ガチャ170回目:ダンジョンボス
卵から流れ落ちてきたその液体は、粘性が非常に高いようで、ゆっくりと地面へと広がっていく。その液体は虹色に煌いており、スライムというよりは可燃性の油のようにもみえた。
「ご主人様、お嬢様。気を付けてください、これは正真正銘の化け物です」
アイラはこの液体の力量が分かったのだろう。いつになく真剣な表情をしている。
液体はまだ全部は出てきていないようだが、今の内に見れるだろうか?
「『真鑑定』」
*****
名前:ヒュージーレインボースライム(ダンジョンボス)
レベル:154
腕力:1554
器用:1554
頑丈:1554
俊敏:777
魔力:3108
知力:2331
運:なし
装備:なし
スキル:物理耐性Ⅴ、自動回復Ⅲ、混沌魔法Lv2、限界突破
ドロップ:極濃縮スライムゼリー、七煌ダイヤモンド、管理者の鍵(777)
魔石:極大
*****
『ダンジョンボス』。
初めて見るフレーズだが、すぐに理解出来た。こいつがこのダンジョン最強のモンスターだと。そしてその中途半端なステータスにも『俊敏』の数値でピンと来た。全部777の倍数だ。
確かにこの数値は、警戒が必要だな。
無数の『ジェネラルゴブリン』で延々と強化された『エンペラーゴブリン』を軽々と超えるステータスに加え、物理攻撃をかなりの割合で軽減する『物理耐性』の『Ⅴ』。これまた未知の『混沌魔法』に加えて強化体でお馴染みの『限界突破』。
アイラが警戒する訳だ。これは、初っ端から全力で行くしか無い。そうして観察しているうちに、卵型の煙は全ての液体を吐き出し終えた。その粘体は1カ所に集まり、巨大なスライムへと変貌を遂げる。
その直径は、縦にも横にも6メートルを超す巨大さだ。
「よし、全力で叩くぞ!」
「「はい!!」」
『ブルブル!!』
俺たちが武器を構えると同時に、スライムは全身を膨張させ、周囲に虹色の粘体を勢いよくばら撒いた。まるで散弾銃のように全方位に飛び散ったその粘体は、通常サイズのスライムと同じ大きさをしていて回避が難しく、何発か外装に激突した。
『ジュゥゥゥ』
スライムの身体は強酸性の物質で構成されているらしく、直接当たったらひとたまりもなかっただろう。
「旦那様! これら全てモンスターです!」
アヤネの言う様に地面に落ちたスライムの一部は、個別に意志を持っているのか引き続きこちらを狙って飛び掛かってくる。
「くっ! 『真鑑定』!」
*****
名前:レインボースライム(ダンジョンボス)
レベル:――
腕力:777
器用:777
頑丈:388
俊敏:388
魔力:388
知力:388
運:なし
装備:なし
スキル:物理耐性Ⅱ、自動回復
ドロップ:虹色ドロップ
魔石:中
*****
「気を付けろ、こいつら1体1体が『レアⅡ』並みだ!」
『バチンッ!』
「きゃあ!」
「くっ!」
子分に気を取られていると、遠距離からボスの触手が飛んで来て外装を叩きつけてきた。
さっさとボスを倒したいところだが、子分が邪魔過ぎる。経験値や低レベルボーナスはこの際無視して、取り巻きからどうにかしなきゃ。
「俺とアヤネは雑魚から行く! アイラ、なるべくボスのターゲットを取っておいてくれ!」
「承知しました!」
「新魔法行きますわ! 暴風陣! ミックスハリケーン!!」
暴風陣は『風魔法Lv7』、『知力』1500で使用可能となった魔法で、効果は付与した対象に自身の『風魔法』の影響を与えなくするという
ミックスハリケーンは『風魔法Lv8』、『知力』2000で使用可能となった魔法で、効果は自分を中心に、意のままに操れる巨大な竜巻を発生させる。そのまま使用すれば味方どころか自分すら傷付けてしまう諸刃の魔法だった。
竜巻は全ての虹スライムを巻き込み切り刻んで行く。
広範囲かつ高威力な魔法ではあるが、相手のステータスが高いためか倒すには至らなかった。だが、散らばっていた連中を一箇所に集めて弱らせてくれただけでも十分だ。
「旦那様、お願いしますわ!」
「ああ! 『紫電の矢』!」
竜巻に錐揉みされ、ズタズタに引き裂かれながら一塊となったスライムに向け、俺は必殺の矢を連続で放つ。
『ズパァン! ズパァン!』
風船が破裂したような音と共にスライムの群れは弾け飛び、無数のアイテムを撒き散らしながら煙へと変わった。
「よしっ! ……あれ?」
レベルアップ通知が来ない。ドロップをしている以上撃破したのは間違いないはずなのに。
こちらのレベルは8なのだ。あんなに強い相手でレベルが上がらないということは、経験値がない相手なのかもしれない。
「ボスが召喚したんじゃなくて、ボスから分離した一部分だからか?」
いや、考えるのは後だ。今はアイラの援護に行こう。
「アイラ、お待たせ!」
「大丈夫ですの?」
「ステータスだけ見れば化け物ですが、技術よりも力技が主体です。魔法も直線的なものが多いため、維持するだけならまだ何分か、持たせられそうです」
アイラはまるで曲芸師のような機敏な動きで、複数の触手からの攻撃をすんでのところで避け続けている。無数のスライムを飛ばしたことで、その本体の巨体も3メートルくらいまで縮んでいた。
「ですが、私では攻撃をしても決定打に欠けます。ですので頼みます」
「任せろ! 『雷鳴の矢』。更に『阿修羅』!!」
「『プリズムレーザー』ですわ!!」
『!!?』
矢を引き絞り、『力溜め』をする間にアヤネが例のレーザービームを連発した。この魔法、後から知った事だが攻撃対象に一定確率で『目眩まし』の状態異常を付与するらしく、周囲にいる俺達が目をやられる心配はないようだ。
何本かのレーザーがボスの身体を貫いた為か、どうやら状態異常が発生したらしい。ボスは周囲に手当たり次第に触手を打ち始めた。
「ご主人様!」
「旦那様、とどめを!」
「ああ。……いけ!」
『ドパァン!』
『雷鳴の矢』がボスに着弾すると、上半分が弾け飛んだ。残された下半分は、何が起こったのか理解出来ないのか、ピクピクと動いている。煙は出ないし、まだ死なないのか……。
だが、こうなってはもう虫の息だろう。介錯の為に『紫電の矢』を番える。
「旦那様、凄い威力でしたわ」
「スキルの相乗効果でとんでもない威力になっていましたね」
剛力Ⅲで『腕力』約2倍。
怪力Ⅳで『腕力』約3倍。
金剛力Ⅱで『腕力』約3倍。
阿修羅で『腕力』4倍。
これらのスキルは全部加算されて計算されるみたいだから、約9倍になる。そこに更に『力溜め』のチャージ分も加算されるわけで……うん、実に恐ろしい事になってるな。
感慨深くそう思っていると、蠢いていたボスの半身はぱたりと力尽き、全身から膨大な煙を吐き出し、霧散した。どうやら、介錯は不要らしい。
【管理者の鍵(777)を獲得しました】
【レベルアップ】
【レベルが8から204に上昇しました】
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