ガチャ099回目:魔法種のレアモンスター
改めて臨戦体勢を取るも、『黄金鳳蝶』はいまだ動くそぶりをみせない。その鱗粉と自身の輝きで、戦う意欲を削いでくるという面倒な相手だが、それが無力化されたんだぞ?
いくら非アクティブといっても、『黄金蟲』以上に暢気すぎないかこいつ。
けど、鱗粉のせいで分かりづらいが、こいつも出現と同時に『金剛外装』を使っているらしい。全身が、身体とは別の輝きを纏っているように感じる。
となれば、先手はやっぱり石ころだろ。
「おりゃっ!」
『ビュン!』
その時強い風が巻き起こり、石ころは失速。地面に落ちた。
「!?」
なんだ今のは? 『金剛外装』の挙動にしては、何かが変だ。
となると……奴の持っている『風魔法』か。質量の軽い攻撃では、外装を外すまでには至らない、と。
「ファイアーボール!」
『ボンッ!』
炎の球は外装へと激突した。これでしばらくの無敵時間を挟めば……。
「なに!?」
奴の周りにある『金剛外装』は健在だった。確かに当たったはずだが。
「あの外装、確かⅡではなくてⅢだったな……」
それに、ここまでしたにもかかわらず『黄金鳳蝶』はふよふよと漂っていた。
もしかして俺、舐められてる?
「ご主人様、如何しますか?」
「ご指示をお願いしますわ!」
「魔法をありったけぶつけてくれ! 威力よりも数重視で! アイラは裏から翅を攻撃! アレを地面に落とす」
「はいですわ!」
「承知しました」
アヤネが炎と風の球を交互に放ち、俺も接近を試みつつ魔法を放つ。奴は飛んではいるものの、2メートルくらいの高さでホバリングを続けている。俺やアイラなら、跳べば届く距離だ。
『パキンッ!』
相手の動きを見つつ攻撃を続けていると、何かが弾ける音と共に外装が消えていった。まさかとは思うが、Ⅱの効果が複数回発動していたのか?
気にはなるが検証は後だ。まずはコイツを地面に叩き落とす!
「アイラ!」
「はいっ!」
アイラと合わせるようにジャンプして、前後から挟撃を仕掛ける。俺の剣は奴の胴体を抉り、アイラの刃は翅に幾つかの穴を開けた。中からは、金色の体液が零れ落ちた。
『キィ!?』
傷を負ってようやく、奴はこちらを見た。
呑気も過ぎればただのバカだな。
それにしても……。
「ここまで金色だから多少期待はしたが、声だけ聞くに堪えんな」
「まったくですね」
いや、金切り音だからある意味合ってるのか?
『キイィィ!!』
奴は俺達の言葉がわかるのか、怒ったかのように空中で暴れ回る。
その際、奴の周囲に風が集まり、緑色の暴風が出現する。狙いは……俺か。
「レベル4魔法、ウィンドストームですわ!」
アヤネの悲鳴に近い叫びを聞き、改めて暴風を見る。ただの風ならば、吹き飛ばされないように踏ん張るだけだと思ったが、俺の『直感』が、この場にいては危険だと悲鳴を上げた。
これは受けるのは不味い!!
「『俊足Ⅲ』『迅速Ⅱ』!」
不可視の風を避けるなんて芸当、普通は無理だが、魔法によって生み出された存在には
直線的だった為、横に飛ぶことでなんとか避ける事に成功した。
『バキバキバキ!!』
そしてその威力は、俺の背後にあった森が身を以て証明してくれた。
暴風が通り過ぎた痕は、森ではなくなっていたのだ。
「マジかよ……」
風に吹き飛ばされたわけではない。見えない何かに切り裂かれ、元々は木だったはずのモノが溢れる光景が延々と続いていた。遠くに花畑が見えていたが、そこまでは暴風は届かなかったらしい。
幸い、ここはマップの端だ。被害が誰かに出る事は無かった。だが、俺はこいつを、心のどこかで舐めていたのかもしれない。
鱗粉による魅了なんて搦め手を使うこいつは、決してそれだけの存在では無かった。レベルが50にも満たない、第一層の弱いモンスターではないのだ。
思えば、今まで相対してきたレアモンスターは全て前衛タイプだった。剣や、持ち前の爪や牙で直接攻撃を仕掛けてくる奴らだった。俺はそいつらを直接攻撃し、打ち倒すことで、強くなったと過信していた。
だが相手は、俺が出会う中で初めての、魔法攻撃を主体とするレアモンスターなのだ。魔法を主体に戦う相手だと、ここまで凶悪な攻撃をしてくるのか。
「ご主人様、お気を確かに!」
「ッ!」
アイラの言葉を受け、意識を切り替える。
さきほどよりは小さいが、球体状に圧縮された、鎌鼬のような何かが頭上を通り抜ける。
「すまん」
「いえ。ですが今の魔法で、奴の『魔力』もかなり削られた事でしょう。連発は難しいかもしれませんし、畳みかけましょう」
そういえば、奴の『魔力』は400と少な目だったな。さっきの凶悪な魔法を連発していたら、俺を仕留めれたのかもしれないのに、小型の攻撃をわざわざ撃ってきたんだ。
『黄金鳳蝶』も心なしか動きが鈍いし、奴は長期戦が苦手なのかもしれない。
それに、初手で使用した『金剛外装Ⅲ』もそうだが、あの鱗粉攻撃も、『魔力』を消費している可能性が高いか。
「よし、続けて攻める。アイラは変わらず翅を、アヤネは炎で燃やせ!」
「お任せを」
「はいですわ!」
その後何度か攻撃を加えたが、奴の攻撃は完封していた。
鱗粉はマスクで封じ、外装も対処され、とっておきの風魔法すら避けられる。俺がモンスターの立場だったらお手上げだったな。
ステータスとしては『頑丈』が低く柔らかいものの、奴の『俊敏』の高さにより、俺とアヤネの攻撃では致命傷を与えるには至らなかった。だが――。
「チェックメイトです」
『キィィィ!!』
影から現れたアイラが、奴の翅を1枚、根元から断ち切った。
「ナイス!」
いくら『俊敏』が高くても、翅という足を失った奴の機動力は、見違えるほど衰えていた。
「これでトドメだ!!」
『斬ッ!』
巨大な『黄金鳳蝶』が真っ二つに切り裂かれ、金色の粒子となって消えて行った。
【レベルアップ】
【レベルが40から71に上昇しました】
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