ガチャ017回目:ボックスを引き切った

「うーん、やっぱり気になるな」


 ゴブリンやキラーラビットを狩っていたが、いまいち集中出来なかった。

 その理由は、剣が折れたためナイフを使っているから。というのもあるし、そもそも疲れているのもある。だけど、一番の理由はリュックにしまった『迅速』の存在だった。


 『怪力』の時は調べると言う発想が無かった為持ち帰る事にしたが、『迅速』は使用した際の効果も能力も、デメリットまでも。全てアプリで確認出来ているのだ。だからこそ、このスキルを自分自身で使用してみた時の感覚が、気になって仕方がない。いったいどんな景色が見えるのだろう、と。

 例え、マキさんとの専属確約を後回しにしてしまっても、だ。


「……猶予は2週間もあるんだし、スキルを得た上で慣らしてから再戦すれば、今度はもっと楽に勝てるのは間違いない。スキルのドロップ率も、この調子ならだいぶ高いはずだ。……なら、使ってみる、か?」


 しばし思考に囚われるが、30秒くらいで決着がついた。


「よし、使うか!」


 気になるんだから仕方がない。どうせまた取ればいいんだし!

 吹っ切れた俺は意気揚々とスキルを取得し、早速走り出すことにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ふぅー、焦った。あいつみたいに激突しなきゃ止まれないかと思ったけど、そんな事は無かったな」


 走り出して何度目かの速度上昇を体感していたころ。

 アプリには書いてなかったが、『マーダーラビット』の使い方を思い出した俺は血の気が引いていた。つい調子に乗って、3倍どころか4倍ほどの速度になるまで加速したところで思い至ったのだ。

 けど、走り続けている内にある程度、速度調整が自由自在である事が分かった。減速を意識すれば失速し、加速を意識すれば速くなる。これはかなり融通の利くスキルらしい。


「あの兎は、扱いきれてなかったんだな」


 本当はもっと速く動けると思うんだが、これ以上は危険な感じがした。たぶん、俺の『頑丈』が足りていないんだろう。これ以上を求めれば、恐らくまず脚が壊れてスッ転んで、この勢いのまま錐揉みすることになるだろう。最悪死にかねない。

 俺はこの検証を林を1周する程度にとどめ、そこからはまたモンスターを狩り始めた。


「これを戦いに活かすにはどうするべきか……。一瞬でトップスピードになれるのなら、回避する為に使えるが、減速も活用しないと止まる事が出来ずにどこまでも行ってしまう」


 戦いの最中にすっ飛んでいくマヌケな自分の姿を想像しつつ、あーでもない、こーでもないと検証を重ねながらモンスターと戦う。そうしているうちに、俺のレベルは再び11になった。


「なんだかまだ、全然形になってないから中断したくはないんだけど、経験値を無駄にする方が嫌だからな」


 そう思ってマップを開くと、ちょっと近い位置に人間の反応があった。

 林にはまだモンスターの反応が無かった為、少し奥へと入ってからスキルを使用する。最後の「10回ガチャ」を押した。


『ジャララララ』


 出てきたのは紫が1、赤が2、青が7だった。


『R 腕力上昇+5』

『R 器用上昇+5』

『R 頑丈上昇+3』

『R 俊敏上昇+5』

『R 魔力上昇+3』

『R 魔力上昇+5』

『R 知力上昇+3』

『SR 器用上昇+12』

『SR スキル:鑑定妨害Lv1』

『SSR 俊敏上昇+30』


*****

名前:天地 翔太

年齢:21

レベル:1

腕力:92(+88)

器用:77(+73)

頑丈:68(+64)

俊敏:106(+102)

魔力:71(+69)

知力:71(+69)

運:200


スキル:レベルガチャ、鑑定Lv2、鑑定妨害Lv4、自動マッピング、身体強化Lv3、迅速、予知、投擲Lv1、炎魔法Lv1、水魔法Lv1

*****


『ボックスの残り0/100』


「SSRのステータス上昇量えぐいな。おかげで『俊敏』が夢の3桁だ! スキルが出なかったのは残念だけど、この数値ならRの最低値10回分はあるし、元は取れてるはずだ。それにしても、『鑑定妨害』がやたらと出てくるな……。『運』は200もあるんだし、これも良い事なんだろうけど……。そもそも『鑑定妨害』ってなんだ? 妨害と言うからには誰かからの『鑑定』を阻害するのかな」


 そう思っていると、突然カプセルトイマシーンが光を放った。


「うわ、なんだ!?」


 目が眩むほどの輝きに驚くが、それはすぐに収まり再び本来のカプセルトイマシーンが現れる。

 いや、形は同じだが、色々と変化があった。


 まず筐体の色だ。

 普段あまり意識して見ていなかったが、今までは確か、ボディーの色は真っ白だったはずだ。しかし、今は全体的に青みが掛かっている。まるで、R枠のカプセルや、青色スライムを彷彿とさせる色合いだった。

 次に、正面の張り紙だ。書かれている内容の一部が変化している。


『バージョンアップ! 出現する増強アイテムの効果が高まりました!』

『バージョンアップ! ガチャの消費レベルが1⇒2に上昇しました!』

『バージョンアップ! 長らくの使用傾向から鑑み、1回ガチャは消失しました!』

『バージョンアップ! 「10回ガチャ」だけでボックスを消費した為、最大数が増加しました!』

『10回ガチャはSRランク以上が確定で3個以上出ます』

『ボックスの残り110/110』


「……ステータスアップアイテムの効果が上がったのは嬉しいけど、まさかの値上がり!? いや、でも危惧していたように、ガチャスキルをもう1度手に入れなきゃボックスが更新されない……なんて事態は避けられたんだ。そこはまあ朗報かな……」


 それにしてもこの変化、使用者の利用傾向に応じている……?

 今後も消費レベルが上がっていく事を考えれば、レベルが上がっていくたびに1回ガチャを使った方が、面倒ではあるが楽が出来たかもしれない。けど、「10回ガチャ」だけで消費しきったからこそ最大数が増加したのであって、例えば「1回ガチャ」を引き続けていたら最大数が減っていたのかもしれない。

 楽をしたらそれだけ、あとから手痛いしっぺ返しが来ていたかも……。


「まあそこは、検証のしようがないから想像に過ぎないが……。とにかく、悪い変化じゃないだけ喜ぶとしよう」


 となると、次からガチャを回すにはレベルを21にしなきゃいけない訳だ。

 ステータスはかなり高い部類になったから、もっと強い奴を倒しまくれば、割と簡単に行けるのかもしれない。特にレアモンスターとかは、低レベルで狩ったらボーナスがあるのか沢山上がるみたいだしな。でも、狙ってやるにはレアモンスターの直前にガチャを引く必要があるけど、21まで溜め切ってから挑むっていうのは、中々回りくどいな。


 ……うん。面倒だからレアモンスター討伐を優先するか。今のステータスとスキルの組み合わせなら『ホブゴブリン』の次が出ても何とかなる気がするし。


「おーい、そこの君!」

「ん?」


 今後の展望を考えていたら、またしても誰かに声を掛けられた。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


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小説家になろうにて、ローファンタジー週間ランキング1位を達成したので、今日も3話投稿です。(2本目)


続けて、明日は4話投稿します。

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