ガチャ183回目:ちょっとした有名人

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 いくら支部長から認められていようとも、専属が所属する協会であろうとも、ランクがAであろうとも。ダンジョンに入場する際には都度都度協会に赴き、入場の表明をして証明書の発行をしなければならない。

 その為、皆一緒に家を出て、俺達は正面から、アキとマキは裏口から協会へと入るのだ。


 それは、久々に協会の玄関を通った時に起きた。


「なあ、あそこにいる人達って……」

「え? あの鎧に、メイド服……」

「どこかで……」

「動画だ! あの動画で戦ってた人達だ!」

「うわ、本当だ。じゃあもしかして」

「ああ、間違いない。レアモンハンターさんだ!」

「おお!!」

「すげえ、本物だ!」

「休暇は終わったのか」

「随分短いな。ちゃんと休めたのか?」


 久々の『ダンジョン協会第525支部』だったが、たった数日で俺達……。特に動画に映っていた俺とアイラの顔は知れ渡ったらしい。代わりに動画の視点主だったアヤネはそうでもなさそうだけど。だが、俺達と一緒にいることでカメラ役の子であることは一目で分かるだろう。

 なぜならアヤネは身長が146cmと、かなり小柄なのだ。あの動画のを知っていれば、自ずと答えに辿り着くだろう。


「随分とまあ、手のひら返しが露骨な方々ですね」


 アイラは聞こえないように小さくぼやく。まあ、あの連中の中には当初、俺を罵倒してた奴が少なからずいるかもしれない。けど、どうだっていい事だ。羨望も、尊敬も、嫉妬も。少し前までは求めていなかったと言えば嘘になるが、今はそれよりも、ダンジョンの先を見る事にこそ興味がある。


「良いんじゃないか。ダンジョン内での探索中に、邪魔されないのならなんだって」

「確かに、ご主人様はそういう方でしたね」

「流石旦那様ですわ」

「さ、2人と合流して、入場証を貰いに行こう」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 その後、第一層で新人冒険者達から遠巻きに見られたり、第二層に着いても黄色かったり野太かったりする声援を受けたり、明らかに初心者ダンジョン向けじゃない装備の人達から声を掛けられたりと。俺達の顔と、レアモンハンターの知名度の高さには少しばかり驚かされた。

 特に最後の連中。あれ間違いなく『レアⅡ』狙いだろ。……『運』が足りているのかは知らないけどな。


 昨日の歓迎会に参加して分かった事としては、レアモンスターの出現には『運』が必要であることは、割と一部の冒険者の中では知られているらしい。だが、『個人で』100体連続討伐することで抽選に入る事は、義兄や義姉の専用チーム以外ではあまり知られていないようだ。

 何故なら皆チームを組んでいる為、意図してやらない限りは個人での100体討伐なんて困難だからだ。更には、100体で絶対に湧くような『運』の持ち主などそうそういない為、何日もの遠征で長期的に戦い続ける中で、たまたま条件と成功判定を満たした時にのみ、レアモンスターが現れるのだ。

 ここに来ている冒険者の中で、本当の出現方法を把握している者は、果たしてどれだけいるのだろうか。……いや、居ないかもしれないな。


「それで旦那様、今日はどうされますの?」


 彼らから少し距離を置いたところで、アヤネが確認しに来る。そういえば、何するかは言ってなかったな。


「ゴーレムの強化体はどうしても時間がかかる。だからそれらは午後に回して、『レアⅡ』は引き離した状態でも出現するかを試してみようと思う」

「了解ですわ。何から行きますの?」

「全部試そう、と言いたいところだが、2種類分かれば十分だろ。まずはゴブリンからだな」

「承知しました。さあ、お嬢様」


 アイラはいつものように膝を付くが、今日のアヤネは一味違った。


「アイラ。わたくし、今日から自分の足で歩きますわ」

「お嬢様?」

「わたくし、もう十分にステータスは上がりましたもの。それに、足手まといは嫌ですし、良き妻になるには、より良い運動をしないといけませんわ」


 アヤネは胸を張ってそう答えた。アイラは感動して声が出せないでいる。

 確かに、最近はアイラでも苦戦する相手と交戦する事が増えて来ている。そんな中、敵の攻撃が激しい時にアイラの手がふさがるのは何とかしたいところだったよな。

 アヤネの思惑は何だか少し違うところにありそうだけど。『蒼霧』の話を聞いた時に、レベルが上がれば上がるほど、不摂生な身体にはなりにくいって話もあった気がする。

 だけど、アヤネがやる気になっている以上、水を差す気にはなれない。ここは見守る事にしよう。


「アイラ、そういうことらしいからアヤネに余ってる『俊足』と『迅速』を」

「承知しました。『迅速』の在庫はありませんので『俊足Ⅲ』になります」

「じゃそれで」

「ありがたく頂戴しますわ!」

「よし、それじゃ行くか」

「はいですわ!」

「ドロップの回収はお任せを」



◇◇◇◇◇◇◇◇



「今ので100です」

「了解」


 今まではゴブリンとキラーラビットが混ざっている場所は避けて動いていたが、今ならアヤネが率先して邪魔な方は倒してくれるため、10分ちょっとで目標の100匹を討伐する事が出来た。

 やっぱり、自分の足で動いて倒せる人間が1人増えるだけで機動力も殲滅力も跳ね上がるな。それに、今のアヤネは魔法だけしか取り柄が無かった、出会ったばかりとは違う。『身体強化Lv4』に加え『剛力Ⅱ』『怪力Ⅱ』『金剛力』のステータス上昇スキル。更には『統率』の恩恵と高レベルになったことでデフォルトの『腕力』は258もある。

 その数値は、一般的な前衛志望の冒険者のLv30~50程度はある訳だ。そんな彼女が振り回す杖の攻撃が弱い訳が無い。キラーラビット程度、一撃で屠れるくらいの威力は秘めていた。


「あら、旦那様。先客ですわ」

「お?」


 煙と一緒に移動すると、湧きポイントで休んでいる一団がいた。

 ……休憩か? それとも、横取り狙いか?

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