第六章 鬼門
1
次第に風は穏やかになり、島は静寂を取り戻して行った。
少女は砂浜でひとりぼっちだった。動かなくなった仮面の前で膝を抱え、じっとそれを見つめていた。風は気まぐれだ。ガラササマは、今どこに行ってしまわれたのだろう? 何だか置いていかれたような気がして、少女は哀しくなった。
私はもう、とっくの昔に心臓を捧げたのに。
私はガラササマと一心同体なはずなのに。
「…………」
少女は、誰かの名前を呼ぼうとして、しかしその名前が口から出て来なかった。
一体誰を呼ぼうとしていたのだろう?
何か、大切なものだったような気がするが……。
遠い記憶も、気持ちも全て風が攫って行って、少女は1人身を震わせた。その時だった。砂浜に誰かやってくる気配があった。少女はハッと顔を上げた。
「貴方は……!」
人影は、すっと手を伸ばし、砂浜に落ちていた仮面を拾い上げた。その人物は……。
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