作戦成功!?
「真のクォーツ家が放つ極上の魔術をご覧なさい! フラワー・マジック、ダンシング・ハーブ」
ローズはエリスを指さし、声高らかに魔術を放った。
彼女の気迫に応えるように、部屋中に蔦がはびこる。蔦から色とりどりの花が一斉に開き、花粉を撒いていく。
「美しさに酔いながら散りなさい!」
「確かに美しいけど、それだけね。ファントム・ジュエリー、ダイヤモンド・ミスト」
蔦も花粉もダイヤモンドに閉じ込められた。蔦は静止して、花粉は七色に光る粒にされる。いずれも床に落ちて霧散した。
エリスは片手を口元に当てて上品に笑っていた。
「花粉に痺れ薬を仕込んだ工夫は認めるけど、私には効かないわ」
「そ、そんなの序の口ですわ。この私を侮らないでくださる!? フラワー・マジック、ダンシング・フォレスト」
大量の木の根が、ローズの両手から勢いよく伸びる。
ローズも頭では悪あがきだと分かっている。
しかし、何もせずにエリスに屈服して、フレアを殺す手伝いをするのは絶対に嫌だ。
魔術師として格が違いすぎるが、従いたくない。
そんなローズを嘲笑うように、エリスの魔術は放たれる。
「同じ事の繰り返しで私を倒す事はできないわ。ファントム・ジュエリー、ダイヤモンド・ミスト」
「カオス・スペル、エンドレス・リターン」
クロスの両手から黒い波動が生まれる。
しかし、その波動さえもダイヤモンドに閉じ込められて粉々にされた。
クロスの表情に苦悶が浮かぶ。
「思っていた以上に格が違いすぎる……何か作戦を練りたいが……」
「作戦なんて戦いながら考えましょう! フラワー・マジック、フォレスト・マーチ」
クロスとローズの足並みがそろわない。
クロスが召喚する黒い波動もローズが放つ木の根も、ことごとくダイヤモンドで固められて、動きを封じられる。そして、音を立てて砕かれる。
七色に光る残滓をみながら、エリスはうっとりした。
「本当に美しい魔術は、優雅で見る人を魅了するものよ……!」
エリスの表情に驚きと恐れが生まれる。両目を見開き、小さな悲鳴をあげていた。
彼女の目には、人影が写っていた。
金髪を生やし、警備服を身に着けた青年だ。ブライトに間違いない。十文字槍を構えて宙を飛んでいる。
「セイクレド・ライト、シャイニング・ゴッド」
エリスの目の前に十文字槍が立てられた。
次の瞬間に、眩い光が放たれる。光は一瞬にして辺りを浄化し、部屋を満たしていたダイヤモンドを蒸発させた。
ブライトは床に降り立つと、素早く十文字槍を抜いて、よろめくエリスに切っ先を向けた。
「降参してくれ。君を殺すのは望まない」
「あらあら、綺麗事を言うのね」
エリスはその場に膝をついて、かすかに微笑む。
シャイニング・ゴッドは眩しいだけでなく、相手の魔力を根こそぎ奪う。至近距離で不意にくらったエリスはたまったものではない。
王城の入り口の方向から慌しい足音が聞こえだす。イーグルだった。
「ブライト、うまく行ったか!?」
「はい。イーグル先生の魔力で飛ぶ紙に乗る作戦は成功しました」
ブライトは、エリスの様子を慎重に見極めながら作戦の成功を告げた。イーグルの操る、手のひらサイズの紙に足を乗せて、エリスの元まで突進したのだ。シンプルな作戦だが、効果は抜群だった。
「ローズとクロスが、エリスの気をひいてくれていたのも良かったよ」
「さすがは私ですわね!」
ローズは自らの金髪をかきあげた。
「イーグル先生もたまには役に立ちますわね」
「誉め言葉のつもりなら大間違いだ!」
「あなたにしては望外な高評価を受けましたのに」
「おまえには人として根本的な部分を教えるべきだな。今は他の事をするが」
イーグルは、一時的に立てなくなったエリスを見つめていた。
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