ガチャ062回目:覚悟を決めた
支部長が出て行った会議室は、静まり返っていた。
アヤネはニコニコしてるし、アイラは会話に参加する気がないのか目を閉じている。アキはぶすっとしているし、マキは……こっちを見ていた。
「ショウタさんは、どうされたいですか?」
「ごめん。俺は、どうすればいいかわかんなくてさ。2人に相談したかったんだ。突き放しても軽く受け流されるし、こんなに積極的な子は初めてだし、2人の知り合いみたいだから無視するわけにもいかないし……」
「わかりました。では……ショウタさん、正直に答えてください」
そう言ってマキが、俺の手を握った。
「彼女達の事は、嫌いですか?」
「……いや、嫌いではないよ。アヤネのへこたれない所は好感が持てるし、アイラの強さは努力の証だ。俺以上に頑張って来たんだろうし、素直に尊敬してる」
「では、好きですか?」
「それはちょっと、わからない」
「では、彼女達が同行することに、デメリットはありますか?」
「……隠したい事を見せたくない。今のところアキにもマキにも教えていない事だから。もし伝えるなら君たちを第一に優先したい」
そう言うと、彼女は笑みを深くし、後ろからアキがしな垂れかかって来る。
「それと、経験値が減るのは困る」
「では、メリットはありますか?」
「……まず、アイラの隠密能力と移動能力が凄まじい。俺の全力狩りに平気で付いてきて、アヤネを抱えながら素材を全部回収して見せた。2人が以前言っていたように、
「そうですね、どちらも大事なことです」
「あと、2人に『統率』を覚えさせたら、俺のステータスも上がるんじゃないかと気にはなってる。そんな感じかな」
「……はい。ありがとうございました。ショウタさんの気持ちはよくわかりました」
「ん」
不思議だな。
マキに手を握られていると、心の内がスラスラと出てくる。彼女相手だと、心から安心して委ねてしまえている。
「では私から見たメリットとデメリットを伝えます。メリットは、ショウタさんの言う通り、あなたの安全面が向上します。咄嗟に怪我をした際、治療してもらう際にはアイラさんは優秀な壁になって下さるでしょう。そしてアヤネちゃんの『回復魔法』は『回復剤』の比ではありません。文字通り、一瞬で治療出来ます」
「そうなんだ」
「それと、アイラさんは……超が3つつくくらいの、レアなアイテムを所持しています。彼女が持つ、世界に数個しかない鞄です」
「鞄? 素材を入れてたあれ?」
そういえば『極小魔石』や『鉄のナイフ』が積み重なってたけど、なんだかまだまだ入りそうだったな。
「はい。袋には『空間拡張』という未知の技術が付与されていて、この部屋の広さくらいならアイテムを詰め込めるらしいのです。上級ダンジョンの宝箱から、本当に稀に出土するらしいです。その価値は計り知れません」
「うわ……。あ、じゃあアイテム回収役は」
「はい。彼女以上の存在はいません」
なるほど。護衛としても運び屋としても最上位と。
「次にデメリットですが……。アヤネちゃんは、まだショウタさんと結婚したいのよね?」
「そうですわ! 最初は、まだフリーだと思ってましたの。でも、もう先輩達が先にお付き合いされている上愛し合っているのでしたら、正妻の座は譲りますわ。だから、3番目で構いませんわ!」
「そこに愛はある?」
「最初はその、打算しかありませんでしたわ。わたくしの夢の為に、一番必要になるのは旦那様しかいないって。けど、今日のダンジョンで、旦那様はよく知りもしないわたくしを、見返りを求めず全力で守って下さいましたの。今まで出会ってきた殿方とは、あまりにも違い過ぎましたわ。それからもう、旦那様にメロメロですわ!」
あー、『ジェネラルゴブリン』の話か。
「……はぁ。愛も無しにというのなら跳ね除けてましたけど、本気で好かれてしまったんですね」
「ご、ごめん……?」
「謝らないで下さい。ショウタさんは見ず知らずの人がピンチでも、きっと助けてくれるでしょうから。ですが、本気になった彼女は、言い出したら聞きません。なので、彼女に関しては私達からは何も言えません。ショウタさんの判断に従います。好きになるようでしたら迎えてあげてください。嫌いになるようでしたら、きちんとそう伝えてあげてください。嫌われたのなら、彼女はしっかり身を引いてくれるでしょうから」
マキはアヤネを見てそう言った。
「嫌われるのは悲しいですわ。でも、嫌われたまま迫ることはありませんの。その時は大人しく引き下がりますわ……」
「マキは、それでいいの?」
「はい。冒険をしていく中で、彼女達の力が必要になるでしょう。恋人が1人増える事で、ショウタさんの安全が買えるのなら……安い物です。私と姉さんを大事にしてくださるのであれば、私は大丈夫ですから」
「マキ……」
そこまで、俺の事を中心に、想ってくれているのか。
……決めた。
「姉さんは何かありますか?」
「あたし、この子苦手なのよねー」
「……姉さんと違って、積極的だもんね」
「そ、そうよ。……でも、苦手だけど嫌いじゃないわ。ショウタ君があたし達を立ててくれるなら、構わない。けど、全員よく聞きなさい。マキを泣かせたら許さないから!」
「肝に銘じますわ!」
アキは相変わらず、マキを最優先だな。
「あと、あんまり放置されると、泣いちゃうからね」
「ああ、わかってる」
アキの頭を撫でる。
こんなにも俺の事を理解して、俺の為に行動してくれて、信頼もしてくれてる彼女達だ。
アキにも、伝えよう。
彼女達の誠意に応えて、2人には『レベルガチャ』の事を話そう。
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