ガチャ165回目:古巣の異変
「アヤネ、そろそろ始めるから戻ってきて」
「あ、はいですわー!」
川砂ゴーレムこと、リヴァちゃんと一緒にアヤネが戻ってきた。
「旦那様、聞いてくださいませ。この子が倒したスライムが魔石をドロップしたんですの!」
「へぇ。何体倒して何個出たんだ?」
「10体倒して10個ですわ!」
「……マジで?」
こいつら、ステータスが見えないけど、もしかして『運』の参照先が俺になってたりする?
「え、それって凄いことじゃない?」
「もしも想像している通りだとすれば『ゴーレムコアⅣ』に全魔力を注ぎ込めば、ご主人様と同格レベルの存在が生まれかねませんね」
「とんでもないことになりそうです」
「いや、丸々参照されているのか、一部参照なのかが分からないから、なんとも言えないな。だって、『極小魔石』程度の確定ドロップなら『運』が100あれば事足りる訳だし」
あとは、俺のステータスを参照にしているのなら、ゴーレムが倒した場合の経験値の扱いと、100匹討伐のルール適用条件なんかも確認したい所だよな。
「それから、この子が魔石を欲しがってますの。与えてもいいかしら」
「ん? ああ、良いよ。倒したのはリヴァちゃんだもんな」
リヴァちゃんに『極小魔石』を手渡すと、彼は自分の中心にある『ゴーレムコア』に押し付けた。すると魔石はゆっくりと中へと溶け込んでいき、消えていく。
『!』
……もしかして、吸収したのか? それを3回繰り返すと、リヴァちゃんは満足したらしく、他のゴーレム達もアピールを始めた。残ってた魔石を与えてみると、みな満足そうに全身で喜びを表現している。
『!』
『!』
「そう言えば『魔力』を使って生成したんだから、動力源は『魔力』。もしくは魔石なわけだよな」
「そっか。何も与えずにずっと動き続ける訳ないわよね」
「1日の消費が『極小魔石』数個で済むのなら、燃費はいいかもしれませんね」
燃費か……。よし。
「皆、聞いてくれ。ゴーレム達の今後の扱いだけど、思っていた以上に戦闘でも役立てる可能性が出てきた。それにより、色々と検証していきたいわけだけど、戦闘関係の検証は俺が新しく追加で作って、それで試していくつもりだ。だけど戦闘以外に関しては皆にも手伝ってほしいんだ。具体的に言うと、燃費周りと私生活での出来る事や出来ない事が知りたいな」
「任せて!」
「はい!」
「頑張りますわ!」
「承知しました」
「ただ、今日に関しては検証はなしにしよう。元よりその予定が無かったのもあって、時間にあまり余裕がないからね」
皆が頷いてくれる。
今日は久々に里帰りしたかったってのもあるし、1回で何色までのスライムが出せるか運試しがしたかっただけなんだよな。まあ、数が多いなら間引くついでに数百匹倒すのもありだけど。
「……ん?」
いや待てよ。
スライムを香りで誘い出すという話だったが、そもそもあいつらの移動速度は非常に鈍重だ。『俊敏』がたったの2しかないんだぞ? 果たしてその集団が俺の所に辿り着くまで、一体どれだけ時間がかかるんだろうか。スライムの大群が押し寄せる光景を想像して面白そうだと思ったからこの作戦に乗ったけど、連中はここに辿り着けるのか……?
「ではそろそろ起動しますね。中から誘引するための煙が吹き出ますが、人体に影響はありませんので、皆さまご安心を」
「……なあアイラ」
「ご主人様、その懸念は尤もです」
「お、おう?」
「ですが、せっかく手にしたアイテム。使わなくては勿体ないでしょう?」
アイラめ。ついには背中を向けたまま俺の心を読みやがった。
それにしても、アイラも可愛い所があるな。どうやって手に入れたかはさておき、新しいアイテムを使ってみたくてウズウズしていたと。ただ問題があるとすれば……。
「10分待っても来なかったらこっちから行くからな?」
「はい、ありがとうございます。ご主人様」
アイラはそういって、アイテムのキャップを取り外した。すると、中からもくもくとピンク色の煙が立ち昇り、一気に拡散した。
くんっ。
広がった煙を嗅いでみると、知らない香りの中に、どこかで感じたことのあるような不思議な感覚を覚えた。なんだろう。つい最近、似たような香りを感じたような……。
しばらくスライムが来るのを待ちながら考えていると、思い当たる節があった。
「アイラ。アイテムの説明に改良型って書いてあったんだけど、改良したのって」
「はい、私です」
普通なら禁制品を改良できる手腕に驚くところだが、俺の意識は別の方向に向いていた。
「……
「ふふ、誘惑するのであれば、うってつけでしょう?」
なるほど。手に入れたアイテムを使ってみたかった。これは嘘ではないが、少し違ったようだ。
正確には、手を入れたアイテムを使ってみたかったのか。だが、これだけは言わせてくれ。
「禁制品に禁制品を混ぜんなよ」
「……あたしは何も見てないわ」
「ショウタさんしか見ていません」
「あ、ずるい!」
「はは……」
『ズズズズ……』
「む」
不意に、地面が揺れた気がした。
いや、今も僅かにだが揺れ続けている。まるで奥から、モンスターの大群が津波となって押し寄せているかのように。想定していたよりもだいぶ速いが……。
「ふふ。例の物を混ぜたおかげで効果も増大したようです。今の揺れを感じましたか、ご主人様」
「結果オーライかもしれないが、あんまり無茶な事はしないでくれよ。……いや、待て。よくよく考えるとおかしいぞ。スライムに地面を揺らすほどの重量なんてない。せいぜい1匹の重さは、100gあるかないかくらいのはずだ。それがいくら群れたからって、こんな地響きが鳴るか?」
「言われてみれば、そうですね? ご主人様、嫌な予感はしますか?」
目を閉じるが、特にこれといって何も感じない。
「いや、別に。どんな量が来ようと、結局はスライムだしな」
「では大人しく待つとしましょう」
「ショウタ君、あたし達は下がっておいた方が良い?」
「いや、そこに居て良いよ。心配するような相手はここには……」
そこまで言った所で、視界に1匹のスライムが曲がり角の向こうから姿を現した。
それは軟体の身体を動かし、必死にこちらに向かって這っているようだが……妙だ。まだ遠くにいるはずなのに、まるで近くにいるかのような……。
「……えっ?」
「な、なんですのあれは」
ゆっくりと全容を現したそれは、先ほどのスライムと比べ、明らかに巨大だった。
*****
名前:ヒュージーブルースライム
レベル:40
腕力:400
器用:400
頑丈:400
俊敏:50
魔力:20
知力:20
運:なし
装備:なし
スキル:物理耐性、自動回復
ドロップ:濃縮スライムゼリー
魔石:大
*****
そして奥からは、それと同等の存在がいくつも押し寄せて来ていた。
「地響きの正体は、こいつらか……」
「なによこれ、こんなモンスター知らないわよ!? ショウタ君は?」
「知ってたら今頃生きてないって」
「ご主人様。私、何かやっちゃいましたか?」
アイラが含みを持たせた笑顔で聞いてくる。
だが、その声には戸惑いも混ざっている。彼女にとってもこの事態は想定外らしい。
「冗談はあと。まずは、こいつらを殲滅する!」
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