ガチャ191回目:エンキ、移動要塞になる

「よし、移動するか。次の移動先は人がいるから、少しゆっくりめに行こう。エンキも、攻撃されても反撃しないようにな」

『ゴ!』


 そうしてアヤネとアイラは両手に乗り、念のためコアの前で『金剛外装Ⅲ』を展開。俺は革紐を結びなおして、エンキの頭の上に座り込んだ。ここなら目立つだろ。……白旗でも掲げてみるか?


「ああ、そうだ。アイラ、拡声器ある?」

「ございますよ」


 何でそんなの常備してんの? とは思うが、アイラだしな。それに聞かなきゃ後で絶対拗ねるから、俺としても半ば、持ってる前提で言うようにしてるんだが。


「じゃあ、それで近くにいる冒険者に声掛けしながら行こう」

「はい、こちらを」

「……白旗もどうも。『あー、テステス』」


 エンキの首裏に白旗を括り付け、拡声器の動作確認を行う。問題なさそうである為、そのまま目的地へと進み始めた。

 案の定というか、エンキを見かけた冒険者達は驚愕していたが、事前に声掛けをしながらの移動であるためか、大きな混乱にはつながらなかった。これは後で、掲示板がカオスなことになりそうだが、それはそれで楽しみにしておこう。俺達の行く先に興味を惹かれたのか、またしても何組かのチームが観客と化したままカルガモの親子のように追従し、3カ所目に到達した。

 これ、狩りの邪魔してるんじゃないかな……?


「ご主人様、ご安心ください。彼らは勉強のために見ておられるのです。例え今日の成果が多少落ちたとしても、今後の為にしているのですから、ご主人様が気に病む必要はありません」

「そうか」

「旦那様、わたくしもゴーレム釣りに参加しても良いでしょうか」

「走り釣り?」

「いえ、アイラほど素早くはありませんから、投石や魔法などで……」

「お嬢様。『俊敏』は500はある訳ですから、走り釣りをしても問題はないかと。ですが無理は禁物です。最初は3から5匹くらいでやってみましょう」

「やってみますわ!」


 気合を入れるアヤネを撫でる。そうしてアヤネとアイラによる囮役2枚の、迎え撃ちに俺とエンキのフォーメーションでゴーレム狩りを開始した。

 弓はさっき使ったばかりなので、俺はもっぱら剣と格闘でゴーレムのコアを破壊していたんだが、エンキはもう単純に、頭上からのパンチで相手のコアごと、ぺちゃんこにしていた。

 超巨大ゴーレムvs無数のゴーレムという構図に観客は大盛り上がりだった。……派手で面白いけど、そっちを見てても参考になんのかね。

 そんなこんなでゴーレム100人組手は問題なく完了した。その後の『ストーンゴーレム』戦では、道場で学んだ技術を駆使して、相手の攻撃を軽くいなして懐に潜り込んでコアに一撃を入れて終了。やっぱり、弱点が露出してる相手だと簡単に狩れるな。


【レベルアップ】

【レベルが13から56に上昇しました】


 低レベル補正がかかるなぁ。『レアⅡ』が出るまでガチャを回さないってのが一番レベル効率はいいんだろうけど、やっぱ何かの拍子に筐体が破損するのは怖いしな。安全第一で行こう。


「さて、『レアⅡ』は……出ずか」


 霧散した煙を見て、次へ移動する準備を始める。

 エンキには『砂塵操作』を与えるが見た目の変化は特に起きないようだった。そうして本日4カ所目の砂場地帯でも『レアⅡ』は出現せず、エンキに『砂塵操作』を与えたところで、エンキが何かに気が付いたようだ。


『ゴ!!』


 エンキが砂を集め、その場で圧縮し、岩の槍を生み出した。


「まさかそれを投げれるのか?」

『ゴゴ!』


『ドパァン!』


 エンキが投げた槍は砂場に直撃すると、まるで爆弾が爆ぜたかのように砂が吹き飛び、いくつかのゴーレムが煙となって消えた。


『ゴ!』


 そしてエンキが手をかざすと、槍は意思を持っているかのようにエンキの手元へと戻って来る。


「なるほど。『砂塵操作』で作った槍だから、手元から離れても有効圏内なら呼び戻せるんだな?」

『ゴ!』

「しかし、エンキの体長からして飛距離はあまり出せていませんね。目測30メートルほどでしょうか」

「ここに『投擲』や『槍術』スキルがあれば変わってくるかもしれませんわ」

『ゴゴゴ』

「即席の武器としても使えるし遠距離も行けると。エンキはどんどん強くなるな。頼もしいよ」

『ゴゴ!』


 でも、それって結局砂のあるところ限定なんだよな。

 今は砂場のある第二層をウロウロしてるから、身体が削れても『魔力』さえ補充してやれば無尽蔵に回復出来るし、槍も作り放題だ。けど、砂の無い階層やダンジョンに入れば回復は『自動回復Ⅳ』に頼りきりになるし、武器を作成する為の砂を身体から賄うなんてもってのほかだ。

 対策があるとすれば……。


「アイラ」

「少し厳しいですね」


 考える前にアイラを呼んだのに、既に察知されていた。

 彼女の鞄に砂を入れて貰おうかと思ったんだが、駄目そうか……?


「そんなに?」

「私の持っている鞄は、今後ご主人様が使いそうな備品に始まり、レジャー用の道具や家具が入っております。それに、ドロップ品の回収をするためにもある程度の空きは欲しいです。またご主人様が考えているように、がかなり占有する事は確定していますから、それほど余裕はありません」

「そうか……」


 アイラは日ごろからその鞄にポンポン詰め込んでいるから、何でも入るもんだと思い込んでいたけど、やっぱり限界はあるんだな。


「エンキ、その技は強いけど、砂が無尽蔵に取れる場所以外では基本的に封印しよっか」

『ゴゴ……』

「ま、その代わりこの階層では存分に使ってくれ」

『ゴ!』


 さて、今ので砂場は一周したし、次で強化体は出てくれるかな?

 まあ『レアⅡ』が出た以上、多分出てくれそうではあるけどな。……あ、でもトロフィーはどうなるんだろうか? それはちょっと不安だし、もし強化体が出てきたとしても、それは自分の手で倒すか。

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