ガチャ102回目:ステータスと情報の交換会
「アキ、マキ。ただいま!」
「あ、おかえりー! ……ん?」
「ショ、ショウタさん! その血はどうしたんですか!?」
「え? ……あぁ」
よく見れば、袖口に血が付着していた。
「これはその、自分で自分を殴った時に付いた血だよ。モンスターから直接攻撃された訳じゃないし、怪我はアヤネが治してくれたから、心配はいらない」
「いやいや、どういう状況よ」
「本当に、本当に大丈夫なんですか?」
マキが今にも泣きそうな顔で、こちらを見上げて来る。
「ショウタさんは今まで、怪我らしい怪我なんて、した事ないじゃないですか……」
そう言えばそうだな。
自傷行為とはいえ、戦闘で怪我をしたのは初めてかもしれない。あの時は咄嗟に自分を奮い立たせていたけど、痛いものは痛いもんな。出来る事ならあまり経験したくないのは確かだ。
マキをどうやって宥めるか迷っていると、アキがそっと、マキの肩に手を置いた。
「マキ、落ち着きなさい。アヤネ、何があったか知りたいからカメラ見せて。端末と繋げて映像を見るから」
「はいですわ」
いつも以上に引っ付いて離れないマキの背中をさすって落ち着かせつつ、皆で『黄金鳳蝶』の戦闘シーンを確認する。映像で見て改めて思ったけど、やっぱりあの粉の効力がなければ、ちょっと綺麗だなと思う程度で、心が惑わされることは無いようだった。
ああいや、今の俺は魅了耐性の指輪があったな。けど、誰も異常な反応は示していないし、大丈夫そうだ。
「魅了持ちのモンスター……。こんな厄介な能力を持っているモンスターなんて、ほとんどいないわよ。初見じゃ防ぎようが無いじゃない」
「こんな相手と、戦っていたんですね……」
「にしても、側から見てると、魅了されてる俺ってこんな感じになっていたのか。まるで夢遊病みたいな危ない感じだな」
心ここに在らずというか、意識が定まってないというか。
「それにしても、凄いわねショウタ君」
「え?」
「はい。自分から魅了状態を打ち破れる人なんて、上級冒険者ですら殆どいません」
「そうなの? でも、アイラは結構簡単に解けてたけど」
「それはご主人様のお陰です。魅了状態というのは、外的要因があれば抜け出すことが出来る繊細なものですが、自分一人で対処しようとするとなると話は変わります」
「それだけ、旦那様の想いが強かったということですわ!」
皆が一様に褒めてくれる。少し照れくさいな。
「ともかく、無事で良かったです」
マキが嬉しそうにもたれかかってくる。
心配してくれるのは嬉しいけど、少し気恥ずかしい。
「レ、レアモンスターの話も良いけど、それよりお腹が空いたな。昼食にしない?」
「……ふふ、そうでしたね。準備は出来ていますよ」
マキがバスケットを開けると、中にはサンドイッチが詰められていた。美味そうだ。
アイラも、袋から正月に見かけるような重箱を取り出す。……相変わらずすごい量だな。
「はい、ショウタ君。おしぼり」
「ありがと」
食事中、四方八方からやってくる彼女達の好意に甘えながら、昼食の時間はゆっくりと進んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
食事を終え、皆でお茶を啜り始めたところで、戦いの後のことを話した。
「という訳で、『レベルガチャ』の事は2人にも教えたから」
「そうなんですね。ではこれで、アヤネちゃんもアイラさんも、私達と同じになれたんですね」
「はい! 同じですわ!」
マキとアヤネがハイタッチをする。
微笑ましい情景に顔が綻ぶ。
「アキ様、マキ様。これからもよろしくお願いします」
「こちらこそー。ショウタ君をお願いね、彼、無茶を無茶と気付かない人だから」
「はい、しかと」
「え、そうかな?」
疑問に思って皆を見回すも、全員が頷いていた。
どうやら、俺に味方はいないらしい。
「むむ」
まあいいや、俺はダンジョンとレアモンスターのことだけ考えて、他は皆に任せよう。適材適所というやつだ。
「ああ、そうだ。あの時は有耶無耶になったけど、アヤネもアイラも俺のステータスを見ていいよ。アキとマキも、成長した俺のステータス確認してほしいな」
「はい!」
「おっ。ちょっと期待してたのよねー」
「拝見させて頂きます」
「ドキドキワクワクですわ!」
4人全員が『鑑定』持ちだ。それぞれが自身のスキルを行使して俺のステータスを確認する。
けど、アキとアイラはLv4だけど、マキとアヤネはLv3なんだよな。
そのせいで2人は俺の所持スキルは確認出来ても、ステータスの詳細まで見ることは出来ない。そしてLv4でも、スキル複数使用による、ⅡやⅢへの成長途中を確認することも出来ない。
この辺、ちょっと不便だよなー。『鑑定』スキルを落とすモンスターが居るなら、積極的に狩っていきたいところなんだけど……。
ステータスが見れない2人の為に、アイラがメモに書き写してくれている中、アキが呆れたように呟いた。
「『運』がとんでもないことになってるけど、それ以上にスキルの多さがヤバいわ。ここまでスキルを取得して、『鑑定』結果の画面が縦長になる人、初めて見たわよ」
「ガチャだけじゃなくて、レアドロップのスキルも含まれていますからね。とてつもない量ですが、使いこなせているショウタさんは流石です」
「聞いたことのないスキルまでいっぱい! 旦那様、凄いですわ!」
「流石私のご主人様です」
さっきから沢山褒められるなぁ。
「お嬢様、マキ様。こちらがステータスになります」
「助かりますわ!」
「ありがとうございます、アイラさん」
「読み終えたらお返しください。焼却処分しますので」
アイラは徹底してくれているな。ありがたい。
メモを渡されたアヤネは、『運』の数値を見て驚き固まっている。
「……す、凄いですわ」
せっかくだ、彼女にはあの事を伝えておこう。
「アヤネ、見ての通り俺のステータスのほとんどは、増強アイテムで嵩増しをした、紛い物のステータスなんだ。だから、君の言っていたように第二世代を作ろうとした場合、どんな影響が出るか分からない。それでも――」
「旦那様、それ以上は不要ですわ」
アヤネはそう言ってから少し考えるように俯いた。そして顔を上げた彼女は、覚悟を決めたような顔をしていた。
「旦那様、確かに旦那様に近付いたのは優秀な第二世代を作る事を口実にしたものでしたわ。ですが、あの時と今とでは、あなたに対する想いが違いますの。今のわたくしはただ、旦那様と暖かい家庭が築ければ、それで十分なのですわ。ですから、第二世代のことはもう良いのです。気を遣ってくださり、感謝しますわ」
「そっか。分かった、これからもよろしくな」
「はいですわ!」
アヤネを抱きしめて撫でると、アキやマキも、アヤネを可愛がるように撫でた。暫くそうしていると、アキが思い出したように手を挙げた。
「あ。ねえねえ、ショウタ君。この『真鑑定』ってなに? 『鑑定』が変化したの?」
「ああ、『鑑定LvMAX』になって、そこから進化したんだ」
「え、MAXまで行ったんだ?」
「では、あの機能も使えるんですよね……」
「そ、そうよね。アレ、使えるんだよね……」
2人が自身を抱いて、少し恥ずかしそうにしている。
うん、言われなくても分かるぞ。
「ねえショウタ君。それでも、今まで私達のは『鑑定』していないのよね?」
「まあ、そりゃね? 勝手に覗き見たのは、後にも先にもストーカー連中だけだよ」
ああいや、『黄金蟲』討伐時に、受付嬢のステータスもチラ見しちゃってたか。
「そっか……。ありがとう、ショウタ君。待っていてくれて」
なんだかんだで、アキとマキのステータスは、今まで見てこなかった。それは彼女達から見ていいと言われなかったのもあるけど、こちらから聞くことも躊躇われたからだ。
何故かわからないけれど、聞いてほしくないように感じたんだよな。
「わたくしとアイラは、余すことなく旦那様にお見せしましたわ!」
「そ、そうなんですね……」
「むぅ……。アヤネやアイラさんが大丈夫なら、多分平気でしょ。マキ、負けてられないわよ! ショウタ君、あたしのステータスを見て!」
「ショウタさん、私も……私もお願いします!!」
「え? あ、良いの?」
やっぱり、何かしらの遠慮はあったようだ。
「いつまでもあたし達だけ一方的に見るのはフェアじゃないし、それにショウタ君なら、いつか見せたいって思ってたから……」
「アキ……」
「ショウタさんには、私の全てを見てほしいんです!」
「マキもありがとう。分かった、見させてもらうね」
*****
名前:早乙女 愛希
年齢:21
身長:163cm
体重:48kg
スリーサイズ:80/53/80
レベル:60
腕力:590(+169)
器用:758(+217)
頑丈:341(+98)
俊敏:343(+98)
魔力:262(+75)
知力:257(+74)
運:67
装備:なし
スキル:鑑定Lv4、鑑定妨害Lv4、気配感知、俊足Ⅱ、体術Lv3、格闘術Lv3、算術、風魔法Lv2
*****
……ん?
*****
名前:早乙女 真希
年齢:19
身長:158cm
体重:49kg
スリーサイズ:83/55/83
レベル:40
腕力:227(+65)
器用:612(+175)
頑丈:171(+49)
俊敏:229(+107)
魔力:233(+67)
知力:287(+82)
運:45
装備:なし
スキル:鑑定Lv3、鑑定妨害Lv3、生体感知、俊足Ⅱ、体術Lv1、槍術Lv2、算術、水魔法Lv2
*****
……んん??
あれ、俺の専属……めっちゃ強くない??
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