ガチャ067回目:討伐者と『運』の検証

「旦那様!」


 あれこれ考えている内に、どうやら中央の道筋へと到着したようだ。アヤネが笑顔で駆けてきた。


「ああ、彼は大丈夫だったか?」

「はい。今日はもう、帰って休むそうですわ」

「そうか。大事無くて良かったよ」

「颯爽と駆けて後輩を助ける姿、とても格好良かったですわ……! 先輩達が聞いたら、絶対羨むと思いますわ」

「そ、そうかな……」

「そうですわ!」

「ご立派でした」


 ……むず痒いな。


「照れてらっしゃいますの?」

「……そうだよ」

「可愛らしい一面もおありなんですのね。あ、それからダンジョン入り口に集まっていた方々には、しっかり討伐済みであることはお伝えしましたのでご安心ください」


 そう言えば忘れてた。けど、アヤネはしっかりと、やる事をやってくれたようだ。


「そっか。ご苦労様」

「当然のことをしたまでですわ!」

「それじゃ、気を取り直して行こうか」

「はいですわ!」



◇◇◇◇◇◇◇◇



「そろそろかな」


 今朝とは逆方向の隅へと向かいつつ、60匹目のゴブリンを切り捨てた。

 実験するには丁度良いだろう。


「如何されまして?」

「実験をしたい。アヤネ、アイラ。手伝ってくれ」

「はいですわ!」

「お任せください」


 元気よく返事をする2人に、まず5体ずつ単独でゴブリンを倒してもらう。

 アヤネは『炎魔法』でゴブリンを焼き殺し、アイラは見事な刺突でゴブリンの首を突いた。他の人の戦いを間近で見るのって、勉強になるな……。


 結果は『運』が若干高いアヤネが『極小魔石』を1個だけドロップし、アイラはドロップなし。

 戦闘不参加メンバーの『運』は関係なし、と。


 次に、俺が軽く攻撃し、2人がトドメを刺すのを5回ずつ。

 結果は全てドロップ無し。


 今度は逆パターンとして、2人が死なせない程度にゴブリンを弱らせ、俺がトドメを刺すのを20匹。内訳はアヤネ⇒俺が5匹。アイラ⇒俺が5匹。アヤネとアイラがそれぞれ攻撃し、トドメを俺が10匹だ。

 こちらの結果は、全匹全ドロップ。やはりトドメで間違いないようだ。


 そして、今のでは100匹目だったが、出現はせず。


 更に俺が単独で20匹追加で倒したところ、『ホブゴブリン』の煙が発生した。


「実験は成功。想定していた中で最良の結果だな」

「おめでとうございますわ!」

「おめでとうございます」

「ありがと。と言う訳で、これからのレアモンスター戦だけど、2人とも参加していいよ。ただしトドメだけは刺さないでね」

「はいですわ」

「承知しました」


 そして1匹目の『ホブゴブリン』

 2人が攻撃するのを待ってトドメを刺す。


【レベルアップ】

【レベルが15から19に上昇しました】


「レベルが上がりましたわ!」

「おめでとう」

「おめでとうございます、お嬢様」


 レベル46だったし、ワンチャンあるかなーと思ったけど、どうやらしっかり1レベル上がったようだ。そのレベルでも上がるなんて、やっぱりレアモンスターは経験値効率が高いらしい。

 そして肝心の『ジェネラルゴブリン』だが、出現することは無かった。


 2回連続失敗するとは、やっぱり相当量の『運』が要求されるらしい。


 ドロップしたアイテムをアイラに手渡し、次の角を目指し疾走した。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 マップ左上の角で『ホブゴブリン』を撃破。


【レベルアップ】

【レベルが19から22に上昇しました】


 『ジェネラルゴブリン』は出現せず。


 マップ右上の角で『ホブゴブリン』を撃破。


【レベルアップ】

【レベルが22から24に上昇しました】


 そこでようやく『ジェネラルゴブリン』の出現を確認。

 弱い人間、アヤネを狙う性質はそのままのようで、俺とアイラで庇いつつ3人で攻撃を仕掛ける。といっても、アヤネとアイラは牽制がほとんどで、経験値を得るためだけの動きだ。

 アヤネが魔法で注意を引き、アイラが敵の急所に傷をつけ、俺が渾身の一撃でその傷痕を穿つ。


 慣れない連携だったが、役割は決まっていたため大きな混乱もなく撃破することに成功した。やっぱり複数人での戦闘は、楽が出来て良いな。


【レベルアップ】

【レベルが24から42に上昇しました】


 ドロップは前回と同じく、『ホブゴブリン』の分と合わせて7個。魔鉄装備に関しては今回は兜が出た。これの硬さは直接叩いたから分かる。早速装着してみよう。

 ……うん、視界が悪いなぁ。それに、重量もそれなりだから、気が削げる。でも頭に攻撃食らったらひとたまりもないしな……。今まで頭は、必要が無いからと装着してこなかったけど、一応このまま付けてみるか。『怪力Ⅱ』は取得するとして……。


「アヤネ、この『統率』覚えてくれるか?」

「よ、よろしいのですか?」

「いいよ。君にはその資格がある」

「旦那様……! ありがとうございますわ。では、後ほど旦那様の口座に振り込みしますわね。3億でよろしいですの?」

「え? いやいやいや、お金は不要だ。君はいまチームの一員なんだ。もし仮に、君との関係が今後解消されようとも、俺は請求したりしないから安心して受け取って欲しい」

「は、はいですわ……」


 関係解消の話が出てちょっと落ち込んでしまったみたいだ。余計なこと言っちゃったかな?

 でも彼女は、すぐに気を取り直してオーブを使用した。


 そう言えば、人がスキルオーブを使う瞬間って初めて見るな。スキルオーブはゆっくりとアヤネの身体に溶け込んで行き、全身に染み渡るように光りながら消えて行った。


「おっ」


 ステータスが増強したのが感覚でわかった。これが『統率』効果か。


「どうですの?」

「ああ、バッチリだ。アイラはどうだ?」

「はい。どうやらご主人様の想像通り、10%と10%で合計20%増えたようです」


 やはり複数人で重複可能か。となると、1354あったアイラの『俊敏』は、1600を越えたのか。すごく簡単にステータスを増強出来るし、融通が利くスキルだな。高いだけはある。


「それは凄いな。じゃあ、次取ったらアイラが覚えてくれ。勿論金は不要だ」

「承知しました」

「さて……。ちょっと待っていてくれ」

「はいですわ!」


 ガチャを回す為に座り込む。


 『レベルガチャ』を起動させ、目の前に出現させる。

 ちらりと2人の様子を見るが、やっぱり2人には見えていないらしい。ここで俺が彼女達に教えてスキル名を唱えれば、見れるようになるはずだけど……。まだ、その気にはなれない。

 有用なスキルがドロップしたら、覚えさせるくらいには気を許してはいるけどね。


 「10回ガチャ」を押す。


『ジャララ、ジャララララ!』


 出てきたのは紫2、赤4、青4だった。


『R 腕力上昇+12』

『R 俊敏上昇+12』

『R 魔力上昇+12』

『R 知力上昇+12』

『SR 腕力上昇+25』

『SR 器用上昇+25』

『SR スキル:鑑定Lv1』

『SR スキル:鑑定妨害Lv1』

『SSR スキル:剣術Lv1』

『SSR スキル:暗殺術Lv1』


*****

名前:天地 翔太

年齢:21

レベル:2

腕力:424(+380)(+39)

器用:362(+324)(+33)

頑丈:443(+397)(+41)

俊敏:444(+398)(+41)

魔力:360(+324)(+33)

知力:405(+365)(+37)

運:884


スキル:レベルガチャ、鑑定Lv6、鑑定妨害Lv6、自動マッピング(2/3)、鷹の目、金剛外装Ⅱ、身体超強化Lv1、怪力Ⅱ(2/3)、金剛力Ⅱ、迅速Ⅱ、金剛壁Ⅱ、統率、予知(1/3)、二刀流、体術Lv2、剣術Lv2、暗殺術Lv1、投擲Lv4、元素魔法Lv1、魔力回復Lv2、魔力譲渡、スキル圧縮


トロフィー:黄金蟲

*****


 『鑑定Lv6』に『暗殺術』か。アイラの『ジェネラルゴブリン』に対する、的確な急所攻撃が羨ましいと思ったらこれだよ。本当に『運』は仕事してくれるな。

 そして『統率』は、増強アイテムで増加した後に、割り増し判定が入るのか。助かるが……『運』には影響しないんだな。それだけ『運』は特別という事か。

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今日も2話です。(1/2)

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