ガチャ162回目:のんびりまったり

「ん……」


 ふわふわとした夢見心地から、ゆっくりと意識が覚醒していく。

 微睡の中にいるかのようなぼんやりとした感覚が徐々に薄れ、同時に腕や身体がうまく動かせないことに気付く。目を開ければ、左腕の中にはマキがいて、右腕の中には丸くなったアヤネと、すぐ近くにはアキの姿があった。


 皆の寝顔を見ながら、昨日あった事を思い出そうとする。

 けれど、どんなに頑張っても皆で一緒に添い寝する流れは思い出せなかった。……っていうか、俺のベッドってこんなに広かったっけ??

 部屋の中を見渡せば、『御霊』が飾られた武器ラックに『魚人の種』を植えた植木鉢もある。俺の部屋だとは思うんだが……。ベッドがデカ過ぎて違和感がすごい。


 腕の中の感触を楽しんでいると、1人足りないことに気付いた。気配を探っていると、いつもの様にメイド服を着たアイラが部屋に入ってきた。


「おや。おはようございます、ご主人様」

「……おはよう。状況を説明して貰える?」

「はい。昨日はマキ様を可愛がって頂く日のはずでしたが、不甲斐ない事にご主人様は先に眠ってしまわれまして」

「うっ」

「その結果こうなりました」

「説明省きすぎじゃ無い?」


 いや、大体わかったけども。

 それにしてもさぁ……。って、アイラはいつもそうか。


「ご理解頂けて何よりです」

「……はぁ。ちなみに確認なんだけど、ここ、俺の部屋で間違い無いよね?」

「はい。こんな事もあろうかと、キングサイズのベッドを買っておいて正解でした」


 うちのメイドが万能すぎる。どんな想定をして動いてるんだよ。未来視のスキルでも持ってるのかと。

 そうこう話していると、次第に皆が目を覚ましていき、そこで寝ぼけた彼女達から当番が一日ずれた事を教えてもらう。しかし、こうして囲まれて起きるのも悪く無いな。


「当番が一周したら、次からはこうしますか?」

「アリかも……。って、そこまで読むなよ」

「さあ、朝ご飯の準備は出来ていますよ。顔を洗って食卓においで下さいませ」


 俺の心は読むくせに、ぼやきは聴こえていないのかアイラはそそくさと部屋を出て行った。はぁ、仕方ない。俺も顔を洗うか……。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「それでね、昨日の会議でねー」

「流石に支部長といえど限度があるみたいでして……」

「昨日のオークションは凄かったですわ!」


 などと彼女達の話に相槌を打ちながら、のんびりとした時間を過ごす。今日は久々の『アンラッキーホール』に挑む訳だが、今さら気合を入れていくほどの場所でもない。それに、何時間も居座るつもりもないので、昼頃までのんびりするつもりだった。

 まあ、虹を拝むために朝から籠るという選択肢もあるにはあったのだが、昨日はダンジョン……とプラスアルファで疲れ果てて寝落ちしちゃったからな。あんな風になった以上、心配かけたくないのでゆっくり過ごす事にしたのだ。あとは、アキとマキが昼までここにいて欲しそうだったので、それに従ったというのもあるのだが。

 まあ、たまにはこんな時間を過ごすのも悪くないんじゃないかな。


「で、話をまとめると、後数時間ほどで2つの支部で動画が公開されるのと、在庫の一部が売れたのと、オークションでは無事に金剛シリーズが完売した、と」

「はい。そうなりますね」

「ただ、やっぱり財布事情の問題もあるから、今後もコンスタントにスキルを獲得するのなら大幅な値下げだったり、全国版のオークションに流すのも仕方ないかもって」

「全国版かぁ」


 世界には1000個のダンジョンが存在するが、その内20個前後がこの国に分散して存在している。ダンジョン保有国としても上から数えた方が早いらしいのだが、国土の広さから見たダンジョンの密集率は世界トップクラスらしい。

 住んでる人間からすれば、あまり嬉しくないトップ扱いだが、俺としては色んなダンジョンに潜れる機会がある為、その環境は願ったりだ。


 そんな中、この国ではダンジョンの密集地が全部で4つあり、それぞれが個別に管理されている。

 『初心者ダンジョン』『中級ダンジョン』『上級ダンジョン』『ハートダンジョン』『アンラッキーホール』など多彩なジャンルを擁する、関東圏に位置する第一区。

 そして関西圏の第二区、北陸圏の第三区、九州圏の第四区。


 オークションはそれぞれの区域で開催されていて、この第一区が四日置きとなっているのも、各地区が順番に回しているためだ。そんな中で、全国版オークションは各地区のオークションで落札し切れなかったり、とんでもない額の物品が出品されそうな時に利用する物となっていて、国外からの参加も認められている。

 とは言っても、第一区に設けられている上限額は『上級ダンジョン』と首都がある影響か、他地区と比べて高額に設定されており、第一区から全国版オークションに流れる事は滅多に無いらしいが。


「まあ、数が数だしなぁ」

「ショウタ君も、スキルが溢れるからって自重はしないだろうしね。まあでも、次のオークションまでは休みを入れてるから、その辺りは大丈夫だと思うけど……」


 アキやマキが不安そうな目で見て来る。

 いや、どこに旅行に行くかは知らないけど、流石に彼女達を置き去りにして旅行先のダンジョンに突撃したりは……。しないよ? 本当だよ??


「「「じーっ」」」


 そう思ってるのは俺だけらしく、考えてることがバレているのか3人から訝し気な目で見られる。

 気付いていないのはアヤネくらいだ。


「皆さんどうしたんですの?」

「アヤネはいい子だなー」

「え? えへへ、そうですの?」


 とりあえず、俺を疑わない彼女を抱きしめて可愛がる。

 なぜ褒められているのかはわからなくても、彼女はこうされるのが好きなので幸せそうにしている。


「むぅー」

「アヤネちゃんばっかりずるいです」

「はは、冗談だよ。許可もなく勝手に行くわけないじゃないか。ていうか、何処に行くかも知らないし」

「そこは、お楽しみですよ」


 そうしてゆったりとした時間を過ごしていると、不意にチャイムが鳴った。


「ん?」

「あ、きたきた!」

「ショウタさん、良い物が届きましたよ!」


 届け物? 一体なんだろうか。

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