ガチャ065回目:レアの先にあるモンスター

 俺が3年間の執念の末、『初心者ダンジョン』に進出して、如何にしてレアモンスターと連続で戦える素養を身に付けたのかを語った。


「そっか。そっかぁ……。大変だったんだね」

「うう、ショウタさんの努力が報われて、良かったです」


 アキは3年間、ほぼ変わらず俺の軌跡を見守って来たからこそ、思うこともあるんだろう。お姉さんぶって頭を撫でて来るが、その目は潤んでいた。

 そしてその話を間接的に聞いていたマキは、涙ぐんで喜んでくれていた。

 そんな彼女達の涙を指で拭う。


「2人共大袈裟だなぁ」

「そんなこと無いわよ……」

「うう、ショウタさん……」

「俺の為に泣いてくれてありがとう」


 あーもう。2人の反応が嬉しすぎる。

 もっと好きになっちゃうじゃん。


「……ん。じゃあショウタ君は、何匹もレアモンスターの先を見たからこそ、『黄金蟲』の時あんなに警戒していたのね」

「そういう事。ま、あんなに何匹も連続性のあるレアモンスターなんて、滅多にいないだろうけど」

「……ぐす、そうですね。そもそも、レアモンスターの次にレアモンスターが出たなんて情報はありませんでした。やはり、ショウタさんの仮説通り一定の『運』がないと、そもそも出現しないのではと思います」

「だったら良いんだけどね~。あと『ジェネラルゴブリン』は、まだ1回しか試せてないから、今の『運』で確定出現か、まだ確率なのか、それを見極める必要があるね」


 アキが何か思い出したかのように手を叩いた。


「あ、そうだ。『ジェネラルゴブリン』について、ショウタ君にちゃんと教えておかないと」

「あ、そうですね」

「ん?」


 他のダンジョンで出現報告があるとかかな?


「『ジェネラルゴブリン』だけど、実はこのダンジョンにいるのよ。通常のモンスターとして」

「えっ!? そうなの?」

「はい。流石にショウタさんが戦ったような手強い相手ではなくて、レベルもステータスもスキルも、全てが階層に適した普通のモンスターです。出現は第四層から第五層になります」

「そのモンスターのデータ、ある?」

「はい、こちらに」


*****

名前:ジェネラルゴブリン

レベル:14

腕力:80

器用:70

頑丈:80

俊敏:50

魔力:100

知力:25

運:なし


装備:鉄の長剣、鉄の全身鎧

スキル:剛力

ドロップ:ランダムな鉄装備

魔石:小

*****


 うわ、弱そう……。


「もう全部が型落ちって感じだね。いや、アイツがあらゆる面で順当に強くなってただけか。……あれ、通常モンスターなのに、スキルがあるの?」

「そうよ。なにもスキルはレアモンスターの特権じゃないわ。最弱のモンスター以外は、大体持ってたりするのよ」

「じゃあ俺が狩れば、山盛り出そうだね」

「そ、そうなるかもね……。山みたいに積み上がったスキルオーブかぁ……。えぐい光景になりそう」


 俺も想像してみたけど、いつもの魔石が全部スキルオーブに置き換わるのか?

 ……うーん、ドロップ率次第とは言え、ヤバイ光景だ。アイラがいなければ、地面に大量に転がす事になりそうだな。それはそれで大問題だろう。


「あ、ショウタさん。今日は第二層のマップを埋めるんですよね。これまで、丘陵地帯にいるウルフは見ましたか?」

「以前遠目にチラっと見たけど、ちょっと大きめの狼だったね」

「その様子だと、『鑑定』はされていないみたいですね」

「え? うん……。あ、もしかして」

「はい。ウルフは速度系の一次スキル、『俊足』を持っていますよ」

「マジか……」


 『迅速Ⅱ』と合わせれば、もっと早くなれるってこと!?


「あー、そうだったわ……」

「でもそのドロップ率は、魔石を100個得て1個出るかどうか、といった頻度みたいです。でも、ショウタさんなら……」

「魔石は『運』100で100%だと仮定してるから、『運』が800を超えている今、8%ドロップってとこかもね」


 というか、確率が小数点以下でもスキルオーブはドロップするんだな。となれば、レアモンスターとは別の計算式になっている可能性もある訳か。


「数値としては低いように見えるけど……ショウタ君なら何百匹と倒すんでしょ? 処分に困りそうだなぁ」

「そうなった時は、相談しよっか」

「そうね」

「そうしましょう……」


 あとは聞いておくことは無いだろうか……。うーん……。


 あ。


「そうだ、思い出した。『ジェネラルゴブリン』の事なんだけど、あいつ、目の前の俺を無視してアヤネを狙って走り出したんだよね。アレって、4層や5層でもそうなの?」

「あ、そうでした。これから3人で攻略するのなら、必要な情報でしたね。あのモンスターは弱い冒険者……特に後衛や女性を執拗に狙う事で有名なんです。1体なら問題ないんですが、あの階層ではほとんどの場合、配下にゴブリンを連れまわしているので、厄介なんですよね」

「へー……って、通常のゴブリンもいるの!?」

「はい。……ショウタさんが気にされているのは、100匹連続狩りの件ですね? どうなるんでしょうか……」

「確かにね。『ジェネラルゴブリン』だけ狙って、他はアイラさんに任せるとか?」

「気になるな……。アキの言う通りにしてみるのも良いし、まずはごちゃ混ぜにゴブリン種100匹を連続して……。いや、その前にマップの把握から始めるべきだろうな。それから……」


 4層への遠征を考え、思案に耽る。


「あは、また始まっちゃった」

「ふふ。あ、姉さん。そろそろいい時間ですし、お昼ご飯にしましょうか」

「そうだね、ちょっと早いけど、そうしよっか。……あれ? なんか忘れてない?」

「え? ……あ、アヤネちゃん!」

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今日も2話です。(1/2)

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