ガチャ182回目:忘れ物整理

「旦那様、完全に忘れてたって顔ですわ」

「正解です、お嬢様。ご主人様の気持ちが読み取れるようになってきましたね」

「ふふん、やってやりましたわ!」


 主従漫才が繰り広げられる中、俺は他に忘れてるものがないか必死に思い出していた。


「安心してください、ショウタさん。他は大丈夫ですから」

「……ほんとに?」

「ほんとほんと。スライム戦で手に入れたものだけしか残ってないよ」

「……ってことは、魔法もあるじゃん!」


 3つの新種魔法も、完全に記憶からすっぽ抜けていた。そういえばサクヤお義母さんも、『極光魔法』について触れてたじゃないか。なんで忘れちゃうかなー……。


「アイラ、全部出して」

「はい。こちらになります」


『ゴトゴトッ』


 アイラはスキルを順番に並べていくが、やはりというかその数は尋常では無かった。

 そうだよな。あいつら最初は5匹ずつ出て来たもんな。そりゃスキルの数も増える訳だ。


 物理耐性 25個

 物理耐性Ⅲ 6個

 物理耐性Ⅴ 1個

 自動回復 25個

 自動回復Ⅲ 7個

 極光魔法Lv2 2個

 宵闇魔法Lv2 2個

 混沌魔法Lv2 1個


「うへぇ……。えぐい数だ」

「ショウタさんが修行中にこっそりと調べてみましたが、全て詳細不明スキルでした」

「サクヤさんが驚いてた通り、本当に一握りの人しか取得していないスキルみたいね」

「そうなんだ……。じゃ、とりあえず『物理耐性』から見ていくか」


 名前:物理耐性

 品格:『遺産レガシー

 説明:所有者に対する物理的影響を(5xレベル値)%軽減する


「……こりゃまた高性能な」

「『金剛外装』とは別ベクトルで高性能なスキルですね」

「しかもこれ、パッシブでしょ? 消費魔力もないし、最低でも常に5%軽減し続けるとかその効果は計り知れないわ」

「『Ⅴ』なら25%軽減になるわけか。アキ」


 俺は立ち上がって彼女を手招きする。


「んー?」

「ここに蹴り入れてくれる? 本気で」

「おっけー」


『ドガッッ!』


 軽い返事とは裏腹に、重い一撃が腕のガードを揺さぶった。旅行中の修行で散々アキの蹴り技を受けてきたが、やっぱり強力だな。『レベルガチャ』取得以前に食らってたら、多分ガードごと持ってかれて死んでいるレベルだな……。


「それじゃスキルを使って……。よし、アキ」

「ほーい」


『ドガッ!』


 先ほどと寸分違わぬ速度をもって繰り出された蹴りだったが、腕に届いた威力・衝撃・痺れは、明らかに和らいでいた。ダメージだけでなくノックバックや後遺症まで緩和されるとなれば、これはかなり大きいな。

 それは、蹴りを放ったアキも感じ取れていたようだ。


「このスキル、やばいわね……。あ、ショウタ君。腕は平気?」

「へーきへーき」

「むぅ。平然とされると、それはそれで悔しいわね」

「えぇ?」


 どうしろと。


「……まあそれはさておき、重要なのが分かったから全員『物理耐性Ⅲ』を取得しといてね」


 俺が得て検証したスキルの中で有用な物は、惜しみなく分け与えて、全員を甘やかすのはもはや決定事項である。なので、皆何も言わずに取得してくれた。

 残りの『物理耐性』は全部『圧縮』して……。


 物理耐性 1個

 物理耐性Ⅱ 2個

 物理耐性Ⅲ 3個


「こいつらは保管で」

「畏まりました」

「次は『自動回復』だな」


 名前:自動回復

 品格:『遺産レガシー

 説明:所有者の修復可能な欠損を徐々に癒す。人間は取得不可


「……ふむ。取得できないことを安心するべきか……?」


 スライムみたいに、腕が徐々に繋がったり、新しく生えてくるなんて悍ましい光景を見なくて済んだ。……かな?


「旦那様がご自分のお身体で実験されたら、卒倒する自信がありますわ!」

「そうです! 取得できなくて一安心です!」


 気の弱い二人が取得できない事を大いに喜んで見せる。まあ言ってることはわかる。

 俺も痛いのは嫌だしな。


「しかし、人間が取得できないスキルなんてあったんだな。『限界突破』みたいにドロップしないスキルもあるし、やっぱり珍しいのかな?」

「少なくとも、あたしは知らないかな。どんなに些細なスキルでも、スキルオーブで出現した物で、取得が出来ないなんて」

「ご主人様、試しに取得なさいますか?」

「え? ……いや、それで取得出来ちゃったら、俺が人間じゃないみたいになるじゃん。絶対やだよ」

「フフ、左様でございますか」


 揶揄ってくるアイラはあとでお仕置きするとして、人間にダメなら……。


「リヴァちゃん。使えるか?」

『!』


 足元にいたリヴァちゃんは、短い手脚を必死に動かしてテーブルによじ登り、スキルオーブを抱えた。するとスキルは魔石と同様に吸い込まれていった。

 その様子に、アヤネは目を輝かせた。


「『鑑定』……わ。リヴァちゃんがスキルを覚えてますわ!」

「おお。なら、他の子達も覚えて」

『!』

『!』


 ゴーレム達は次々に『自動回復Ⅲ』を取得し、飼い主1人1人が自分の子がスキルを獲得したのを確認した。

 よし。なら俺も、自分の戦闘用ゴーレムの為に『圧縮』しておくか。


 自動回復 1個

 自動回復Ⅱ 2個

 自動回復Ⅳ 1個


「アイラ、収納しといて」

「承知しました」

「残りの魔法は……アヤネと分け合う形にするか。アヤネは『宵闇魔法Lv2』を1個使っといて」

「はいですわ!」


 俺は『極光魔法Lv2』を2個、『宵闇魔法Lv2』を1個、『混沌魔法Lv2』を1個使用した。これで忘れ物はもう無いかな。


「……ないよな?」

「ありませんわ!」

「よかった。じゃ、皆で寝るか」


 明日は久々のダンジョンだ。ああ、身体が疼く……!


「えへへ、今日はわたくしとアイラが隣ですわね」

「買っておいてよかったですね、キングサイズベッド」

「……そだね」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

https://twitter.com/hiyuu_niyna/status/1660117998584360961

上記にて、ショウタ君がゴーレムの強化体終了後に巡るダンジョンの攻略先を応募してました(5/21 12:00~5/24 12:00)沢山の応募ありがとうございました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る