ガチャ100回目:黄金の精算

 激闘を制し、感慨深く一息を入れようとしたところで、マスクを着けている事を思い出した。もうこれは外しておこう、慣れてないと息苦しいし。

 改めて深呼吸していると、疲労した空気を吹き飛ばす様にアヤネが歓喜していた。


「す、すごいですわ! レベルが8も上がりましたわ!!」


 アヤネは確か、『黄金蟲』との戦闘でレベル55に上がってたから、一気にレベル63か。けれど俺は、37から71と。

 うん、アヤネには悪いけど、やっぱり低レベル補正は偉大だな。


 よほど嬉しかったのか、アヤネは全身で喜びを表現した後、こちらに駆けてきた。彼女の行動パターンにはもう慣れたもので、嬉しそうに飛び込んでくるアヤネを抱きとめてあげる。

 お、今度はちゃんとカメラを外してあるな。良い子良い子。


「アヤネ、お疲れ。強敵だったな」

「はい、今までにない強さと厄介さでしたわ。……あの、旦那様。わたくしの魔法は、お役に立てましたか?」

「ああ、勿論」

「良かったですわ!」


 子犬のようにじゃれつくアヤネを撫でていると、アイテム回収を終えたアイラがやってきて、いきなり土下座をした。


「申し訳ありません、ご主人様!!」

「んぇっ!?」


 何事かと思っていると、アイラはそのままの恰好で詫び続けた。


「ご主人様の身を守り、先導するべき私が、まんまと敵の術中にはまり、魅了状態に陥るなど……。このような失態を犯すなど、メイド失格です。罰は如何様にもお受けします……」

「いや、いやいやいや。あんなの初見じゃ分からないよ。それにラッキーな事に途中で破る事ができたけど、アイラはすぐに原因を突き止めてくれたじゃないか。その機転のおかげで最後まで戦えたんだろ? アイラが気に病まなくても、十分やってくれたよ。あ、マスクは返すね」


 アイラは恭しく俺とアヤネからマスクを受け取るも、まだ悔しそうにしていた。


「……ご主人様。奴の魅了から抜け出せたのは、偶然でも幸運でもありません。あれは、ご主人様が活を入れてくださったからです」

「え?」

「覚えていませんか? ご主人様は無意識に、スキル『王の威圧Ⅲ』を使用されたのです。あれによりご主人様のみならず、私達の魅了は消し飛び、モンスターは動きを止めました。『風魔法』の維持は健在だった為落ちる事はありませんでしたが、翅の動きは止まっておりました」

「そうだったのか……」


 確かに、あの時は無我夢中で力を込めて叫んだ。

 そのおかげで、皆も目を覚ましたのか。となると、敵をスタンさせる以外にも様々な恩恵があるのなら、是非とも検証しておきたい所だが……。


「便利そうだけど、俺、叫ぶの苦手なんだよな」

「そうですわね……。旦那様が叫ぶ姿はとっても新鮮でしたわ」

「変じゃなかった?」

「そんなことありません。格好良かったですわ! あ、きちんとカメラに映ってますから、あとで先輩達にも見て貰いましょう」

「ええ? それは、ハズイ……」

「残念ながら、先ほどの戦闘は貴重な資料になりますの。ですから、編集される先輩達は絶対に見る事になりますわ。諦めてください、旦那様っ」

「うぐぅ……」


 この後に待っている現実に、少し現実逃避したくなるものの、避けては通れない道だろう。諦めて顔を上げるが、アイラはまだ戻ってきていなかった。


「アイラ、いつまで落ち込んでるんだ?」

「ですが……」


 アヤネをちらりと見るが、彼女は俺に期待の眼差しを向けている。

 まあ、そうか。今の彼女の主人は、アヤネじゃなくて俺だもんな。ここは俺がやるべき仕事な訳だ。


「はぁ……。アイラは確かに冒険者としては先輩だし、色々と完璧にこなしてみせる。けど、君は全知全能の神様なんかじゃなく、普通の人間だ。失敗の1つや2つくらい、当たり前の事じゃないか。だからこれくらいのミス、いちいち気にするなって」

「それは、ご主人様としての、命令ですか?」

「……そうだな。俺のメイドを名乗るのなら、このくらいでへこたれてたら、ついてこれないぞ?」

「……はい、承知しました。ご主人様、これからもお傍に」

「ああ、頼りにしてるよ」


 ふと思いついたので、アイラの頭に手を置いた。


「ご、ご主人様?」

「いいからいいから」


 アキやマキ。それからアヤネは頻繁に撫でてるのに、アイラにはしてなかったなと。ふとそう思ったのでやってみたが……。うん、悪くないな。

 アイラは困ってるようだけど、俺がやりたいので定期的にしよう。


「それじゃ、改めてドロップの検品をしようか。アイラ、頼むよ」

「はい」


 アイラが俺の隣に座る。その距離は、いつもより近い気がしたが……。まあ、そこは突っ込むまい。

 彼女は丁寧に袋からドロップを取り出し、俺に見せてくれた。


「まずは『黄金蟲』のドロップですが、スキルは『金剛力』『金剛壁』『金剛外装』。アイテムは『黄金の種』が9つと、『黄金の盃』と『大魔石』が1つです」

「おお、最初は種が4つだった事を考えれば、だいぶ増えたな」

「全部輝いて見えますわ!」

「次に、『黄金鳳蝶』ですが、こちらも確認できたものは全てドロップしたようです。スキルは『金剛外装Ⅲ』『魔導の叡智』『風魔法Lv4』『魔力回復Lv1』。そしてアイテムに『黄金の種(大)』が4つ、『黄金の蜜』が3つ、『黄金香』と『特大魔石』が1つです」

「ふむ」


 色々と気になるが、やはり目を引くのはこの種だな。

 例えるなら普通の種は、1cm以下……大体7mmほどで、スイカの種と同じくらいだ。けれど目の前にあるのはそれの約2倍。カボチャの種くらいはある。

 とりあえず、普通サイズと大サイズでプランターは分けるべきだな。


「とりあえずは、『金剛外装Ⅲ』は俺が覚える。『金剛力』『金剛壁』はアイラが覚えて」

「承知しました。活用させて頂きます」

「残りのスキルは全部アヤネが覚えて」

「ええっ!? ぜ、全部ですの!?」

「うん。『金剛外装』『魔導の叡智』『風魔法Lv4』『魔力回復Lv1』。全部で4つだ」

「こんな貴重なスキルを……。旦那様、ありがとうございますわ! もっともっと、頑張りますわ!」


 全員がスキルを取得し終えたのを確認したので、2人のステータスを確認した。


*****

名前:宝条院 綾音

年齢:18

身長:146cm

体重:35kg

スリーサイズ:75/52/78

レベル:63

腕力:94(+27)

器用:185(+53)

頑丈:111(+12)(+32)

俊敏:184(+53)

魔力:646(+17)(+185)

知力:826(+22)(+236)

運:10


装備:宝石のステッキ、ハイパープロテクター内蔵・新式オートクチュール

スキル:鑑定Lv3、鑑定妨害Lv3、金剛外装、怪力Ⅱ、統率、炎魔法Lv3、風魔法Lv6、回復魔法Lv2、魔力回復Lv1、魔導の叡智(1/3)

*****


 種から得たブーストや、統率の1.4倍効果も合わさってか、前回見た時よりも大幅に成長したな。特に『知力』は、240くらい増えたんじゃないか? それと、Lv表記のあるスキルの場合、スキルレベルの増加量は単純に足し算なんだな。これはお得だ。

 あ、そういえば彼女の身長とかの個人情報、初めて見ちゃったな。やっぱ、数字で改めて見ると、アヤネって小っちゃいよな~。


*****

名前:犬柴 愛良

年齢:23

身長:170cm

体重:56kg

スリーサイズ:90/60/89

レベル:173

腕力:1266(+14)(+211)

器用:1265(+12)(+211)

頑丈:836(+140)

俊敏:1670(+14)(+279)

魔力:420(+70)

知力:424(+71)

運:6


装備:パラゾニウム、ライフスティール、カスタマイズハイパープロテクター(戦場のメイド仕様)

スキル:鑑定Lv4、鑑定妨害Lv4、身体強化Lv7、隠形、気配遮断Lv5、剛力(1/3)、怪力Ⅱ(1/3)、金剛力、俊足Ⅱ、迅速、鉄壁、城壁(1/3)、金剛壁、統率Ⅲ、予知、二刀流、剣術Lv4、暗殺術Lv3、投擲Lv8

*****


 アイラは相変わらず、気持ちの良いほどぶっ飛んだステータスだな。前衛系のステータスは1レベルごとに全て4で、SPも毎回8も貰えて、2:2:4の割合で『腕力』『器用』『俊敏』に振ってるから、レベルアップによる増加値が半端じゃない。

 俺とアヤネも『統率Ⅱ』を手に入れたら、『頑丈』4桁も近いだろうな。


 さて、2人の成長を確認できたし、俺はガチャを回すとするかな。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


今日で投稿開始から丸二か月。区切りよく本編も100話到達しました。

これからもよろしくお願いします


この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る