家に帰ると

 フレアたちがホーリー家に帰った頃には、辺りはすっかり夕暮れ時になっていた。

 帰る道中で、フレアは疲れのせいで少し眠たくなったが、家の前に立った途端に元気が回復した。

「ただいまー!」

 そう言って屋敷の門をくぐろうとした時に、慌てた様子で走ってくる二人組がいた。

 父と母だ。いつになく焦っているように見える。

「フレア、ようやく帰ったのか! 怪我はないか?」

 父が先に口を開いた。

 母もゼェーゼェーと荒い息をしながら言葉を紡ぐ。

「大変だったわね。でも、無事に帰ってきてくれて良かったわ。これから出かけるのだけど、一緒にどう?」

 母が優しい笑顔を浮かべるが、フレアは気まずそうに視線をそらす。

「ごめんなさい、魔術学園グローイングでパーティーがあるかもしれないの。そっちに顔を出さないと」

 フレアが言うと、父と母は顔を見合わせた。

 フレアに背中を見せてヒソヒソ話を始める。

「凱旋パーティーはサプライズで行うと聞いたが……僕たちがそれなく魔術学園グローイングに誘導する算段だったよな」

「たぶん、誰かがバラしちゃったのね。仕方ないわ。堂々と誘いましょう」

 会話が丸聞こえで、フレアは苦笑した。

「パーティーの事はイーグル先生から聞いたの。二人も知っているなら一緒に行きましょう」

「イーグル先生は意外と天然だな」

 父はフレアに向き直り、深々と頷いた。

「真面目でしっかりした先生だと聞いているが、うっかりするのだな」

「とてもいい先生よ。私たちもお世話になっているの!」

 フレアは笑顔満面になる。

 ローズは鼻で笑う。

「ちょっとお堅い部分もありますけどね」

 クロスがボソリと呟く。

「おまえがいたら、警戒して固くなるのは仕方ないだろう」

「あら、この私に落ち度があるとおっしゃりたいの?」

「それ以外に何がある?」

 クロスが呆れ顔になると、ローズはフンッと鼻を鳴らして胸を張った。

「姓はクォーツ、名はローズ。この私に落ち度なんてありえませんの。落ち度があると言うのなら、世界がルールを変えるべきですのよ!」

「……相変わらず自分ルールがすごいな。説得を諦めるレベルだ」

 クロスは皮肉を込めるが、ローズは高笑いをあげた。

「私はすごく素晴らしい存在ですのよ!」

「うん、ローズはすごいよ!」

 フレアが両目を輝かせていた。

 クロスは間に割って入るのを諦めて溜め息を吐いた。

 そんな三人の様子を、父と母は微笑みながら眺めていた。

 母が口を開く。

「魔術学園グローイングにいる皆さんを待たせるのも悪いから、そろそろ行きましょう。きっと美味しいものが用意されているわ」

「美味しいもの!? おやつもあるかな?」

 フレアが興味津々に尋ねると、母はクスクス笑った。

「フレアはおやつが大好きね。たくさんあると思うわ」

「たくさん!? すごいわ!」

 フレアは両手を合わせて、うっとりした表情で空を見上げていた。どんなお菓子があるのだろうと口ずさみ、夢見る少女になっている。

 みんなで魔術学園グローイングに行く道中は、みんな幸せそうであった。

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