ガチャ046回目:強化体との邂逅
移動する間も、トランシーバーからは『黄金蟲』の情報が更新されていった。
まず、C班の調査員が確認したモンスターのステータスはこうだ。
*****
名前:黄金蟲
レベル:36
腕力:375
器用:30
頑丈:375
俊敏:30
魔力:600
知力:75
運:なし
装備:なし
スキル:金剛力、金剛壁、金剛外装、限界突破
ドロップ:黄金の種、黄金の盃
魔石:特大
*****
単純に聞いた限り、レベルは2倍で、全ステータスが1.5倍になっている。その上、『限界突破』という未知のスキルが追加されていた。あとは、またしても魔石がデカくなってるくらいか。
だが、奴も成長した一方、俺もかなり強くなっている。
アキからも心配の声は上がったが、問題ないと伝えておいた。
まあ、第一層で出て来てはいけないレベルの強さだしな。心配するのも当然か。それに、以前に俺のステータスを伝えたときは、スキルを合わせてもこんな化け物に勝てるほど強くは無かった。それもあって心配してくれたんだろう。
彼女達には、改めて今のステータスを教えてあげないとな。
またアキ曰く、今回の件だが、1日に5体ものレアモンスターが狩られた記録は、他のダンジョンでもあるらしい。しかし、『全ての出現ポイントで倒した』や『全て同一人物が行った』訳ではないそうだ。
そこに、今回の強化体出現のヒントがあると思った。
「待たせた!」
「ああ、アマチさん。お待ちしておりました~」
「……見た目は本当に同じなんだな」
その存在感は段違いだが……。
「そうなんです~。だから出現してすぐは『鑑定』しなかったんですよ~。ただ、皆集まって来るって聞いた時、とっても嫌な予感がしたので~」
「……なるほど。『運』が良かったですね」
「……? そうかもしれませんね~?」
こっそりと、彼女に『鑑定』をして気付く。この人、レベルは低いが『運』が30もある。
きっと、受付嬢や調査員の仕事で、少しでもいい事がある様に、願掛けのつもりで割り振ったのではないだろうか。今回の彼女の『直感』が、『運』があるからこそ起きた物かどうかは不明だけど、俺はそう信じたいと思った。
念のため、俺も使ってみた方がいい気がしたので、『鑑定』を使ってみる。
*****
名前:黄金蟲
レベル:36
腕力:375
器用:30
頑丈:375
俊敏:30
魔力:600
知力:75
運:なし
装備:なし
スキル:金剛力、金剛壁、金剛外装、限界突破
ドロップ:黄金の種、黄金の盃、黄金蟲のトロフィー
魔石:特大
*****
……?
なんだ、これは。
トロフィー?
だけど、見えているのは俺だけのようだ。
俺に見えて、彼女に見えなかった理由は……?
『鑑定Lv5』か、それともまた『運』の有無か、それとも『沸かせた本人』かどうかか……?
ああ、まったく。まだこっちは第一層だっていうのに。ダンジョンには本当に、不思議や未知が沢山あるようだ。ワクワクさせてくれるじゃないか……!
*****
名前:天地 翔太
年齢:21
レベル:19
腕力:343(+321)
器用:272(+250)
頑丈:349(+327)
俊敏:333(+311)
魔力:284(+264)
知力:249(+229)
運:678
スキル:レベルガチャ、鑑定Lv5、鑑定妨害Lv5、自動マッピング(1/3)、鷹の目、金剛外装Ⅱ、身体超強化Lv1、怪力Ⅱ、金剛力Ⅱ、迅速Ⅱ、金剛壁Ⅱ、予知(1/3)、二刀流、剣術Lv1、投擲Lv3、元素魔法Lv1、魔力回復Lv2、魔力譲渡、スキル圧縮
*****
そしてステータスだが、『腕力』と『頑丈』であれば俺も似たような数値になっている。他のステータスは圧勝しているし、スキルも上だし戦い方も1つじゃない。『限界突破』は未知であるが、油断しなければ負けはしない。
「準備は終わった。C班は退避するように」
「……いや、俺達は残る。強くなったこのレアモンスターの強さは、生で見ておきたい。それに、もしもの時は助けに入りたいからな」
「……好きにしてくれ。だけど、散弾があるだろうから、盾だけは構えててくれよ」
「私は怖いので、離れて撮影してます~」
慌てて離れて行く調査員とは反対に、俺は『黄金蟲』の前へと歩みを進めた。
睨みを利かせるが、やはり強化体となった今でも、こいつは非好戦的なんだろう。まるでこちらを見ようともしない。相変わらず『金剛外装』は使用しているみたいだけど。
負ける気はしない。……だけど、こいつから放たれる不吉なオーラは、スキルを使用した普通の『黄金蟲』に酷似していた。
恐らく、全体的にステータスとレベルが向上したことで、存在感が増したのだろう。ここからスキルが加わればどうなるやら。
「ふぅー……」
俺は今まで、強化スキルを未使用……もしくは効果の切れた『黄金蟲』相手でしか討伐はしてこなかった。アキには心配ないとは告げたが、こうやって対峙を続けていると、じわじわと不安な気持ちが押し寄せてくる。……なかなか骨が折れそうだが、気持ちから負けるわけにはいかないな。
トランシーバーを起動する。
「アキ」
『ん、なぁに?』
「応援して」
『え? し、仕方ないわね~。……おほん。ショウタ君、頑張って!』
「……よし、やる気出た。はじめるぞ」
「ご武運を~」
2匹目以降と同様の戦法だが、まず真っ先に投石をして効果を剥がす。
『ガンッ!』
『シュル? シュルル!!』
「うっ!?」
投石に続いて、俺も飛び込もうと前に出ようとしたその瞬間、奴から放たれる圧力が一気に強まった。
肌がヒリつくこの感覚、もうスキルを使ったのか!
『シュルルル!!』
一旦攻撃は取りやめ、警戒を続けることにした。この気配のふくらみ方、単純なステータス増強系だけじゃない。まさか、これが『限界突破』か?
奴と俺との距離は5メートル。にもかかわらず、奴はその場で大きく振りかぶった。
「何のつもりだ?」
『ドガガンッ!!!』
「……ッ!!」
ステータスを見た。スキルも見た。油断はしていなかった。だが、このような展開になることは、予想だにしていなかった。
まず、奴の攻撃は大地に激突。それにより地面が、爆発した。
それにより大小様々な岩石が周囲に吹き飛び、岩が横殴りの暴風雨のように視界を覆った。避ける隙間もない攻撃に対し、俺は剣を盾に構えながら『金剛外装Ⅱ』を起動。
このスキルは『Ⅱ』になったことで、効果が強化されていた。その内容は『初撃無効化』から、『初撃から2秒間の間、常に無効化』に変化していた。
恐らく消費する魔力も跳ね上がっているだろうが、『直感』的にあと2回は使えるだろう。念のため、D班の4匹目の時に、お試ししておいてよかった。
幸い、岩石の弾幕は2秒も継続することはなく、すぐに視界は晴れた。
「まるで爆心地だな」
暴力に晒された広場は酷い有様だった。これが、高ステータスを持つモンスターの攻撃なのか……。深層に潜ってる冒険者にとってはありふれた光景なのかもしれない。だが、まだ第二層までしか進んでいない俺にとっては未知の体験だった。
初めての経験に、ワクワクが止まらない。
強敵ではあるが、『マーダーラビット』のような死の予感は無い。
この戦い、勝つ!!
「まずは同じ攻撃方法になるが……。ファイアーボール!」
様子見に1発、奴へとぶち込む。
すると、通常タイプより焦げ目は薄いが、しっかりと痕はついていた。
「シュル……」
「少し弱いが、効果はあるみたいだな。追加で10発だ!」
『ドゴゴンッ』
「シュルルッ……!」
「効果はある……。が、あまりやり過ぎると『金剛外装』の分まで魔力を使ってしまいそうだな」
嫌な感じは消えないが、やはり決め手に欠ける以上、近接で攻めてみるしかないか。あまり距離を置けば、また散弾が来るだろうし。
「『迅速Ⅱ』! うおりゃ!!」
『ガン!』
『シュルル!』
「当たるかよ!」
通常攻撃も効果は薄く、斬撃というより打撃によってダメージが入っている感じがした。
こちらの武器と『腕力』よりも、相手の『頑丈』が上だとこうなるのか……。けど、相手の攻撃は避けられるし、大ぶりの爆発攻撃も奴の後ろに隠れてしまえば届くことはない。素早さで攪乱しつつ、スキルの効果が切れるまで殴り続けてやる!
『ガン、ギンッ!』
『シュルルルッ!』
「こっちだ間抜け!」
『シュルルッ!?』
「おせえっての!」
『ギンッ、ザシュッ!』
「おっ?」
何度か攻撃している内に、こちらの攻撃が、
まだまだ『限界突破』も『金剛壁』も、効果は続いているようだが、この傷を広げるように攻撃を続けてみる。
「おりゃおりゃおりゃ!」
『シュル、シュルル……!』
度重なる攻撃で傷はどんどん大きくなり、『御霊』が斬り込むには十分な大きさへと広がった。
「『怪力Ⅱ』『金剛力Ⅱ』使用。これでトドメだ!!」
『斬ッッ!!』
傷元に『御霊』が吸い込まれるように入って行き、『黄金蟲』の傷痕から大量の液体が噴出された。少しの間、『黄金蟲』はそのままのポーズで硬直していたが、音を立てて倒れ込む。
相手に『金剛壁』があっても、攻め方によっては勝てるようだな。
『黄金蟲』は煙へと変わり、煙は
【黄金蟲のトロフィーを獲得しました】
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この度「小説家になろう」ローファンタジー月間1位の栄誉を賜ったので、
今日も3話です(2/3)。明日から2話に戻します。
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