ガチャ090回目:箱の中身は

 金の箱の中には、真っ暗闇が広がっていた。だが、それ以外何も見当たらない。

 どういうことかと周りを見てみると、皆同じように驚いていた。


「えーっと……。空っぽなんてオチ、あるんだね?」

「……い、いえ。ショウタさん、これは違います!」

「大当たりよ! 大当たり!!」

「え?」

「少年、お主どれだけの強運に恵まれておるのじゃ? 金箱でコレを見るのは、ワシも数回とないぞ!」

「ええ??」


 暗闇が大当たり?

 どゆこと??


 皆、興奮冷めやらぬ様子だが、誰1人として答えを教えてくれなかった。いや、それどころじゃ無さそうだけど、誰か説明してくれ。

 そんな中、若干ポーカーフェイスが崩れているアイラが優しく教えてくれた。


「ご主人様、これは私の袋と同じ状態にあるのです」

「というと、つまり……」

「はい。宝箱に入りきらない量、もしくはが入っている可能性が高いです」

「おお……!」


 幅、奥行き、高さ共に50cm程度しかないから、武器や防具などは期待できないと思っていたけど、そういうギミックもあるのか。それなら、アイラのようなアーティファクトも、こういったで出て来てくれるのかもしれないな。


「期待しているところ申し訳ありませんが、私の武器は金箱よりもランクの高い『白金』でしたから、アーティファクトは出ないかと……」

「そ、そうなんだ……」


 それはちょっと残念だけど、でも浪漫ある話だし、楽しみが増えた。だって、宝箱はまだまだ上があるってことだもんな。


「それで、どうやって取り出すの?」

「私が普段しているように、その暗闇に手を突っ込むのです。そうすれば、自ずとご主人様の手にアイテムがやってきます」


 アイラの言う通りに宝箱に手を入れた。

 すると、指に何やら硬い物が触れた。これかな?


 手探りでその物体を掴むと、ぐんっと力が漲るのが分かった。その感覚は覚えがあった。

 アヤネやアイラから、『統率』の効果を初めて受けた時に感じたものだ。


 ……もしかして、今掴んだものの効果か?

 勢いよく引き上げると、その全貌が分かった。


「……え!?」


 か、輝いて見えるんだけど!? それにこの感覚、もしかして……。

 とにかく、『真鑑定』だ!


 名称:魔道弓・カイザーヴェイン

 武器レベル:38


「……アーティファクト」


 それは誰の声だったか。

 アキか、マキか。それともリュウさんだったかもしれない。


 もしかすると、アイラかもしれないな。だって、完全にポーカーフェイス崩れてるし。


「アイラ、なんだっけ。金箱からはアーティファクトは――」

「も、申し訳ありません、ご主人様。私が浅はかでした……」


 冗談のつもりだったけど、アイラは深々と頭を下げて謝った。


「ごめんって、冗談だよ。頭を上げてくれ」

「アマチ少年、末恐ろしいのう。金箱で、それも第一層でこの様な業物を呼び寄せるとは……」

「あはは……。でも、武器の名前的に『カイザーゴブリン』……同じ皇帝って意味のアイテムっぽいですし、数打てば他の人でも出るんじゃないですか?」


 知らないけど。


「ショウタ君、レアモンスターの名称入り武器って、ほんとにすごーく、確率低いんだよ?」

「むしろ、宝箱から出るのは、レアモンスターとは関係のないアイテムがほとんどなんです」

「そ、そうなんだ……」

「そうなんです。それとショウタさん、このアーティファクト、自分じゃ使えないなーなんて、思ってたりしません?」

「!?」


 マキはエスパーなのか?

 確かに、剣を振った方が早いし、矢を持ち込むにしても背負える矢束の数は、数十本が限界だろう。けど、俺が普段相手にする数はその10倍以上だ。矢玉が無くなり次第、アイラから補充するのも面倒だし、荷物になる弓なんて、最初から持っていない方が楽に決まっている。


「ショウタ君は本当にわかりやすいわねー。君の考えるような弓なら、確かに荷物が増えるだけで、メリットはほとんどないわ。けど、アーティファクトを舐めちゃいけないわよ」

「ショウタさん。この弓は『魔道弓』とついている以上、恐らく矢は必要ありません。使用者の魔力さえあれば、無制限に矢を放てます」

「マジで!?」


 それが事実なら、話は変わって来る。

 1発に要する『魔力』の消費量次第だが、例えば今日戦った『エンペラーゴブリン』戦。

 凶悪なステータスを誇る奴を放って雑魚を叩くわけにはいかないから、奴は俺が相手をして、その内にアイラに雑魚を間引いてもらう戦略を取った。

 けど、もしも遠距離から的確に戦力を削る手段があったとしたら、奴が現れた瞬間距離を置いて、遠くから奴の軍団を減らして行った方が楽に決まっている。


 そして奴の『魔力』が尽き、増援が出なくなったところで、トドメを刺せば良い。


 今までは近接戦で戦うしか戦闘スタイルを選べなかったが、この弓があれば、戦略の幅が大きく広がるだろう。

 それに俺はレベルアップによる『魔力』全快という

 『魔力回復Lv2』もあるし、この武器の存在は大きいぞ……!


「あの、リュウさん……」

「皆まで言わずともわかるわい。演習場に案内しよう」

「すみません、何から何まで」

「かっかっか! 新しい武器にワクワクしとるんじゃろう。先ほどの疲れも吹っ飛ぶくらいにはな。なに遠慮するな、お主も男ということじゃ」

「もー、仕方ないなぁ。付き合ってあげる」

「はい。ですが、無理は禁物ですよ。疲労が残っているのは変わらないんですからね」

「うん、ありがとう」


 そうして俺達はリュウさんに案内され、ダンジョン協会第128支部地下にある、演習場へと連れて行ってもらった。

 協会備え付けの的が用意されていたが、案の定『魔道弓』という高レベルなアーティファクトの攻撃に、的が耐え切れず、数発でボロボロになってしまうので、仕方なしに今日沢山取ってきた『鋼鉄』装備を案山子に装着させて射抜く事にした。


 案の定、装備のレベル差も相まって、本気で弦を引けば『鋼鉄』だろうと容赦なく貫通してくれた。

 『魔道弓』の扱いに慣れるため、とりあえず200発ほど試したが、『魔力』枯渇による疲労を感じる事は無かった。その代わり、今日取ってきた『鋼鉄』装備はほとんど鉄屑同然となり、リュウさんからはやりすぎだと呆れられてしまった。

 そうかな? 軽いジャブのつもりだったんだけど……。

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