第28話 再会⁈

   55.再会の養父


「ダウ爺……」

 半年ぶりぐらいの再会だ。ボクを拾って育ててくれた人で、無口なため、髭もじゃの顔でじろりと見下ろすだけで、表情一つ変わらない。でもずっとそうだったので、むしろ好ましい反応だった。

「ハ~ルト‼」

 ダウ爺の後ろから飛び出してきたのは、エイリンだ。田舎の村で、ボクと関係していた女の子である。

「どうしたの?」

「首都のアリアンベルムに用事があってね。ダウ爺に護衛をお願いして、ここまで二人で来たの」

 ボクに顔を見せようと探していたところ、偶然に通りかかったそうだ。

「首都って危ないところね」

「ボクもはっきりと襲われたのは、今日が初めてだよ。ちょっとトラブルを抱えていてね」

 事情を説明すると、エイリンも納得したようだ。

「ハルトも貴族になったんだねぇ~。あの野生児で、森の中をはしりまわっていたハルトが……」

「今はシドルだよ。シドル・セイロンとして、魔術教練ではそこそこの成績を上げているんだぜ」

「はいはい。命を狙われるぐらいにね」

 二歳年上のエイリンは、どうしてもお姉さん口調になる。

「でも、首都に用事って?」

「ここでしか買えないものを調達しにね。これまではお父さんが来ていたんだけど、今回は私に……ってね」

 エイリンの家は、村でも大きな宿を営む。ここでしか買えないものを調達する必要があり、それでハポネ村で最もつよいダウ爺に護衛を依頼したのだ。そのお陰で、ボクも助かったことになる。


 ただ、それは意外な影響を与えた。

 教練所の所長から呼び出しをうけ、ダウ爺ともども向かう。

「やっぱり、キミだったんだね。ダウニスト・ジョースキン」

 所長がダウ爺のことを知っていたことに、まず驚いた。

「知り合いですか?」

「優秀な兵士だったが、十数年前に引退した。こちらは引き留めたんだが、意志が固くてね。やはり、キミの『育ての親』は、ダウニストだったんだね」

 檻の魔法をみて、見たことありそうな感じだったので、ダウ爺とは知り合いであると考えていた。ダウ爺が元軍人だったのなら、当然だ。

 ダウ爺はほとんどしゃべらないし、人付き合いが苦手なことはハポネ村にいたときから、交渉ごとをボクに任せていたことでも分かる。むしろそのためにボクを育ててくれた? とすら考えていた。

「今でも軍の中で、伝説とすらされるダウニストがキミの育ての親なら、キミの魔法の腕も分かるよ。ダウニスト……復帰する気はないかね?」

 ダウ爺は静かに首を横にふる。貴族ではないので、騎士にはなれないし、人付き合いも苦手なので、集団行動も苦手ときている。山に籠って一人暮らしをしていた理由は、何となく分かる。

 そして、ダウ爺がボクの育ての親と知って、変わったことは、ボクに手をだそうとする者がいなくなったことだ。

 要するに、軍でも伝説とまで称されるダウ爺の愛弟子……。それは軍関係者にとっても無傷では済まない。前の襲撃者のように、返り討ちに遭う……との連想につながったのだった。



   56.再会の幼馴染


 エイリンに、宿屋に呼ばれた。村にいるときは、ボクが山を下りて収穫物を売りにきたとき、必ずエッチをしていた。

「今回は、私が物資を調達しに来て、エッチするんだから、逆だね」

 明るくエイリンはそういう。

「ボクは貴族になったけど、いいのかい?」

「貴族の側妾になるつもりはないわ。でも、エッチは別にいいでしょ♥」

 エイリンはこういう子だ。村で一番、歳の近かったボクとエッチするけれど、恋愛といったことではない。

「あれからどうしていたの?」

「エッチもできず、ふつうに宿屋の看板娘として過ごしていたわよ。時おり、色目をつかってくる旅人はいたけれど、そんな相手とする気はなかったからね」

 そういうと、ボクに飛びついてきた。

「だから、たっぷりしよ♥」

 エイリンのそれは激しい。半年以上、堪りきったものを、まるでダムが放流するがごとくだ。

 胸はそれほど大きくないけれど、程よいサイズだ。それはウェイリングやマイアのを見慣れてしまったため、小さく感じるけれど、手にしっかりと重みと弾力を感じるそれだ。

 でも、それを感じる暇もない。口をこすりつけ合うほどの激しいキスと、服も互いの摩擦で脱いでいくような、全身で相手を感じ合うほどに密着したまま、ベッドに倒れ込んだ。


 マイアやレイラは、あくまでボクが上の立場だし、どちらかというと受け身であることが多い。でもエイリンはちがう。

 自分からボクのそれを握ってこすり、硬くしてから自分のそこに導く。そして自分で動いて、絶頂を迎えた。

 ボクは彼女がイクと、それから腰をつかう。彼女のお尻を、ボクが持ち上げるようにして動かし、腰もつかって下から突き上げる。

 女性の方が興奮がながつづきするので、ボクがそうやって彼女を責めていると、自然と彼女もまた盛り上がってきて、自分から動きだす。この繰り返しで、ほとんど全力疾走をするように、互いに力尽きるまでエッチをするのだ。

 ボクも何も考えなくていい。ただ彼女を感じて、彼女も頭の中を空っぽにして愉しむ……というのがボクたちのスタイルだ。

 これはボクが山を下りて、彼女も家の仕事をぬけだして……という事情も影響したことは否めない。時間がない中で、互いに満足するためにこうしたエッチのやり方になったのだ。

 だから終わったときは、へとへとになる。


「やっぱり……はぁ、はぁ。いいわ」

 しぼっていた脳への血流が、急にもどったとしても、快感系に流れていた血流が思考へと流れるには、時間がかかる。

「ボクも久しぶりに、こんなエッチをしたよ」

「貴族様になったから、もうエッチをしてくれないかと思った」

「ボクが婿に入ることになる家では、側妾をつくることは認められていてね。有難いことに制限はないのさ」

「でも、気を付けた方がいいわ。セイロン家のことを狙うのは、ドネルズ家だけじゃない。私のところにも、バーナム家やピョートロフ家が、セイロン家を狙っている、という話が入ってきている」

 ハポネ村で宿屋をしているエイリンの家には、旅行者などからの情報が集まってくるのだ。

「もしかして、それを伝えにきてくれた……?」

「さぁ?」

 エイリンははぐらかすように、ニヤッと笑う。

「お高くとまっている貴族様になっていたら、今日も素通りして帰ろうと思っていたけれどね。ダウ爺も、何も変わっていない……といっていたし……。ま、合格ってことで、教えてあげたのよ」

 ダウ爺がボクを……。そのことが嬉しかったし、こうして二人がボクを気遣ってくれていたことが、ボクの励みにもなった。


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