた。あまりの熱気に、持ち手の俺ですら目が眩む。あまり長い間維持はしたくないな。


「『真鑑定』」


 名前:飛剣・鳳凰Ⅲ

 品格:≪固有≫ユニーク

 種別:武技スキル≪剣≫

 説明:武技スキル・紅蓮剣の力を限界まで引き出し、進化させた姿。使用する度、魔力を500消費する。直線状の敵を焼き尽くす。斬撃、貫通、炎のダメージを与え、炎上させる。


「……よし、飛べ!」


『キィィィィ!』


 剣を振り下ろすと、炎はたちまち鳥の姿へと変え、甲高い音で鳴きながら『ストーンゴーレム』のコアを貫いた。そして炎はコアだけでなく、その全身を焼き尽くしていく。


『ゴゴォォ!!』

『ゴ!?』


 エンキは慌てて振り解き、後ろへと下がる。石相手に炎は、ダメージが通りにくいイメージなんだけど、技の威力が高ければ相性など関係ないらしい。『ストーンゴーレム』は必死に炎を振り払うが、炎はいつまでも消えず燃え続ける。

 コアを貫かれているにも関わらず、奴はしぶとく抗い続けたが、炎の方が強かったようだ。次第に全身から力が抜けていき、逆に炎は力尽きるまで燃え続けるのだった。


【ストーンゴーレムのトロフィーを獲得しました】


【レベルアップ】

【レベルが56から88に上昇しました】


「ふぅー……。中々強力な技に変貌したな」


 いきなり『Ⅲ』だったのは驚いたけど、バフを乗せ過ぎたかもしれないな。

 恐らく『炎の刻印』と『衝撃』だけでも無印の『飛剣・鳳凰』くらいには進化していたんじゃないだろうか。バフを乗せれば強化されるのなら、『阿修羅』込みで『雷鳴の矢』を使えば『Ⅱ』になってくれるかも?


『ゴゴ?』

「ん? ああ、すまんエンキ。考え事してた。頭借りっぱなしだったな」

『ゴゴ!』


 気にしないでと言わんばかりの様子に微笑ましく思い、地面に降り立つ。するとアヤネが飛びついて来た。アイテムを回収したアイラも興味深そうにやってくる。


「旦那様、お疲れさまでしたわ!」

「ご主人様。先ほどのはまた、スキルが進化したのですか?」

「そうみたいだ。どうやら相性の良いスキルと組み合わせると、武技スキルが進化するみたいだな」

「なるほど。では私の武技スキルも、使い方次第で化けるかもしれないのですね」

「だと思うよ。……そう言えばアイラって、武技スキルいくつあるの? 『真鑑定』でも見れないから知らないんだけど」

「おや、そうだったのですか? ……では内緒です」

「ええー」

「女性は秘密が多い方が魅力的というではないですか」


 確かにそう言うけど、アイラの場合秘密というか謎が多すぎるんだが。

 そうして戦いも終わり、気を抜いた瞬間だった。俺の目の前に、突如としてウィンドウが表示された。


【管理者の鍵 525-2の取得条件が揃いました】

【対象者を専用エリアに移動させます】


「は?」


【3】

【2】


「ちょ、ま――」


【1】


 俺の意思とは無関係に、世界がブラックアウトした。

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