第4話 攻略難易度⁈
7.魔術
魔術教練、初日――。
この世界で魔法とは、生命力を魔力として転換する第一段階、魔力を外向けのエネルギーとして活用できる第二段階、それを攻撃、防御として顕在化できる第三段階に分けられる。
適性検査で選ばれるのは、すでに第一段階ができる者。そこでこの教練所では第二段階から学ぶ。
「よいですか? 頭の中に白い大きな玉をイメージして下さい。少しずつ、少しずつ大きくなっていく……。それを、自分の首を通って、肩を通して腕へと下ろしていきます。そして、手の平まで来たとき、その玉を何かの形として手の平から外に出していきます。火でもいい。水でもいい。風でもいい。何でもいいので、自分がイメージしやすい形で出してみてください」
みんな机の上に手をおいて、上を向けて広げ、一心不乱にそれを練習する。
生憎と、ボクはすでに第三段階までできるので、この手の練習は不要だ。魔法もダウ爺のすることをみて学んだ。ダウ爺は森で暮らし、魔獣と遭遇することもあったので、魔法の腕も長けていた。
ダウ爺は言葉で教えてくれないので、見様見真似で覚えるしかない。魔法はイメージ力、内在するエネルギーをどう練り上げ、力として発現するか? それは体で覚えていくしかない。
これがゲームの中だと気づいたときから〝魔法は身を佑く〟とみて、必死でボクは特訓した。子供時代、無邪気に遊び惚けていた連中とは、その時点で差がついていて当然だった。
「う~ん……、うまくいかないなぁ」
隣でそういって首を傾げているのは、マイア・ラピド――。ゲームの中では攻略難易度・低の庶民出身の少女。要するに、彼女でまずは成功体験を得てもらおう……というキャラだ。
しかし攻略難易度・低というのは、あくまで主人公目線。むしろシドル目線でいうと、低どころかフリーパスだ。何しろ、彼女はシドルへの恋心で主人公には中々靡かない、という設定だったから。
今も、ちらちらボクの方をみて、自分のつぶやきに対する反応を確認している。
「教えてあげようか?」
ボクがそういっただけで、赤い顔をして嬉しそうに大きく頷く。
彼女は肉感的で、胸も同世代からするとかなり大きい。もっとも太っているわけではなく、まだ十二歳の成長期でもあり、はち切れんばかりにぱつぱつ、という感じである。
でもそのお陰で攻略した後のご褒美映像も、サービス精神旺盛で人気が高かった。見た目通りの幼い口調、少女っぽい性格と、その卑怯な肉体とのギャップ。その差も好感されるところだ。
ただ、ボクは彼女を攻略するつもりは、この時点ではなかった。彼女に言い寄る男を見極められば、主人公が分かると思ったからだ。
でも、ボクの右腕に腕をからめてきて、胸を押しつけてこられると、ボクもどきりとしてしまう。とろんとした、眠そうな目で見上げてくるのも、彼女のことを守ってあげたくなる。
ボクもエイリンと会わなくなって二週間以上が過ぎ、そろそろ辛抱が堪らなくなっていた……。
8.マイア・ルート
教練所では、全員が寮に入って生活する。庶民の出身者は4人部屋がいいところだけれど、貴族の子弟には個室が与えられる。ボクもセイロン家の養子なので、個室が宛がわれた。
六畳一間ぐらいの広さで、小さな暖炉があり、ベッド、タンス、テーブル、それに椅子が一つずつつく。
そこにマイアを誘うと二つ返事でOKし、シドルからマイア・ルートを攻略するのは、やはり楽だと感じられた。
彼女は部屋に入るなり「個室……、いいなぁ~」と嘆息しつつ、ベッドに腰を下ろした。
それは、もう誘っている……としか思えないけれど、ボクは椅子にすわって様子をみることにした。何しろ、いくらゲームの世界に入りこんだといっても、ここは現実と感じられる世界だ。それこそ、ゲームのように女の子をただ墜とせばいい、という話ではない。
「女の子は二人部屋だろ? 男のタコ部屋よりマシだよ」
マイアは隣にすわってくれなかったことが不満なのか、ちょっと唇を尖らせて「タコ部屋だって、いいところがあると思うよ。だって、みんなでわいわい、仲良くなれるじゃない」
ちょっと拗ねて、相手のいうことを何でも否定したい……といったところだ。こういうところが子供っぽく、可愛いところだ。
「一人部屋でも、仲良くなれるよ。こうやって……」
ボクは椅子から立ち上がると、彼女の両肩をつかみ、ベッドに押し倒す。
嫌がるわけでも、抵抗することもなく、マイアはベッドの上で手をぎゅっとにぎって、潤んだ瞳でボクを見上げてくる。
可愛い……。ちょっとした緊張と、期待のない交ぜになった瞳は、少女から女性へと生まれ変わる、そんな意識を感じさせるものだ。
右手でその頬にふれた。彼女も小さく震えながら、瞼を閉じる。その、やや開いたまま、多分そうなっていることにすら本人が気づいていないだろう、緊張で少し血の気が引いた唇を、ボクの唇で塞ぐ。
そこに彼女の意識が集中するのが分かる。初めて温かくて湿り気のある唇がふれたことで、彼女も自分の唇が渇いていたことに気づいたのだろう。慌てて自分の唇を舐めようとして、その舌がボクの唇を撫でてきた。
「ご、ごめんなさい……」
まさか、初めてのキスでディープまで……と、カン違いするほど、ボクも野暮じゃない。でも、笑ってもう一度、唇をふさぐ。さっきより、湿り気を増した彼女の唇は突飛な小イベントのおかげで、緊張も解けて柔らかくなっていた。
でも、それ以上に二人の接近を邪魔するように、ボクを跳ね返すのが、その大きな胸だ。
このまま一気に……。と気持ちは昂るけれど、やはり主人公を見定めないと、この世界で安心していられない。
マイアはこのまま泳がせ、主人公を見定めるのが得策……。それに彼女だってキスを初体験した今日、いきなり最後までいくつもりはないはず……だ。
ボクはそう思っていたけれど、彼女は唇を放したボクの手を、自ら掴んで自分の胸にもっていく。
「私のここ、大きいでしょ? 自慢でもあるけれど、コンプレックスでもあったの。だから、ここを私の好きに変えて」
あぁ、思いだした……。マイア・ルートの一番の見せ場は、幼いと思っていた彼女が自分から誘う、この言葉にあった。
そのエイリンより大きな、未体験の柔らかさ、大きさ、それに張りのあるそこにふれて、ボクの自制心は完全に崩壊した。
彼女の制服を解いていき、露わとなった胸を、ボクは両手でしっかりと感じ、口にふくんでいた。
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