ガチャ085回目:大きけりゃ良いってものでもない

 ゴブリン狩りを開始して数十分。

 最初は4体や5体で狩っていたが、慣れてきた事もあって俺は10体前後出現するゴブリンの集落周辺で連戦を重ねていた。1戦1戦が油断ならない戦いであり、相手もある程度の力量はある。その為、『初心者ダンジョン』での流れ作業染みた戦闘とは違い、毎回それなりの集中力を要していた。


「ご主人様、次の集団で100匹を超えます」

「わかった!」


 普段は自分で数えているが、戦いに集中出来ないため、その役目はアイラに任せる事にしていた。

 ここのダンジョンは今までと違い、敵の密度がとてつもなく高い。1つの集団は固まって存在しているが、集落に近いほど集団同士の距離が近くなるのだ。

 その為、1つの集団を討伐しても、すぐにお代わりがやって来る状態だ。これでもしも、再出現の時間が短かったらやばかったな。


「今ので100匹です」

「おっ?」


 アイラが示した100匹目の『ファイターゴブリン』の煙は、霧散することなくその場で浮かび始めた。

 これはレアモンスター出現の兆候だった。連続100匹はどうなるかと危惧していたが、ここではどのゴブリンでも1匹カウントになるようで安心した。

 俺は残りのゴブリンを急ぎ殲滅し、様子を見る。


 一応集落を中心に狩りをしていたため、この集落は一時的に俺が占拠しているような状態だった。果たしてこいつらはどこで湧くのか……。他の集落に移動したら面倒だな。


 そうして見守る事数十秒。煙は集落中央に屹立していた、部族の柱と呼べそうな変なお面がいくつもついている柱へと移動すると、その場で膨れ上がる。

 どうやらここが出現ポイントらしい。


『グオオ……』


「『鑑定』」


*****

名前:キングゴブリン

レベル:38

腕力:370

器用:180

頑丈:370

俊敏:200

魔力:500

知力:180

運:なし


装備:キングゴブリンの魔鉄剣、キングゴブリンの魔鉄鎧

スキル:剛力、怪力、鉄壁、城壁、破壊の叡智、王の威圧

ドロップ:ランダムボックス、ランダムな装備、ゴブリンの王冠

魔石:大

*****


「いや、毎回デカいんだって」


 3メートルを越すその巨体は、『ホブゴブリン』の強化体と酷似していた。筋肉隆々の肉体に、それを覆う『魔鉄』の武具。スキル構成はあいつよりもパワー寄りって感じだが、今日はアヤネの魔法での援護はない。


「アヤネがいたらなぁ」

「ご主人様、私はどういたしましょう」

「ちんたらしてたら、雑魚が再出現しかねない。手伝って」

「承知しました。タゲ取りはお任せしますね」


 そう言ってアイラは姿を隠した。


「ファイアーボール」


 アヤネを真似て、炎の球を『キングゴブリン』の頭に目掛けて放つ。しかし俺の練度の問題か、奴は軽く剣を振るってかき消した。そう言えば『メイジゴブリン』を倒したことで『炎魔法』のスキルをドロップしていたのかもしれないんだよな。

 連戦に次ぐ連戦で完全に忘れてた。戦いが終わったら一時離脱して、安全圏で確認しようかな。


「こっちだデカぶつ!」


 『紅蓮剣』を纏わせたミスリルソードで、鎧の隙間に攻撃する。しかし、相手もそこを狙うのを分かっていたのか、身体を捻って避けてみせた。

 相手の知性の問題か、俺とのステータス差の問題か、今までまともに回避行動を取れる相手はいなかった。だが、どうやらこいつは違うようだ。ちゃんとした戦士らしい。


 そして『キングゴブリン』と向かい合った俺は、スキルを温存しながら何度も剣を打ち合った。

 巨大な相手とはいえ、『腕力』の値は俺の方が上だ。身長差の問題で、相手の攻撃は頭上からの振り下ろし攻撃がほとんどである為、相手の威力は増しているが、それでようやく打ち合いとしては拮抗しているように思う。


 そこに業を煮やしたのか、奴は大きく息を吸った。


『グオオオオオッ!!』

「っ!?」


 『キングゴブリン』の雄叫びにより、全身が硬直した。


 なんだ? 動けない!?


 身体が石のように固まり、身動き出来ないでいると、奴から放たれる圧力は急激に高まった。見ると、『キングゴブリン』は片手から両手に剣を持ち替え、大きく振りかぶっていた。


 マズイ!!


「『金剛外装Ⅱ』!!」


 黄金の光が俺を包み込み、致死の一撃と激突した。


『ガイィィィンッ!』


『グオオッ!?』


 見えない障壁に跳ね返され、『キングゴブリン』はたたらを踏んだ。


 奴が武器を構えなおしたところで、ようやく硬直が解けた。身体が動く。

 ……危なかった、『金剛外装Ⅱ』が無ければ死んでいたかもしれない。それに、あの一撃は増強スキルを使用していただろうから、かなりの威力を秘めていただろう。それすら跳ね返せる力……。やっぱりこのスキルの性能は計り知れないな。

 そりゃ億単位で取引されちゃうって。


「『バックスタブ』」

『グオオッ!?』


 アイラが『キングゴブリン』の背後から現れ、防具ごと両足の腱を貫いた。たまらず奴は両手を地面について転倒を免れる。転びはしなかったが、隙だらけの頭が目の前にまで落ちて来ていた。


「『怪力Ⅲ』『金剛力Ⅱ』。うおおおおっ!!」


『斬ッ!!』


 『キングゴブリン』の首を、力の限り斬った。

 奴の喉からは苦悶の声と共に血が噴き出るが、次第にそれは煙へと変わり、ゆっくりと倒れ伏した。


【レベルアップ】

【レベルが40から58に上昇しました】

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る