夢に慄く
粘るような潮の臭いが鼻腔を
僕は首を回して部屋の様子を
――ああ、またこの夢か――
これから行われる事は理解しているようで判然としない。
「また、お会いできましたね」
冷たい手で心臓を
どれほどの時間が経ったのだろう。
「そろそろ、あの方がいらっしゃる時間ですね」
ジットリと濡れた天井が薄く照らされたが、扉が閉まる重い音と共に明かりは
足音が止まった。胸が悪くなるような潮の臭いが辺りに漂っている。「決して見てはいけない」と僕は自身に言い聞かせていたが、その決心は容易に崩された。
暗がりに控えていた金属質な声の男が飛び掛かって来たからである。男は
それは
「これでも、思い出せませんか?」
金属質な声の男が冷たく言い放つ。
ヒヤリとした鉄棒の先端が肉に当てられる。僕はこれから行われる
目を覚ますと殺風景な部屋に
――あれは
僕はかつての恋人に
僕は彼女の寝顔を見つめながら考える。「いつか、この女も俺の子を孕む時がやって来るのだろうか」と。漠然とした不安が僕の背中を焼いている。まだまだ、悪夢は終わりそうにない……。
(了)
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