第33話 貴族でなくなる⁈

   65.隠れ家


「ありがとう」

 隠れ家に落ち着いて、一息ついたときに、アリシアにそうお礼を述べた。ボクを攫ってくれたのは、アリシアだったのだ。

「まさか、アナタが言っていたことが本当になるなんてね」

 実は、アリシアにボクが捕らわれるかもしれない、と伝えておいた。それは予防線だったけれど、貴族に良い感情をもっていないアリシアだったら、動いてくれるかも……と期待していた。ただ本当に動いてくれるかは彼女次第、はっきりとした自信もなかった。

「ウェイリングも協力してくれたんだ?」

「彼女はもどっているわ。もし、この動きが知られて咎められても、彼女は交換留学生。そう簡単に貴族も手をださないでしょうからね」

「アリシアは……」

「私は……この国をでていく。ここはお母さんのいた国。だから教練所にも来た。でも、この国の貴族は嫌い……。どうせ冒険者になったら、国をまたいで活動するんだもの。それがちょっと早まるだけ……」

 明るくそう言うけれど、彼女だって教練所に残りたいはずだ。それでもボクを助けてくれた。

「確認しておくわ。アナタ、将軍邸襲撃をやっていないのよね?」

「誓うよ。将軍邸に行ったのは、事件の後、ミネルヴァに誘われて行ったのが初めてだ。それまで将軍邸の場所すら知らなかった」

「なら、嵌めたのは真犯人?」

「さぁね。でも、ボクを陥れた者なら、目途がある」

「え? 誰?」

「確証がないから、今は伏せておくよ。時期がくれば話す。そうじゃないと、色々と支障がありそうだからね」

 ボクの説明に、アリシアも首を傾げるばかりだった。


「アナタはどうするの? これから……」

「一先ず抗ってみるさ。貴族でいたいわけじゃないが、無実の罪で裁かれるのは納得いかない。やれるだけやって、ダメなら逃げるさ」

「貴族……やめちゃうんだ?」

「セイロン家だって、ボクのような人間をいつまでも養子にはしていないだろう。しがみつく気はないさ」

 アリシアは微妙な表情をうかべて「そっか……。ねぇ、一緒に逃げない? どこか遠くへ……二人で」

 彼女のうるんだ瞳をみて、ボクも察した。

 彼女は貴族が好きではない。だからボクとも距離を開けようとしてきた。いきなりキスされたり、いい雰囲気になったりしても、一線を踏み越えよう、という意思はなかった。

 でも、ボクが貴族でなくなれば……。

 命を懸けて、故郷すら捨てる覚悟をもって、ボクを助けにきてくれた。その想いに応えることも……。

 ボクはそっと彼女の頬に触れる。彼女もぴくんと反応した。二人しかいない隠れ家で、気持ちが重なっていくのを感じていた。



   66.アリシアと


 窓から差しこむ月明りで、透かしたその裸身はよくひき締まって、まるで理想を刻みこんだ彫像のようだ。

 この隠れ家にはベッドがない。アリシアは脱いだ服を椅子の背もたれにかけ、そこにすわるボクにゆっくりと顔を近づける。彼女と不意打ちのようなキスをしたことはあるけれど、今のそれは違う。

 彼女は震える唇で、ボクにぐっとその硬くなり、少しかさついたそれを押しつけてきた。

 ボクはその体をうけとめる。背中に回した手は、肩からゆっくりと腰へとすべらせるけれど、鍛えられた体はまるで男のようだ。

「私……、女の子っぽくないでしょ?」

 彼女もそれを気にしたのか、唇を放してそう呟く。ボクはその手を背中から、脇を通してゆっくりと前にまわした。そこにあるのは、あまり高くないけれど、柔らかみのある膨らみだ。

「十分、女の子だよ。むしろ、魅力的だ」

 ボクはその胸を優しく、周りからその面積を確かめるように、山裾から登頂をこころみる。

 小さいけれど形はよい。その先端はすでに緊張なのか、それとも寒いのか、その姿をしっかりと表すほどに存在を感じられた。ボクはそれを口にふくむ。

 舌をつかい、上下の唇をつかい、そこに刺激を加える。彼女も初めてのそんな体験に「ん……んん……」と、微妙な反応をみせる。くすぐったいような、それでいて内から湧き上がってくる情動に、少し戸惑っているのだろう。


 彼女はボクの両足にまたがる。すると、しっかりと足が開くので、ボクはそこに指を滑りこませた。

 初めて他人にそこを触れられたはず。触れた瞬間、彼女は「あッ!」と声を上げて前かがみになる。でも、ボクはそこで止めず、その体をうけとめて左手で抱き寄せ、さらに右手は奥をさぐる。

 きつくて、でも温かくて、初めてなのに微妙に湿り気を感じる。それは長い間、待ちこがれていた瞬間に、気持ちが昂っていることを感じさせた。

 これなら大丈夫だ……。ボクは彼女の頬にふれつつ、キスをかわす。 

「いくよ」

 彼女は小さく頷く。この体勢だと、彼女から挿入させることになる。恐らく、恐怖と戸惑いから、ふつうの女の子だったら上手くいかないかもしれない。でも、ボクが右手で彼女のそこを、左手でボクのそれをにぎり、優しく誘導してあげる。すると彼女は度胸よく、接合へと至った。

「あぁ……、入った」

 彼女はそう呟くと、しばらく天を見上げるようにして、体を震わせていた。

「つながった……んだね」

 ボクも頷く。彼女の頬から、涙がこぼれ落ちた。きっと、貴族であるボクのことを憎からず想いながら、それでも貴族という足枷があり、気持ちがそこで堰き止められていた。

 それが溢れたような一言だった。

「しばらくそのままでいて。多分、最初は痛いと思うから。お互いが、しっかりと相手のことを、ここにいる……ここにあることが当たり前って思えるようになるまで、このままでいよう」

 彼女はゆっくりと頷き、腰を曲げる窮屈な姿勢だったけれど、ボクにキスをしてきた。ボクは彼女の重さを支えるように、その胸に手をおく。下では、ボクが彼女に刺さっているけれど、負けず嫌いの彼女は、上ではボクを突き刺そうとするかのように、舌を入れてきた。

 ボクはそんな彼女の舌の相手をするように、自分の舌を絡ます。それはまるで、いつも戦闘訓練でそうしていたように、熱い火花を散らすほどの激しさだった。




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