ガチャ154回目:最大の敵

「今までは砂だったから何とかなってたけど、石ときたか……」


 ステータス差を考えれば問題ないとは思うけど、俺、今のステータスを十全に使いこなせてる気がしないんだよなぁ……。コイツの攻撃を、俺は果たして受けられるのか?


『ゴォォォ!』


 ……とりあえず、やるだけやってみるか。

 俺はおもむろに近付き、まずは脚を狙う。


『ガガッ!』


 幸いにも斬りつけた剣が刺さったまま抜けない、なんて事にはならなかったが、脚の一部が欠けただけで行動の阻害にはならなさそうだった。

 『ストーンゴーレム』は俺の攻撃に反応したのか、今までとは比にならない反応速度で片腕を振り下ろしてきた。


『ドゴンッ!』


 両手の剣をクロスさせ、正面から受け止めた。

 覚悟して構えていたのだが、今まで受けたことのない重みに思わず歯を食いしばった。


「ぐぬぬぬ……!」

『ゴオオオ……!』


 確かに瞬間的なパワーは今までのモンスターとは比較にならない一撃だった。だが、恐ろしいのは振りおろしからインパクトの瞬間まで。そこから先はステータスが物をいう世界だ。

 純粋な力比べになった場合、この程度の膂力、恐るるに足らん。

 それに、足元が砂地でなくて助かった。踏ん張りが効く以上、普段と同じように相手を押し返せる!


「ぜりゃっ!!」

『ゴッ!?』


 一気に力を解放し、その巨体ごと切り払う。すると『ストーンゴーレム』がたたらを踏み、バランスを崩したので、その無骨な脳天へと盛大に跳び蹴りをくれてやった。

 奴は勢いをそのままに、豪快な音を立てて大の字に倒れ込む。


 砂の時と違って石の身体は融通が利かないのか、再構成しての立ち上がりなどは行えないらしい。奴は必死に起きあがろうと、情けないくらいジタバタともがいていた。


「ふぅー……」


 しばらくそのまま待ってみるも、どうやら本当に起き上がれないらしい。アキ仕込みの空中回転蹴りが役に立ったな。昨日の復習の時に、このステータスに加えて『身体超強化』と『体術』があれば割と簡単に出来ちゃうかも。と、アキから期待の籠った目で見られたからには、カメラの前で披露せざるを得まい。


 決まって良かった。


「アヤネ、アイラ」

「「はい」」


 とどめを刺す前に、2人に攻撃をしてもらう。


『ゴォ!? オオッ……!』


 その様子をじっくり見て思ったが、やはり魔法はダメージの通りが良いらしく、アヤネが放ったビッグウィンドボールは見事に敵の片腕をズタズタに引き裂いた。

 対するアイラも、武器と本人の能力、そして技量の高さからか、2本の短剣で反対側の腕をなますぎりにしていた。


 反面、俺が切り付けた脚の傷は、一部が欠けてはいるものの、まだまだ歩行する分には問題ない程度の傷跡でしかなかった。前方に向かって勢いをつけた上での攻撃だったのに、ここまで明確な差が出ると凹むな。

 やっぱ、本格的に力の出し方を修行した方が良いのかもな……。


「旦那様?」

「あ、ああ、ごめん」

「ご主人様、ご心配なさらずとも、私に考えがあります」

「そうなの? じゃあ任せようかな」


 アイラは俺の不安を読んだのだろう。彼女がそう言うのなら、任せてしまって良いかもしれない。

 俺はさっさと『ストーンゴーレム』の身体に乗り上がり、その中央にあったコアを剣で貫いた。


『ゴォォ……』


【レベルアップ】

【レベルが14から55に上昇しました】


 うーん、微妙に足りないな。


「よっと」


 地面に降り立ち振り向くと、コアからは煙が噴き出し、その全身は粉々に砕け、砂へと変わっていく。そして小さな破片となったその身体は、砂塵となって景色の一部となり消えていった。

 しかし溢れ出た煙は消える事も四散する事もなく、ただただその場に残り続けていた。


「旦那様~!」


 いつものようにアヤネが飛び込んでくるので、抱きしめて撫でる。はぁ、癒される……。


「今日の旦那様、とってもパワフルでしたわー!」

「あはは。まあ、いつもは攻撃を避けるもんなぁ」

「でも、ご無理はなさらないでくださいましね」

「ああ、気をつけるよ。ありがとう」

「えへへ」


 俺達は岩山を少し降り、煙から距離を置いた。

 次が出たとしてもすぐに対処できる距離としては、このくらいあれば十分だろう。ゴーレム→ゴーレムと来て、いきなり別種が来るとは思えないし、今までの傾向からしてデカくなるか凶悪になるか、両方か。

 どうくるかね。


「あ、そう言えば。さっきの『ストーンゴーレム』だけど、スキルに『砂塵操作』ってのがあったよね。使ってこなかったように思うけど、どんなスキルか分かる?」

「はいですわ。あれは旦那様がお持ちの『水流操作』の砂バージョンですの。自分の周囲にある砂をある程度自由に操れるのですわ!」

「恐らく、使わなかったのではなく使えなかったのかと思われます。周囲に砂のない岩山の上で出現した為、操る砂が近くになかったのが原因と思われます」

「なるほど」


 それを聞くと、中途半端な位置が出現ポイントに設定されたモンスターが哀れに思えてくるな。それにしても、岩山か……。『自動マッピング』でみる限り、ほぼ岩場地帯の中央にあたる場所だな。


 というか今まで考えないようにしてきたが、この階層の宝箱はどこにあるんだ? 昨日と今日とでそれなりにこの階層をグルグル回ってるつもりだけど、一向に緑のアイコンが出てこないぞ。

 となると、最悪のパターンとして第一層のように特殊条件の元出現するタイプか、もしくは『ハートダンジョン』の第一層の様に宝箱とは別の形で存在しているかだ。

 そうなったらお手上げなんだよな……。協会に頼んで人海戦術という手もあるけど、なるべくこの話は広めない方が良さそうだし、それに資格がないと見つけられないなんて条件もあるかもしれないわけで……。うーん、どうしたものか……。


 ゾクリ。


 不意に、俺は心臓を掴まれたかの様な衝撃を受けた。

 その大元は、明らかにから発せられている。俺が今まで倒した中で、一番の強敵は『甲殻騎士』だと言える。けれど、あいつとの戦いは慣れたもので、もう1度戦えと言われても剣でも弓でも楽に勝てるだろう。

 だが、あの煙から感じられる圧力は、それ以上の恐怖が浮かんだ。まだ『初心者ダンジョン』の第二層だというのに、あれ以上の敵が現れるというのか……。


 煙は一瞬の内に膨れ上がり、中から岩の巨人が現れた。


『……』


 その体躯は優に5メートルを超え、見上げた先には人間の頭ほどの大きさのコアが埋められていた。そのコアが怪しく光ると、巨人はゆっくりと俺達へと頭を向けた。


*****

名前:ジャイアントロックゴーレム

レベル:70

腕力:850

器用:500

頑丈:1200

俊敏:400

魔力:1000

知力:50

運:なし


装備:なし

スキル:剛力Ⅲ、怪力Ⅲ、阿修羅、鉄壁Ⅳ、城壁Ⅳ、金剛体、砂塵操作Lv3、破壊の叡智

ドロップ:ゴーレムコアⅣ

魔石:特大

*****


「桁違いの化け物か……」


 これは、久々に死闘になりそうだ。

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