ガチャ051回目:衝撃の事実

 前回の『迅速』の出品も合わせて、オークションの話を詰めて行ったところで一息入れる。

 ハナさんが淹れてくれた甘めのお茶を堪能したところで、1つ思い出したことがあった。


「ああそうだ。2人にいくつかお願いがあるんだけど……」

「何でも言ってください!」

「何でも言ってね!」

「ハハ……」


 ちらりと支部長を見るが、2人の反応は予想していたらしい。特に大きな反応は無かった。


「スキルを見て気付いたと思うけど『二刀流』のスキルを取ったんだ。ただ、俺ってこの『御霊』以外持ってないんだよ。だから、今日の魔石の売上分だけで良いから、簡易的に何か1本見繕ってくれる?」

「わかりました。明日には用意しておきますね!」

「ついでに、オークションでスキルが売れたときの為に、次の物も選定しておくわ!」

「はは、お手柔らかに頼むよ。……あ、オークションの売り上げだけど、2人の借金分は使わずに、最優先で確保しておいてね?」

「ふふ、わかりました」

「しょうがないわね~」


 2人は嬉しそうに笑う。


「ああ、それから支部長」

「あら、何かしら」


 自分に話が振られるとは思わなかったのか、少しびっくりした様子だった。


「昨日アキから聞いたんですけど、会議でスキルの重ね掛けの件を報告して下さっていたとか」

「ええ。でも、途中でヨウコちゃんが会議を抜けちゃったから、改めて今夜に持ち越しになったわ」


 まあ、ヨウコさんは俺達が会いに来たことで会議を途中で抜ける事になって、緊急事態という事もあって『黄金蟲』の件を伝えたら、また会議を抜けて忙しくしてたから、延期は仕方ないよな。


「その件で追加の報告があるんです。さっき支部長、俺のステータスを見て、変な数字があるって言ってましたよね。もしかしてなんですけど、『鑑定Lv5』持ってます?」

「ええ」


 うん、やっぱり柔らかくなった。

 今までなら、スキルのレベル何て情報、警戒して濁していただろうに、すんなりと答えてくれる。


「報告はそこにありまして。俺もLv5を得たから発見したんですけど、ステータスで重ね掛けをしていた場合に限り、現在の重ね掛けの進捗状況が見れるんですよ」

「……ああ、なるほど。この『1/3』ってそういう事だったのね。分かったわ、私が『鑑定Lv5』を持っているのは他の支部長達も知っているから、そこで発見したという形で、報告しておくわね。『鑑定Lv5』は今まで誰も明確な効果が分からずに、4で止めるのが正解とされてきたのよ。でもこの情報があれば、また『鑑定』の価値が上がるわ。それに重ね掛けの証明にも繋がる。……でも良いの? こんなにホイホイと情報を出してしまって。あれもこれも、全部あなたが独力で見つけた情報でしょう? 本来なら、対価に金銭やランクポイントを得てもおかしくないのよ?」


 ああ、ランクか……。

 そう言えばそんなのがあったな。けど、この初心者ダンジョンに籠っている間は、そもそも必要になるとは思えないんだよな。

 他所に行くとしても、今のところは同じ最低レベルダンジョンの『アンラッキーホール』か『ハートダンジョン』くらいだし。


「んー……。俺は、ダンジョンの謎を解き明かすのが好きなんですよ。だから、秘密になっているものを発見する事が出来れば、あとはどうでもいいというか……。まあ、重要なものに関しては、多少の独占欲はありますけどね。それ以外の事はどんな情報であれ、別に手放して良いと思ってるんですよ。むしろ、その情報をしっかりと活かせる人の手に渡って、誰かの役に立てるのなら。それが一番いいと思いますし。あとは……支部長からは、大事な2人を貰ってますから。これ以上はいただけません」


 娘2人という意味でもそうだし、優秀な★3と★4の上級受付嬢と支部長クラスの役員を、俺の専属としてもらい受けている。これ以上は欲張りと言うものだ。だから、その返礼に俺が集めた情報で喜んでもらえるのなら、惜しみなく提供したい。

 ただ、ガチャや100匹、『運』に関してはまだまだ伝える気はないけれど。


「確かに2人を与えた以上成果は欲しいところだけど、それでも成果に応じて報酬は受け取って欲しいところね」

「それなら、2人と相談してください。俺はそういうの、任せっきりにしたいので」


 2人を見ると頷いてくれた。

 彼女達なら、対価があった場合は必要な物だけ貰ってくれるだろうし、俺の冒険に役立つ物へと還元してくれるだろう。

 何の心配も要らないな。


「……アマチ君。格好良く言ったつもりかは知らないけど、ランクは必須よ?」

「そうなんですか? よく知らないですけど、初心者ダンジョンを使う分には必要ないんじゃ……」

「それは確かにそうだけど、大事な事を忘れていない? 2人を娶るには、ある程度のランクが必要なのよ?」

「……え?」


 そうなの!?

 そういえばテレビで、どこぞの誰々が、何人目の妻を娶ったなんてニュースがたまに流れるけど、思えば全員高ランク冒険者だったな。高ランクはお金があるからだとばかり思っていたけど、違ったのか。


 アキを見ると、苦笑いをしている。


「あちゃー、やっぱり知らなかったか」

「ほら、姉さんが以前、恥ずかしがって説明を省いたから」

「うっ。だって、書いてることが生々しいんだもん。それに、普通はランクが高くなったら何が出来るかとか、自分で調べるでしょ。普通は」

「姉さん、ショウタさんに普通を当てはめてはいけません」

「さいでした」


 とてつもなく失礼なことを言われている気がするけど、確かに一般常識に当たるのかもしれない。でも、今までは上を目指す必要もなく、ただひたすらにスライムを狩ってれば、それでよかったから……。


 はい、俺が悪いです。


「ふぅ、世話のかかる子ね。アマチ君、今のランクはいくつ?」

「Fです……」

「し、下から2番目……。よく聞きなさい。まず一夫多妻制度が出来た理由だけど、ダンジョンが出現した最初の数年間、人類はダンジョンに対して慎重になり過ぎて、モンスターが溢れるダンジョンブレイクを頻発させてしまったわ。それにより人類は疲弊し、数を減らしてしまった。その打開策として、冒険者であれば複数の女性と関係を持てるよう法改正が行われたの。でもそれは、誰でも出来る訳じゃない。同時に2人なら……最低でもCは欲しいわね」


 3つ上か……。


「アキ、マキ。Cって普通、どれくらいかかるんだ?」

2~3年と言った所でしょうけど……」

「ショウタ君は普通じゃないからねー。この前の『怪力』による協会への功績で、ランクアップするポイント、実はもうだいぶ溜まってるんだ。でもどうせなら、一気に上げた方が楽だと思って、まだ更新の申請を出してないのよ」

「そ、そうなの?」

「はい。ですが安心してください。明日のオークションの結果次第ですが、『金剛外装』が1つでも落札されれば、その売上金の一部が協会に入ります。それだけで、Cランクに必要なポイント程度は確保完了なんです」

「……あれ、じゃあ」


 何もしなくても良いってこと?


「アマチ君。優秀な専属2人に感謝しなさい」

「アキ、マキ……不甲斐ない俺だけどよろしく」

「はい、任されました」

「もっと頼って良いのよ!」

「じゃあ、落札金の管理もお願いします」


 どう使えばいいかわかんないし。

 

「お金の管理まで手放すの? ……本当に無欲なのね。普通、大金を得たらそれを使ってみたいと思うのが人の性でしょうに。アマチ君は、そういうのが全くないのね」


 支部長が呆れるようにため息を吐いた。

 うーん。『予知』の値段が、数億って情報を見た時は、目玉が飛び出るかと思ったけど、『金剛外装』が売れたら、それと同じ金額が手に入りそうなんだよな。でも、実感がわかないんだよなぁ……。


「俺の望みは毎日ダンジョンに入れて、健康に寝起きできれば困らないし……。食事は甘いものが定期的に食べられば、わざわざ高いものを食べようとは思わないし……。あ、でもマキの作ってくれるご飯が一番おいしいかな」

「ショウタさん……! これから毎日作りますね!」

「うん、楽しみにしてるよ」

「んふふ。お母さん、ショウタ君はこういう人よ。だって、私達の実家の事すらも、全然知らないもの」

「ん?」


 実家?


「そう言えばショウタさん、そんな話は一度もされていませんね。苗字を名乗った時も、特に反応が無かったですし……」

「あら、そうなの? 無欲というか無知というか……。ここまで来たら、もはや天晴ね。なにをどう考えてれば、こんな一般常識が抜け落ちるのよ」

「んん?」


 何の話??


「ふふ、ショウタ君不思議そうな顔してる。ね、早乙女財閥って知ってる?」

「ん? ……うーん、どこかで聞いたような」

「ほらね? この程度の認識なのよ」

「こんな人がいるのね……。最初マキに近付いてきた時、お金目的かと疑ったのが申し訳なくなるわ」

「ショウタさん、ダンジョンの事しか頭に無いですから」

「それなら余計に知ってるべきでしょうに。アマチ君、あなたが2人を貰い受けるなら、知っておくべきことがあるわ」


 そう言って支部長は、とんでもない情報を教えてくれた。

 支部長の父。そしてアキとマキの祖父は、日本ダンジョン協会の局長だと言う情報だった。

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今日も2話です。(2/2)

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