ガチャ097回目:弓のテストと契約確認

 彼女達に出発を告げ立ち上がると、少し先の森から、綿毛虫が顔をのぞかせているのが見て取れた。

 弓の出番はもう少し先かなと思っていたが、これなら……。そう思ってマップを見れば、手ごろそうな獲物がチラホラと見える。彼女達も近くにいる事だし、せっかくだから今やってみよう。


「アイラ。本格的に狩りをする前に、ちょっと実験する」

「はい」


 背負っていた『カイザーヴェイン』を構え、強く念じながら弦を引く。すると、俺の魔力を消費する形で、矢が自動的につがえられた。即座に矢を放つと、魔力の矢は音もなく飛んでゆき、綿毛虫を射抜いた。

 彼我の距離は25メートルほどあったが、俺の矢は正確に相手の頭を貫いていた。


「お見事です、ご主人様」

「「「おおー!」」」


 アイラの賞賛と共に、彼女達から歓声が上がる。普段は中々、近距離での戦いは披露し辛いけど、こういうことなら安全に魅せられそうだ。

 うん。彼女達の事を考えると、俺の中の弓の評価が、また一段と増したな。


 続けて、同じように狙えそうな綿毛虫も順番に射抜いていく。その数13体。宝箱を探していた時に撃破した数を含めると、今ので合計20体目だ。

 そんな様子を彼女達は楽しそうに見守ってくれていた。狙える位置に居てくれないと射抜けないけど、彼女達の為にも出来る限り弓は使っていこう。


「アイラ」

「はい。回収して参りました」

「ご苦労様」


 相変わらずの回収能力だな。彼女に袋の中身を見せてもらうが、きちんと玉糸と『極小魔石』が20個ずつ落ちていたらしい。


「良かった。弓でも、しっかり『運』は機能してくれるみたいだ」

「それはよかったです」


 あとは、レアモンスターも湧いてくれるかどうかだけど、以前魔法を混ぜたときは問題なかったから、そこは大丈夫だと思いたい。ま、とにかく狩って回るか!


「あの森から時計回りに回って行こう」

「承知しました」

「それじゃ、今度こそ行ってきます」

「「「いってらっしゃい!」」」


 ぼそりとアヤネが「ですわ」を口ずさむのが聞こえ、笑みがこぼれる。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「よし、これで98と」

「半刻で達成ですか。凄まじい速度ですね、ご主人様」

「それについてくるアイラの方が凄いよ」


 俺は次の獲物を探しつつも、切り捨てたら即座に駆け抜けてるからスピードはほとんど落ちない。

 けど、アイラはドロップしたアイテムを逐一拾いつつ俺を追ってるのだ。更には、モンスターは死んでから煙になり、アイテムをドロップするまでに、数秒のラグタイムがある。にもかかわらず、彼女はジグザグに動き回る俺の後ろを、見失うことなく的確についてきているのだ。

 俺じゃ、どんなに能力が上がろうと、これだけは真似出来そうにない。


「ご主人様のメイドですから」

「そ、そう……」


 そろそろ良い頃合いだし、アヤネを呼ぶか。

 そう思って彼女達の方へと足を向けると、アイラが横に並んだ。


「ご主人様、1つよろしいでしょうか」

「ん?」

「先日の契約書、すぐにサインされましたが中身はしっかりと読まれましたか?」

「え? アイラが俺のメイドになるってとこしか見てないけど」

「なるほど。ではあの要項は見ておられないのですね。どうりで、普段通りな訳です」


 特に嫌な予感はしなかったけど、なんか見逃してたのか?


「ご主人様。あの契約には、私の身体を自由にして良いという契約も含まれているんですよ?」

「……ん? それって、メイドとか、冒険の手助けって意味ではなく?」

「はい。好きに手を出して構わないという意味です」

「それ、彼女達は……」

「奥方様達はわかりませんが、お嬢様はご存じかと」

「……」


 それは厄介な。


「ご迷惑でしたか?」

「あの契約書は、アイラ的に問題ないから何も言わなかったんだよな。……今までアイラの事は、頼れる仲間として見てたから、いきなりそう言われても、反応に困る」

「私に、魅力は感じませんか?」

「ありすぎて困ってんの!」

「ふふ、左様でございますか」


 くすりと微笑むアイラの笑顔が眩しい。

 ああ、もう。その顔はズルイよ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 戻って来た俺とアイラの様子に、彼女達は不思議そうな顔をしていた。


「なに、どうしたの?」

「ショウタさん?」

「……さては、えっちなことしてきたのですわね!」

「してない」


 俺は、先ほどまで読み返していた契約書を彼女達に見せながら、状況を説明した。


「ふーん、そうなんだ」

「え、軽い!?」


 怒られるかと思ったけど、アキの反応は軽かった。


「ショウタさん、アイラさんの事なら問題ないですよ。アヤネちゃんが3人目になってから、今まで何度も話し合いをしましたから」

「そ。完全に宝条院家とは関係なしに、ショウタ君に仕えたいって話は聞いてるもん。だから、あたし達はとっくに認めてる訳」

「はい、アイラも先輩達も、みんな家族ですわ!」


 アヤネが嬉しそうに飛びついてくる。


「まあ、皆が良いならそれでいいよ。あとは……」

「あ、ちなみにお母さんからも了承貰ってるから。初めに連れてきた時言ってたでしょ、4人娶るならAランクって。わざわざあんな事言うってことは、そういう事よ」

「そ、そうなのか……」


 俺の知らないところで、外堀は埋まってたんだな。


「さて、ショウタ君。戻って来たって事はそろそろなんじゃない?」

「あ、ああ。そうだった。あと2匹だと思うから、念のためアヤネを呼びに来たんだ」

「はい、行きますわ!」

「ショウタ君、前回はたまにしか出なかったけど、どんな感じ?」

「うん。前回と違って条件は揃ってるはずだからほぼ確実に出ると思う」


 前回3回に1回のペースだったが、その時の『運』は460ほど。そして現在の『運』は1364。

 単純に3倍近い『運』があるから、たぶん大丈夫だと思う。


「では、私達はここで待機してますね」

「うん、その次が出るかもしれないもんねー」

「悪いね、それじゃ、報告待ってて」

「はーい。いってらっしゃーい」

「頑張ってください!」

「ああ、行ってきます!」

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