ガチャ186回目:愛の距離

「……おかえり。それで、どれだけ狩ったわけ?」


 午前中の検証を終えて帰ってきた俺達は、まっすぐにいつもの会議室へと向かった。中では頭を抱えたアキと、申し訳なさそうな顔をしているマキが出迎えてくれた。何かあったんだろうか?


「えーっと……。懸念されていた検証として、少し距離を離した場合。とんでもなく離した場合。それから思い付きで、別の出現地点に持って行った場合の3つで検証して来たんだ。倒した数としては『ホブゴブリン』1体。『ジェネラルゴブリン』1体。『ボスウルフ』4体。『ワーウルフ』2体だね。最後の検証で中々『レアⅡ』が沸いてくれなくて参ったよ。あとはレベルが72になったのと、『俊足』が確定ドロップになったことかな。結局、何個出たんだっけ」

「355個です」

「だってさ」


 『ボスウルフ』の1体は、他所が湧かせた奴を貰ったからヒルズウルフの討伐数は少なくなると考えていたけど、結局『ボスウルフ』が召喚する取り巻きを積極的に狩ってたから、やっぱりそれなりの数にはなったな。

 2人には思い付きで行った実験について語る。


「で、結局B地点に近い場所に持ってった奴は、煙の帰還場所はAだったってわけ。他の思い付きも気にはなるけど、優先度は低いかな。とりあえず、強化体の条件が滅茶苦茶にならなさそうな結果で一安心だよ」

「……そう。お疲れ様」

「で、何があったのさ」


 そう言うと2人は顔を合わせた。


「ショウタさん、このネックレスなんですけど」

「『愛のネックレス』ね」

「あ、はい。愛の……」


 まだ正式名称に慣れてないマキが可愛い。


「んんっ。これの効果なんですが、覚えてますよね」

「ああ。これの効果はちゃんと発動してたよ。一切手出ししてないアヤネも途中でレベルが上がって……。あれ、まさか」

「そうよ。あたし達もレベルが上がったの! レベルが60だったマキから先に上がって、遅れてあたしも80から82に上がったわ」

「それは……」

「凄いですわ!」

「ダンジョンの内外関係なしだったのか……。確かにこれは、破格の隠しスキルだな」

「それで、その……」

「申し訳なくなっちゃったと?」

「はい……」


 まあ、安全地帯で待ってるだけで勝手にレベルが上がるっていうのは、確かに思うところはあるかもしれない。けど、俺としては彼女達の安全度が俺の活躍に比例して上がっていくのであれば、何ら問題はないんだよな。別に、元の経験値が分割されて減ってる訳じゃないんだし。

 問題があるとすれば、私生活で力の調整が難しくなるくらいか。


「ご主人様もこう仰ってますし、お気になさらずとも良いのでは?」

「え? まだ何も言ってないんだけど」

「まあでも、あたしとしてはありがたいかな。強くなれるのは純粋に嬉しいし」

「なら、姉さんだけでも狩りに……」

「ダーメ。前にも言ったけど、あたしはマキの傍を離れるつもりはないから。良いじゃない、ショウタ君がこう言ってるんだから、棚ぼたと考えれば」

「いやだから何も言ってないって」

「顔が言ってたのよ!」

「あ、はい……」


 あのアキにすら悟られるって、考え事してる時の俺、どんな顔してんだよ。


「何か失礼な事考えてない?」

「滅相もございません」

「ふーん?」


 まだ精度は低いらしいが。


「先輩、気にしすぎですわ。わたくしだって、今日はほとんど何もしていませんもの」

「そうだっけ?」

「はい。後ろで応援してましたわ!」


 んー。ワンパンを無理に入れる必要がなくなった分、自由に動けるようになったことで陰で結構活躍してた気がするんだよな。例えばレアモンスターにカウンター決めたり、自衛のために雑魚を蹴散らしたり、俺の方に流してくれたり。その動きは、出会った頃とは雲泥の差だ。

 まあ、マキを説得するために言ってくれてるのなら良いけど、本気でそう思ってたら後で訂正してあげないとな。


「まあ、俺としてはレベルが上がる事で2人がもっと綺麗になってくれるのなら、大歓迎なんだけど」

「そ、そう?」

「ショウタさんがそう仰るなら……」


 2人は嬉しそうにはにかんだ。

 そうしてレベルアップの件は納得してもらい、改めて午前中に得たアイテムの整理をすることになった。


「では、『極小魔石』はゴーレム達の食事用に100個ほど残して、残りは協会に」

「はい。承りました」

「レアモンスターから得た『中魔石』と『大魔石』だけど、こっちは午後ゴーレム地帯に行く時に、実験で使うからキープで」

「おっけー。じゃ、次に……大変だけど『圧縮』頑張って」

「ご飯食べてからで良い?」

「勿論です!」


 そうして昼食を採り英気を養ってから『俊足』を纏め始める。

 得た『俊足』の数は355個。旅行前の在庫の内『俊足』系統は『俊足』3個と『俊足Ⅱ』3個が売れ残っていて、『俊足Ⅲ』は2個中1個だけ売れて、残っていた分はアヤネに今朝あげたんだったな。

 『ワーウルフ』からドロップした『俊足Ⅱ』も2つ合わせて、結果は……。


 『俊足』2個。

 『俊足Ⅲ』3個。

 『俊足Ⅳ』5個。


 となった。

 まずは『俊足Ⅳ』を3つ使い、俺の『俊足』をⅤにアップさせ、アヤネは出発前に『俊足Ⅲ』を覚えさせていたので、彼女にも『俊足Ⅲ』を3つ与え『俊足Ⅳ』にする。んで、肝心の『俊足Ⅳ』が2つも余ってしまったのだが……。


「私達は既に『俊足Ⅱ』を覚えてますし、使いませんからね?」

「でも咄嗟に逃げる時にはいるよね? それなら上位のスキルにアップグレードしておいた方が良い。『Ⅱ』より『Ⅳ』の方が速度も出るし、『魔力』の効率も良いみたいだからから長く使えるでしょ」


 この辺は、『真鑑定』で確認済みだ。


「あぅ。確かにそうですけど……」

「この前の突発的なスライム戦みたく、何が起きるか分からないんだから、覚えておいて」

「マキ、諦めよ? 使う可能性が少しでもあるものは受け取る。ショウタ君と約束したでしょ」

「……わかりました」


 渋々とだが、マキが受け取ってくれた。アキにも渡して、と。あとは『ワーウルフ』のスキルをいくつか分配するか。

 俺は『格闘術Lv2』2個、『体術Lv3』1個。

 アヤネは『迅速Ⅲ』1個。

 アイラは『迅速Ⅲ』1個、『体術Lv3』1個、『暗殺術Lv2』2個を取得した。


 やっぱ『レアⅡ』はスキルドロップが美味しいよなぁ……。ただし『ジェネラルゴブリン』は除く。今更無印の『統率』じゃ、心は動かないからなぁ。

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