ガチャ078回目:弓使い
10分後、煙は完全に霧散した。
運が良かったのか、次は現れなかったようだ。
「ご主人様。どうやら『ボスウルフ』を倒すと、通常モンスターもしばらく出現しないようですね」
俺が煙を警戒する中、周囲を観察していたアイラが告げた。
「ああ、どうりで。随分静かだなとは思ってたんだ」
「こちら、『ボスウルフ』のドロップです。如何されますか?」
アイラは素早く回収し、俺に全て見せてくれた。
「ん-……。『統率Ⅱ』の効果も気になるけど、どうせ使うなら、一番効果を発揮する俺とアイラが対象になるべきだ。となればアヤネに覚えさせたい。だから保留かな。数が増えるようなら、出品するのも悪くないかも」
「では、一旦収納しておきますね」
「よろしく。それじゃ、2番目に行こうか」
◇◇◇◇◇◇◇◇
2カ所目でも同様に狩りを行い、『ボスウルフ』を撃破。ちなみに雑魚モンスターは、きっちり100匹分討伐させられた。やはりレアモンスターも、別モンスター扱いらしい。
【レベルアップ】
【レベルが30から36に上昇しました】
そして、やはり『低レベル補正』というのが存在するのか、あまりレベルは上昇しなかったし、次のレアモンスターも現れる事はなかった。
もしかすると、レアモンスターの強さ次第で、次のレアモンスターの確率が変わってくるのかもしれない。
『ホブゴブリン』はレベル15。
『黄金蟲』はレベル18。
『マーダーラビット』はレベル20。
『ボスウルフ』はレベル23。
『ホブゴブリン』ですら5割を切る出現確率なのだ。『ボスウルフ』はもっと少ないのかもしれない。
少ないと言えば、ガチャ更新してから今まで、アイテムが出現していないよな。URすらまだ4回しか出ていないし、相当渋いらしいな。
これも、『運』が上がっていけば変わるんだろうか?
続けて、3カ所目の丘陵地帯へと辿り着いた。そこは第三層に近い場所であり、普段人はいないはずなのだが、今日は別だった。
幸いにして、クレーター近辺はモンスターの密度が高いためか、冒険者は近付かないみたいで助かるんだが……。
「アイラ、あっちの3層入り口方面に、6人ほど人がいるみたいだけど、影響はないかな?」
「ご主人様の懸念は、『ボスウルフ』の咆哮による『統率』効果が、クレーターの外まで届くか、ということでしょうか? 申し訳ありませんが、情報がありません。呼び寄せたヒルズウルフのみ対象となるのか、はたまた声の届く範囲全てを対象とするのか……。念のため、その冒険者達の練度を見ておきましょう。1割程度の強化であっても、ギリギリの戦いを繰り広げていた場合、崩壊しかねませんから」
「なるほど、確かに」
丘陵地帯の外側は平原エリアとの境界線になっている。その為、他のモンスターはほとんど出現しないため、そこを通って集団を見に行く事にした。
すると、視界に6人全員を捉える事ができた。どうやら、彼らは皆1つのチームのようだった。
ちょうど、3体のヒルズウルフと交戦を開始したらしい。
「タンクは正面2体のターゲットを!」
「おう!」
「サブタンクはアタッカーと共に後ろの1匹をやるぞ!」
構成としては巨大な鋼鉄製の盾を着けた重戦士っぽい男が2人。剣士が2人。魔法使いっぽい杖を持つ司令塔の男が1人。そして最後の1人は弓を持った女性だった。
遠距離武器か……。『器用』特化でなければ扱いが難しいとされる武器だが、競技としての技術を転用できるし、直接前に出て戦う必要もないから、女性からの人気が高い……だったかな?
それにしても……。
「チームってのは、毎回あんな風に声掛けをするものなのか?」
「いいえ、あれは恐らく急造のチームなのでしょう。慣れたチームならば声掛けは最低限ですし、呼びかけも役職ではなく名前になります。誰にでも伝わる様に、ああやっているのでしょう」
「そっか。あのチームは、アイラからみてどう?」
「実力としては申し分ないかと。恐らく、『俊足』を取りに来たか、もしくは3層以降で戦う為の予行演習も兼ねているのではと」
そういえば、第二層に降りてきた時から、ここには6人分の表示があった。ずっとここで狩り続けているのかもしれない。
「なるほどなー」
チームは、固定で動くものもあれば、募集を掛けて野良で組む事もあるから、ああいう工程も必要なんだろうな。それを思うと、アヤネもアイラも、そういった事はほとんど必要としなかった。俺とチームを組んですぐにもかかわらず、こちらのしてほしい事を読んで行動してくれていた。
チーム初心者の俺が苦労せずやっていけているのも、彼女達がそれだけ優秀という事か。
「ま、問題ないならそれでいいさ。行こうアイラ」
「承知しました」
彼らに背を向け、俺達はヒルズウルフ狩りを再開した。その姿を、連中が睨むように見ている事も知らずに。
◇◇◇◇◇◇◇◇
それは、『ボスウルフ』との戦闘中に起きた。
「どりゃっ!」
『ギャインッ!』
『ボスウルフ』の攻撃を躱し、カウンターで喉を切り裂く。やはり、『怪力Ⅱ』無しでは何度やっても即死させることは難しいようで、ボスウルフは転がる様に距離を置いた。
しかし、奴の『頑丈』さではそれだけで簡単に瀕死になる。あとは、このまま追撃を入れれば楽に倒せるだろう。
もはや作業に思えてきたこの狩りを終わらせようと前に踏み出した瞬間、俺の真横を何かが通り過ぎた。
『ギャン!』
「……は?」
見れば、『ボスウルフ』の眉間に、1本の矢が突き刺さっていた。
『ボスウルフ』は崩れ落ち、その身体からは煙が噴き出す。
【レベルアップ】
【レベルが36から39に上昇しました】
レベルアップした。つまり、奴は死んだ。今の攻撃で?
何が起きたのか理解できず、唖然とする中、後ろから大きな声が聞こえた。
「あはっ、めっちゃレベル上がったわ。ラッキー!」
「あっ、ずりー! 俺も攻撃しときゃ良かった」
「……あぁ?」
後ろを見れば、先ほどのチームと思しき4人が、クレーターの外周部に立っていた。
その中でも、弓を持った女が、勝ち誇った顔でこちらを見下ろしていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます