ガチャ063回目:秘密の打ち明け
「2人に聞きたい。彼女達の口は堅い?」
「アヤネの口の堅さは信頼出来るわ。秘密と約束したことには、親にも親友にも明かさないらしいわ」
「彼女の信念ですから、秘密とあれば口が裂けても言わないでしょう」
「そうなのか。自分のステータスはフルオープンしてきたから、警戒してたんだけど」
「そうなのですか? 私の知る限り、見せたのはショウタさんが初めてですよ」
「将来の旦那様に、秘密にすることはありませんわ!」
……ちょっと意地悪をしてみるか。
「……じゃあ、やれと言われたら彼女達にも見せられる?」
「当然ですわ。同じ方の妻になるんですもの!」
アヤネは胸を張って答えた。
「即答かよ。……わかった、やらなくて良い。それで、アイラの方は?」
「彼女はアヤネちゃんに昔からベッタリなので、この子の言う事なら絶対に守りますよ。だから、アヤネちゃんを信じられるなら、一緒に信じて構わないかと」
「そうか……」
「では! これから第三夫人として……」
「いや待て。それはまだ保留だ」
俺はまだ、アイラの事を理解できていない。
アヤネはまあ、ちょっと世間知らずで暴走気味だけど、裏表がない良い子だとは思う。それを加味すれば、付きまといだけで彼女を悪だと断じるのは勿体ない。悪い面を先に見たのなら、あとは彼女の良い所を探して見るべきだろう。
狩りの邪魔はしなかったし、むしろ手伝ってくれたのだから、そこで許さないほど俺は狭量な人間ではない。
けどアイラは……基本的に喋らないから、まだ理解する段階にすら至れていない。さっき俺の命令を素直に受けたり、手伝ってくれたのも、結局アヤネの命令に従っただけで、俺に直接的に従っているわけではないんだよな。
一緒に戦う分には信用は出来るが、背中を預けるほど信頼は出来ないってところか。
うん、アイラの件は保留。まずはアヤネをどうするか考えよう。
「わたくし、保留ですの?」
「付き合うかどうかは保留だ。今は、仲間として見られるかを考え中」
「さきほどまでは、仲間としても断られそうな雰囲気でしたのに。前進しましたわね!」
確かに俺も、この短時間でだいぶ絆されて来てる。
けど現実的に考えて、いつまでもソロで戦い続けるのは厳しいと思う。限界も来る。早い段階で実力もあって、楽しく冒険が出来そうな、仲間候補と出会えたのは僥倖だ。出会い方は急だったが、彼女達以上に俺と組んでも問題ない冒険者は、いないかもしれない。
これも『運』の思し召しなら、従ってみるのも悪くはないだろう。
「決めた。アヤネ、アイラ。2人の同行を許可する」
「やりましたわ!」
「おめでとうございます、お嬢様」
「ただし、さっきも言ったけど俺の言う事は聞いてくれ。いいな?」
「はいですわ! 例え衆人環視の中でも、人気のない路地裏やダンジョンの中でも、わたくしはいつでもウェルカムですわ!」
「「「……」」」
これだけは、ちょっと苦手だ。
興味が無い訳ではないけど。
「……ではショウタさん、ご存じないと思いますのでチームについて補足させてください」
「うん」
マキが無理やり流れを変えてくれた。
「まず、チームは協会で設定することになります。設定すると、協会内の情報端末にチーム登録したメンバーが紐づけられますので、アプリを通して誰でもすぐに確認が出来ます。そして、ショウタさんが懸念していた経験値ですけど、これはモンスターに直接攻撃を加えたかどうかで判断されます。近くで見ていたり、攻撃以外の支援をした場合には一切経験値が入りません」
「そうなんだ?」
「ですので、ショウタさんが望まない限り、経験値は独り占めしても良いと思います」
独り占め。……仲間としてついてくるのを認めた後で、そう言われると、ちょっと罪悪感が出て来るな。
そして俺がそう感じてることをマキは当然把握しているようで。
「それから、チームで戦った場合の経験値ですが、長年の検証の末、分配されたり総量が減る事はないそうです」
「え、じゃあ全員100%入るの? それなら『黄金蟲』の時、手を出してくれても良かったんじゃ」
「私達にレベルは必要ないですから、大丈夫ですよ。それに、もし手を出すにしても、ショウタさんから許可をもらっていませんでしたし、変にモンスターの怒りを買って戦いの邪魔をするわけにもいきませんから」
「そうか……」
あとはそうだな、『運』がどこまで反映されてるのかもわからないもんな。
戦闘の活躍度で分割で参照されるのか、『運』が一番高い人間が参照されるのか、トドメを刺した人間から参照されるのか、だ。
特にトドメ仕様の場合だと、『運』に『SP』を割り振っている人間ほど攻撃能力は低くなるはずだ。だから余計に世間一般での『運』の扱いは悪く見られるだろう。ついでだ、彼女達を使ってその辺りも実験するか。
「戦闘への参加は、ドロップの検証をしてから考えるよ」
「ショウタさんにお任せします」
「それが良いんじゃない?」
「さて……。それじゃアヤネ、アイラ。悪いけど2人と大事な話をするから、少し外で待っていてくれるか?」
「わかりましたわ!」
アヤネはすんなりと受け入れ、アイラを連れて部屋の外へと出て行った。
「従ってくれるんだな」
「そういう約束ですから。彼女は守ってくれますよ」
「そうそう。エッチな事とかも、命令すれば喜んでしてくれるんじゃない?」
「ね、姉さん!」
「じょうだんよー。……あの子ならやりかねないけど」
確かに、その手の話題を惜しげもなく披露する辺り、そんな気はする。
うん、考えないようにしよう。
「それで話ってなあに?」
「何でも言ってくださいね」
「……俺の秘密について話したい」
「「!!」」
「これは世界の情勢を揺るがしかねない内容だと思う。これは悪い奴らには絶対にバレてはいけないと思うから、誰にも言わずに墓場まで持って行くつもりだったんだ。けど2人が俺をどれだけ信頼してくれているかも、俺がどれだけ君たちの事を大切に思ってるのかも実感した。だから2人になら話してもいいと思ったんだ。けど、怖いなら聞かなくても――」
「聞きます」
「聞くわ」
2人が被さるように言う。
「ショウタさんの抱えている秘密、共有させてください。これは専属だからじゃない。あなたを支えたいんです」
「あたし達のためを思って黙っていてくれたんでしょ。その気持ちは嬉しい。だけど、ショウタ君の事を知る為にもここは引けないわ。どんな時でも……い、一緒に居たいもん」
「マキ、アキ……2人とも、ありがとう」
『レベルガチャ』、起動。
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今日も2話です。(1/2)
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