ガチャ189回目:エンキ、乗り物に
『ゴゴー!』
「きゃーっ! はやいはやいですわー!」
「あはは!」
「これは中々爽快ですね」
俺達は今、全力ダッシュするエンキに乗って第二層を移動していた。アヤネとアイラは大事に抱えられた両手の中にすっぽりと収まり、俺はエンキに肩車をしてもらっている。例によってアイラが革紐を用意していたので、それを使って乗馬するような感じで繋いでみたのだ。
エンキは喋りはするけど呼吸をしているわけではないので、革紐を口に噛ませても別に苦しくは無いようだった。
「ようやくここで『騎乗』が役に立ったな」
「おや、毎日使われてるではないですか」
「……いや、乗ってるのは主にお前だろうが」
「だ、旦那様。わたくしは……」
「アヤネは無理に混ざらなくて良いからなー」
「はぅぅ」
『ゴ?』
そんな感じで緩い空気で走っているが、今はまだ人がいる道は避けて進んでもらっている。人前に出る時はどんな言い訳をするべきだろうか。モンスターをテイムするスキルがあるとはいえ、それは国外の話であって、この国ではまだ見つかってないらしいんだよなぁ。
「ご主人様、ご安心を」
「そう?」
さすがアイラだ。何か解決策があるんだろうか。
「ご主人様は堂々としていればいいのです。なにせAランクですし、ご主人様のバックには複数の支部長がいます。誰も詮索は出来ません」
「ああ、なるほど……。ゴリ押しね」
とはいえ、せっかく人前に出すのならもっと立派な姿になったエンキを出してやりたい。今はまだ3メートルちょっとの小型巨人だけど、『砂塵操作』のレベルを上げていけば、いずれは『ジャイアントロックゴーレム』やそれ以上のサイズへと進化していくはずだ。
今からちょっと楽しみである。
「旦那様、次のゴーレム地帯が見えてきましたわ!」
「よし、狩るか!」
そうして再びアイラを囮にゴーレムを集めて貰い、俺とエンキで半分ずつ討伐してみた。
結果は……。
「……ふむ。モンスターのドロップに異常なし。レアモンスターの煙も発生を確認。やっぱりエンキを含めたゴーレム達は、全員製作者である俺が倒したものとして、ダンジョンに扱われるみたいだな」
『ゴ!』
「予想はしていましたが、やはり凄まじいですね。何のデメリットもないというのは、少し気になりますが……」
「それは俺も思うが、今は気にする必要は無いんじゃないかな」
「ですが、落とし穴がないとは断言できない以上、数を増やすのは控えてくださいね?」
「旦那様、決して無茶はなさらないでくださいまし」
「わかってる。2人とも心配してくれてありがとな」
「えへへ」
「それが私達の役割ですから」
二人纏めて抱きしめると、アヤネは甘えてくるがアイラは恥ずかしかったのかそっぽを向き、咳払いをした。
「……おほん。さて、エンキの有能性が証明できたわけですが、複数のモンスターが固まって存在するような『ハートダンジョン』第二層などでの狩りは加速するでしょうね」
「あと活躍しそうなのは『上級ダンジョン』第一層とかかな」
「ここならヒルズウルフなどに有効ですし、『中級ダンジョン』や近郊のダンジョンにも、いくつか活躍できそうなポイントが浮かびますわ!」
うーん、これは色々と出来る幅が広がるな。
「これもエンキが優秀なおかげだな。すごいぞ!」
『ゴ! ゴ!』
両手でばんざいをするエンキ。うーん、サイズが大きいが、これはこれで可愛いもんだな。
その足元には、『ストーンゴーレム』の亡骸が転がっている訳だが。さーて、次は出るかな……。
待つ事約10分。煙は膨張し、岩山へと移動し始めた。
「湧いてくれたか。アイラ」
「お任せを」
奴の牽引はアイラに任せ、俺は迎撃の準備をする。エンキの両手を地面の代わりにし、4メートルくらいの高さまで持ち上げて貰う。事前にエンキには指示を出しておいたので、スムーズに事が運んだ。
「『雷鳴の矢』」
『バチバチバチッ!』
エンキとの巨人バトルもさせてみたいところではあるが、『砂塵操作』のレベルもあって基礎的なステータスや大きさは奴の方が上だろう。様々なスキルを得たとしても、心配なのが親心というものだ。
ネックレスの効果でわざわざ攻撃を仕掛けに行ってもらう必要もないし、出会い頭に即殺してやる。
『ゴオオオオ!!』
まだまだ距離があるというのに、遠目に『ジャイアントロックゴーレム』が出現し、近くにいたアイラを捕まえようと追いかける姿が目に入る。相手のコアは大きいし、この距離でも無理すれば当てられそうではあるが、『雷鳴の矢』は『力溜め』の影響で再装填に5秒は掛ってしまう。
『力溜め』はこの前『Ⅱ』にグレードアップしたが、どうにも5秒という制限は変化がないみたいなんだよな。その代わり、威力の方が向上したらしいが。
「ご主人様!」
考え事をしている内に、アイラが足元へとやって来た。まだ奴との距離はそれなりにあるが、十分射程圏内だ。チャージも完了している。
「発射!」
『ズパァン!』
空気が破裂し、紫電の光が奴の腕を胸部のコアもろとも貫いた。
『ゴオ、オォ……』
『ジャイアントロックゴーレム』は前のめりに倒れ、全身から煙を噴きだす。
【レベルアップ】
【レベルが72から83に上昇しました】
エンキの手から飛び降り、奴の煙が霧散する様子を眺めた。
「よし。もうこいつは怖くないな」
「流石ですわ、旦那様」
「余裕なのでしたら、次は近接戦を試されますか?」
「そうだなー……。そうした方が良いよな?」
「ご主人様にお任せします」
「分かったよ、やってみるよ」
まあ、後に控えている『ストーンゴーレム』の強化体が、ただただ雑魚なのか、特異な能力持ちか、『レアⅡ』よりも強いかは、予想できないもんな。近接戦をすることになったとしても、巨人相手の戦いには慣れておく必要はあるだろう。
果たして、どんな強さの奴が現れるやら。
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