第5話 戦う乙女⁈

   9.マイアの気持ち


 マイアは部屋をでた。下腹部に重だるい違和感はあるけれど、むしろそれが心地よくもあった。

 初めてみたときから、その容姿、秀でた魔法の腕に惹かれた。それが貴族の跡取りが決まっていて、婚約していることに一瞬怯んだけれど、貴族なら何人も夫人をかかえることが当たり前なので、私にもチャンスがあると思い至った。

 部屋に誘ってくれたときは、天にも昇る気持ちだった。私の田舎にも男の子はいたけれど、みんな子供っぽくて、魅力を感じなかった。逆に、私の胸を目当てにしたと思われる男の子から度々言い寄られ、うんざりしていたぐらいだ。

 彼は、私の胸をチラ見すらしなかった。それが、余裕の為せる業だということは気づいている。でも、貴族として女性との接し方が上手い……という風にしか感じられなかった。

 部屋でも紳士だった。でも、それは私にとってちょっと不満……。だから意地悪を言ったけれど、彼は怒ることもなく、その意図を察して、私をベッドに押し倒してくれた。

 だから、すべてを捧げようと思った。

 唇同士がふれたとき、自分の唇のかさつきに気づく。我を忘れて、唇を湿らせようとして、彼の唇を舐めてしまった……。

 あぁ、恥ずかしい! でも、そのことにあまり大きくふれず、彼は優しく接してくれた。だから、その手を私の胸に導いた。もう覚悟を決めたのだ。こんなところで、中断されたくない。


 彼は私の大きな胸を、丁寧に責めてくれる。私がコンプレックスといったからだろう。大きく口を開いて咥え、その唇の内側でこするようにして刺激を加え、舌で絡めるようにして、先端を刺激してくれる。

 地元の男の子たちは、悪ふざけで無理やり強くにぎったり、叩いたり、乱暴にしたけれど、彼はちがう。

 あぁ、気持ちいい……。胸を男の人に弄られるのって、こんなに気持ちがいいものなんだ……。

 あ! 彼の手が、私の下腹部に……。大丈夫かな? 昨日、ちゃんとお風呂に入ったけれど、今日だって汗をかいちゃったし……。

 あぁ、優しく摩ってくれる。でも、早く中に……。そう、自分で慰めたことはあるけれど、他人の指が入ってきたのは初めて……。うん、そこ。そこをもっと責めて欲しい……。

 やっぱり分かってくれている。胸と、下も同時に責められる……。こんな気持ちのいいことだったんだ……。

 ううん、彼だから気持ちいいの。決してがっつかず、私のことを考えて、すすめてくれているのが分かる。

 あぁ……、頭の中に、白い靄がかかっていく……。でも、それは視界不良になったわけじゃない。他のことが考えられない、彼と一緒に、まるで体が融け合って快感を共有している。それだけに集中している、不思議な感覚……。

 彼の責めが同時に止まった。ふと目を開けると、彼が私の上に、覆いかぶさるようにしている。

「来て……」


 彼が……私の中に入ってきた。あまり痛くはないけれど、自分の中に他人がいるって、何か不思議。彼のそこは温かく、湿り気もある。……いや、自分が湿っているのかしら?

 まだ入ってくるの? え、そこまで?

 あッ‼ そう、私の気持ちいいところまで到達した。あぁ……、本当の意味でつながった……。あれ? 彼のそれが大きく……。え? うそ⁈ あぁ、ぴったり、私の中に、まるでサイズを計ったように、それはぴったり……。

「どうして……動かないの?」

「初めてだろ? まだ慣れないうちに動くと、擦れて内出血するんだよ。もう少し、キミの中が潤ってから……。でも、もうよさそうだ」

 彼は小さな動きからはじまり、やがて大きな動きへと変わった。

「あ……、あ……、あ……」

 何度も、何度も彼のそこが、私の気持ちいいところに当たる。いい、いいよ、いいよぉ~~~~ッ‼

「来て~~~~ッ‼」

 彼は私の中に、いっぱい出してくれた。私はそれを全部受け止める。でも、一度で終わるはずもない。彼は何度も、何度も私を求めてくれ、そのたびに歓喜の声を挙げたのだった。




   10.冒険者の娘


 やはり、シドルによるマイア・ルートの攻略は容易かった。ただ、この世界ではゲームと異なり、これで終わりではなく、マイアとの付き合いをつづけていかないといけない。

 何しろ、主人公が幸せになると、ボクが不幸になる、というシーソーのような関係にボクと主人公はあるのだ。だからこそ、主人公が誰かを見極めるべきで、マイアにも協力して欲しい。

 そして「二人のことは、みんなには内緒だよ」と言ったのは、別に他の子をおとしたい、という邪な気持ちがあるわけではない。主人公がマイアに言い寄る余地を残しておきたかったからだ。

 マイア・ルートの主人公のバッドエンドは、滅茶苦茶に気持ち悪がられ、シドルと腕を組んで去っていく、というものだった。実際、もういい仲になっていたのなら、そうした反応も吝かでなかったはず。そんな彼氏もちの彼女に言い寄る、大バカ者という位置づけだ。

 もっとも、少しずつ自分に目を向けさせるのがマイア・ルートの愉しみでもあり、失敗すればシドルに奪われるのが必然だ。


 もしかして、主人公がマイア・ルートを攻略したときも、すでに彼女とシドルは肉体関係に……。否、考えるのは止めよう。今、ボクはシドルなのだ。主人公目線であれや、これやと考えたところで、どうしようもない。

 むしろ、マイア・ルートで主人公がハッピーエンドになると、シドルが泣きながら二人の幸せを見守る、という形だった。寝とられたら、それは泣きたくもなるだろうけれど、シドルのバッドエンドとしては、それほど悲惨ではない。

 何しろマイアは庶民であって、貴族としてのシドルが彼女を失っても、それほどダメージがないのだ。

 ただ、庶民と言っても商人や、冒険者といった立場の者だと、貴族とのかかわりもかわってくる。

 魔術教練といっても、剣術は必須の授業である。魔法剣士という最上位ランクへの成長も期待できる。

 基本、魔術師は杖を武器とするけれど、剣でも魔力を増幅できれば、剣で戦うこともできるのだ。

「ほら、シドル! もっと打ちかかってこい!」

 冒険者の父をもつアリシア・グレイスフォード――。彼女はその剣技において他より秀で、圧倒的な戦闘力をほこる女の子だ。しかし魔術適性がみとめられ、魔法剣士を期待され、魔術教練をうける。そんな彼女と唯一、渡り合えるのがシドル・セイロンだ。

 攻略難易度・中のアリシアを、ボクは相手にしていた。





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