迷宮探索へ~入り口を探せ~
フレア、クロス、ローズで班を組む。
この事をイーグルに報告に行くと、三人は順に険しい表情を向けられた。
「いいか? おまえたちは特に無茶を控えろ。宝玉探しなんて他に機会はあるだろう。一発で成功させようなんて絶対に考えなくていいからな。分かったな?」
「あら、仮に私たちが諦めて、他の班が見つけていたら成績はどうなりますの?」
ローズが疑問を呈すると、イーグルはこめかみに片手を当てた。
頭が痛くなっているのだろうが、冷静さを保とうとしている。
「宝玉を見つけた班が上に決まっているが、意識しなくていい。卒業生の多くは立派に活動している。魔術学園で一番になる必要はない」
「この私を侮らないでくださる? 姓はクォーツ、名はローズ。世界一を目指す天才美少女ですわ」
ローズが自らの金髪をかきあげた。
イーグルの口元は引くついていた。
「一番を目指して道を踏み外した生徒がいる。固執しすぎないようにしろ。トラブルを起こしてでも成績一番になるつもりなら、救助用アイテムを渡す事も、迷宮の入り口を教える事も拒否する」
ローズの態度次第では、迷宮探索に挑戦させないつもりだ。成績に響くだろう。
フレアとクロスは、ローズをどうやって説得するか悩み、互いに顔を見合わせた。
しかし、ローズはへこたれない。
「自力で解決すれば救助用アイテムなんていりませんわ。さあ、出発しましょう!」
ローズは呪文を唱える。
「迷宮の入り口なんて魔術で探しますわ! フラワー・マジック、ビューティフル・バタフライ」
風が吹き、どこからともなく花の香りが運ばれてくる。
赤、白、黄色など色とりどりの花びらが舞っていた。蝶のはばたきのように、華やかで、見る者の心を奪う。
ローズは得意げに胸を張った。
「この花びらは高い魔力に反応して集まりますの。つまり、魔術的な仕掛けのある迷宮の入り口に集中し、簡単に発見できるようになりますの。美しいだけではありませんのよ!」
イーグルは呆れ顔で溜め息を吐いた。
「魔術的な仕掛けは入り口付近にはない。花びらが集まるなどありえない……!」
イーグルの顔に驚愕が浮かんだ。
花びらが一か所にどんどん積もっていき、綺麗な正方形となった。
ローズは高笑いをあげた。
「やはり私の魔術は絶大ですわ! こんなにも簡単に隠された迷宮の入り口を見つけるなんて」
「そんなバカな……いったい何が起こっている?」
「素直に私の実力を認めたらいかがかしら? 宝玉だってすぐに持ち帰りますわ!」
頭を抱えるイーグルを横目に、ローズは鼻歌まじりに呪文を唱える。
「さて、肝心の入り口を発掘しませんと。フラワー・マジック、ダンシング・ハーブ」
草がしなやかに曲がり、積もっていた花びらに絡み合う。
色とりどりの花びらと草が、互いに寄り添い、踊っているように見える。
やがて花びらが取り除かれる頃には、土が払われ、人工的な鉄の扉が露わになった。
「開けましょう!」
ローズがパチンと指を鳴らすと、大量の草が這ってきて、扉に群がる。
草同士で絡まり合い、強度が増す。強度が増したままの状態で扉を引っ張る。
扉はあっけなく開いた。中は暗く、階段が続いている。
フレアの両目は輝いた。
「ローズ、すごいよ!」
「褒められて悪い気はしませんわね」
ローズは金髪をかきあげる。
「さあ行きますわよ!」
ローズは意気揚々と階段を降りていく。
イーグルは唖然としていた。
「いったいなぜ……たしかに魔力を感じるが……」
「イーグル先生、俺たちも入って大丈夫ですか?」
クロスが尋ねると、イーグルは頷いた。
「こうなってしまっては、おまえにまともな対応を求めるしかない。くれぐれも魔力を暴走させないでくれ。救助用アイテムを渡すから、無理をしないように」
「ありがとうございます、気を付けます」
クロスは一礼してスイッチのついた白くて丸い道具を受け取った。
フレアもつられて一礼する。
「行ってきます」
「ああ、特におまえは気を付けてくれ」
「は、はい」
クロスとフレアも階段を降りる。
イーグルは顎に手を当てて考え込んだ。
「こんな所にまで魔力が漂うなど、通例ならありえない……何者かの侵入を許したのか?」
イーグルは胸騒ぎを感じた。
根拠はほとんどない。しかし、確かなざわつきを感じたのだ。
「念のために世界警察ワールド・ガードに近くで待機してもらうか。何事も起こらなければいいのだが……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます