ガチャ106回目:報告と買い物
気になっていたスキルの検証は全て終えたので、俺達はダンジョンを出ることにした。そこで前回来た時のことをアキが面白おかしく伝えると、アヤネが羨ましがり、一悶着の後に、結局俺が3人まとめて抱えて出て行くことになった。
前回と比べれば、スキルを使わずとも3人を抱えることくらい、『腕力』的意味では問題なかったが、物理的に手が足りなかった。なので、アヤネにはおんぶで我慢してもらうことになったが……。どうみても、傍から見たら妙な光景だよな。絶対これ掲示板でネタにされてるだろ。前回もなんか、遡ってみたらえぐいことになってたし。
……まあ、それだけ人気の受付嬢を貰ったということだから、頑張らないとな。
アキやマキも、前回以上に心の距離が近くなったこともあって、とても嬉しそうに引っ付いてくるし。いや、俺も嬉しいけどさ。前回であれば確実にバランスを崩していた所だけど、『体術』スキルのおかげで体幹がバッチリなので、ちょっとやそっとじゃグラつく事は無かった。
そして彼女達を抱えたまま協会に辿り着き、羨望や奇異など様々な視線を受けながら受付を済ませ、いつもの会議室を借りた。
そこでヨウコさんに第二レアモンスター出現と討伐。それから敵と味方双方の魔法の行使により、左手前のマップ周辺で、森が半壊していることを告げた。
そして……。
「ちょっと先輩には申し訳ないんだけど、そのレアモンスターがちょっと難儀なやつでさ。詳細を告げるのは、一度お母さんに相談して、許可が得られてからにしたいの」
「……分かったわ。ちなみにそれは、彼のため? それとも協会のため?」
「……ノーコメント」
「ふふっ。分かった、良いわよ。元よりこのダンジョンで得たものは、全部そっちにあげるって条件だもの」
「流石ヨウコ先輩! あ、でも……。ショウタ君、あれは伝えて良いかな?」
「ああ、良いんじゃない? 価値のある情報ではあるけど、苦労に見合っているかと言われるとなんとも言えないしね」
「あはは、そうだねー。実はね先輩」
そうしてアキの口から語られた事実に、ヨウコ先輩は椅子から転げ落ちた。まあでも、そうだよな。無いと思ってたものが実在して、それがちゃんと価値のある物だったんだから。
けどマップを見た感じ、多分だけど、宝箱は全部高い木の上にあると思う。
第一層に広がる森の1つ1つは、規模としてはそこまで大きくは無い。一辺が50mから200mってところだ。林立している木々の高さはまばらだが、中央付近には頭1つ飛び抜ける形で、馬鹿高い木が存在する。
小さな森には1本。大きな森には2~3本。それが外からでも見えたりするのだ。マップに映った位置情報と、視覚的に得られる情報から鑑みたところ、見える範囲にある宝箱は、明らかにその高い木を示していた。
もし宝箱を見つけられれば、鉄箱ということもあり良い物と巡り合えるかもしれないが、無い場合はショックが大きい。その上、掴める場所がほとんどない木を登るのは、かなりのスキルと身体能力がいるだろう。
宝箱の最大数が7だったとして、この広い第一層で、再出現の時間も不明のなか、いくつもの樹を登っては降りてを繰り返すのは、文字通り骨が折れるだろう。そしてそれだけを目当てにダンジョンに入り浸られても営業に支障が出るだろうし……。
そんな懸念を全て伝え終えると、ヨウコさんはしばらく考え込んだ。
「これは私の一存じゃ決められないわね。早速今晩の会議で、議題に挙げるわ」
会議と言っても、ここの協会内での会議であって、支部長会議とはまた別らしい。
「それじゃ、また明日来ます」
「はーい。あ、明日はそのままダンジョンに入ってもらって構わないわ。第二層の注意事項も、あなたの専属が詳しいでしょうから」
「分かりました」
「あ、それと……」
「……?」
なんだろう。
ヨウコさんが半ば諦めたような顔をしている。
「第二層も、レアモンスター発見の報告はないの。だからくれぐれも……」
「ああ……。一般客の前には沸かせないように、って事ですね」
「そう! お願い出来るかしら」
「極力気を付けますけど、どこで出現するかはダンジョンが決めてることなので……」
予想が当たれば良いけど、外れることだってあるわけで。
まあ、今までもスライムの『その場沸き』を除けば、全部それっぽい場所に出現していたから、この法則が乱れない限り大丈夫だと思いたい。ってか、俺がモンスターを狩ってレアモンスターを沸かせるのは、ヨウコさんの中で確定事項なのか。
チラリと彼女達を見るも、誰も反論しないしそう思われてそう。
いや、一応デートだし、自重したいとは思ってるんだよ? ……我慢、我慢……。
「それじゃあ先輩、第二層の詳細なマップデータくださいよー。そしたら、なんとか出来るかもしれませんから。ね、ショウタ君?」
「まあマップがあれば、絞り込みは出来ますね」
「うっ。マップ? ……仕方ないなぁ。本来、一冒険者には渡さない機密情報なんだからね?」
「これもダンジョン運営のためだから。ねっ!」
「……あとでアキちゃんの端末に、データを送っておくわ」
「先輩ありがとー!」
そうして話はつつがなく終わり、俺達は協会の隣に建つ、大型のショッピングモールへと足を向けた。
早速皆で水着を買いに行ったのだが、俺は適当に無地の海パンだけを買ったらすることがなくなってしまった。女性陣の買い物に混ざりたいところではあるが、どうにも当日までのお楽しみということで1人蚊帳の外。
モール内のベンチでぼーっとしていると、アイラがやってきた。
「あれ、アイラは水着買わないの? 売り場で見かけなかったけど」
「はい、もう戦闘用の水着を持っていますから」
「戦闘用の、水着……!?」
なんだそれ!?
「ダンジョンの中には、完全に水没した階層やステージなどがあります。ご主人様の事ですから、どうせモンスターと戦うでしょうし、必要かと思い持って来ました」
信用無いなぁ、俺。
まあたぶん、俺もそうなると思うけど。
「それって、全身ラバーとかそんな感じ?」
「バイオラバースイムの事ですか? そうですね、そのようなものです」
アイラが水着の形状を検索して、見せてくれる。
「へー、こんな感じか……」
「残念そうですね。足の部分を切ってハイレグにしましょうか?」
「え? いやいやいや、しなくていいって!」
「ふふ、左様でございますか」
ハイレグ水着を着たアイラ。……まあ、見たいか見たくないかで言えば、見たいけどさ。
「では、今度用意しておきますね」
「えっ!?」
慌てて口を抑えるが、俺今、口に出してなかったよな?
「ご主人様は、お嬢様と同じく顔によく出ますから」
「むう……」
引っかけだったか……。まんまとアイラの策略にはまってしまった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます