ガチャ152回目:砂の人形

「ここからがゴーレム地帯か」


 第二層には4つのフィールドがごちゃ混ぜになって存在している。

 まずは草原と、川のエリア。ここにはゴブリンとキラーラビットが混在している。

 次に林地帯。ここは先程の2種のモンスターが入り乱れて出現する場所と、モンスターが湧かないレアモンスター専用の場所の2パターンあり、この第二層にはどちらも4箇所ずつ存在している。

 次に丘陵地帯。中央にクレーターが存在し、その中心と周囲を縄張りとするヒルズウルフが出現する。第二層に4カ所存在する。

 最後に砂場地帯。砂とゴツゴツとした岩が転がり、ところどころ小高い岩山も存在している特殊なフィールド。ここもまた第二層に4カ所存在し、出現するモンスターの情報から誰も近付かない不可侵領域と化している。


 あと1歩踏み込めば砂場。

 そんな距離まで近づいても、ゴーレムは目視出来ないでいた。


「本当にここにおりますの? モンスターの姿がまるで見当たりませんわ」

「ああ、いるみたいだな。アイラは感知できる?」

「はい。ですが、無機物ですから少し曖昧ですが……」

「十分でしょ。俺だってマップがなきゃ分かんないよ」


 『自動マッピング』にはハッキリと、その位置が赤い点となって記載されていた。どうやら、一番近いのはここから5メートルほど先の地点にいるらしいのだが、いると分かっていても、砂の中にいては分からない。

 本当にこのスキルの力は偉大だ。俺の冒険の大半は、このスキルの存在無くては語れないものとなっている。


「とりあえず、姿を見ない事には始まらないよな。マジックミサイル」


 赤い点が示す場所。砂の中目掛けて魔法を放った。

 するとその瞬間、砂場が爆発した。


『ドゴォン!』


「きゃあっ!」


 どうやら当たり所が良かったのか、中に潜んでいたゴーレムを倒したことで謎の爆発が起きたらしい。

 砂場にはぽっかりと穴が開き、そこにはドロップしたと思われるアイテムが散乱し、いつもの煙が吹き出していた。


 アイラに取ってきてもらうかと思った所で、周囲の砂場が盛り上がった。咄嗟に身構えると、所々の砂場から、砂で固めたような手や頭が飛び出してきた。


『グオオオオ……』

『オオオ……』

『ゴゴゴ……』


 どうやら、今の攻撃で他のゴーレム達が目覚めたらしい。

 連鎖的に反応しているのか、次から次へと湧き出てくる。地中から伸びてくる、というよりかは、寝転がった体勢から起き上がる様な感じだ。

 その範囲は広く、50メートルほど先の砂場からもその姿が確認できた。その数……20体ちょっと。


「もしかして、こいつら全員、俺をターゲッティングしてる?」

「そのようですね」

「冷静な回答ありがとう。『真鑑定』」


*****

名前:ゴーレム

レベル:15

腕力:150

器用:20

頑丈:200

俊敏:10

魔力:10

知力:10

運:なし


装備:なし

スキル:なし

ドロップ:ゴーレムコア

魔石:小

*****


「くっそ偏ったステータスだな、こりゃ。集団で襲う点もそうだし、初心者には厳しいだろ……」

「何か攻略法があればいいのですが……」


 ゴーレムは、手や頭と同様、全身が砂で固めた人形のような出で立ちをしており、体長2メートルほど。歩幅は大きいが一歩一歩踏みしめるようにゆっくりと進むらしく、その速度はシザークラブと同様に非常に鈍重だった。威圧感はこちらの方が上だが。

 地面は柔らかい砂の為、普通なら沈み込んでしまいそうだが、奴らの特性なのかそんなことにはならないらしい。ちょっとずるい。

 そして身体の中央には、魔石に酷似した物が嵌め込まれている。

 あれが恐らく、ドロップに記載されている『ゴーレムコア』なのだろうか。


「あのあからさまに怪しい奴って、もしかしなくてももしかするのかな」

「はい。ご主人様の考える通りかと」

「そうですわね。恐らくアレがあることで、ゴーレムはゴーレムとして成立していると思いますわ」

「ふーむ……。そんじゃ、ここはコレの出番かな」


 背負っていた『カイザーヴェイン』を手に持ち、『魔力』を消費して矢を番える。


『シュパッ! ドッ!』


『グオオオッ……』


 矢が『ゴーレムコア』を貫くと、その瞬間から身体を維持できなくなり、全身がボロボロと崩れ落ちていった。そして最後には煙となり、アイテムへと変わる。


「……強そうに見えて、弱点剥き出しの哀れなモンスターだったか」

「これなら、簡単そうですわね?」

「問題は近接戦だよな」


 そう言いつつ、俺は見えている範囲にいたゴーレムを順番に射抜いて行く。

 『ゴーレムコア』は成人男性の握りこぶしくらいの大きさくらいしかない為、対象が遠いほど難しくなる。だが、『ゴーレムコア』は身体の中央部分から動かないし、連中の動作も鈍い為一般の冒険者でも数打てば当たりそうだった。


 そうして勢い余って全て倒してしまえば、たったの20体少々にも関わらず俺のレベルは4から8に上がっていた。


「どうやら、かなり経験値効率が良いみたいだな」

「遠くから安全に攻撃する手段さえあれば、比較的簡単にレベル上げが出来そうですね」

「ある意味、一番美味しいモンスターなのでは?」

「穴場という訳ですわね!」

「まあ、公開した途端穴場じゃなくなるんだけどね」

「そうでしたわ……」


 ガーンとショックを受けるアヤネを撫でて宥める。

 しかし、そうなっては俺の狩りにも影響が出るだろうし……。そうなる前に、レアモンスターと『レアⅡ』。それから強化体は済ませておきたい所だな。


「とりあえず、弱点は判明したし、楽に狩れる相手というのもわかった。アヤネ、今の撮ってたよな?」

「勿論ですわ!」

「それじゃ、次は近接戦を試そう。近距離で戦えるかどうかで、この狩場の人気度が変わってくるからな」


 そうして俺を先頭に、砂地へと乗り込んだ。

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