今日も元気にいってらっしゃい

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今回のブラックユーモア焙煎度

フレッシュ感:★★★

フルーティーさ:★★★

軽さ:★★★★

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「えー!! もうこんな時間!」


 時計を見て朝から大声を出した。二度寝したせいでいつもより一時間ほど遅い時間。 この時間だと急いで支度しないと仕事に間に合わない。私の無遅刻の記録が終わりを告げてしまう。  ベッドから飛び起き、顔を洗って歯を磨き、簡単にメイクを済ませる。後は髪を整えて着替えるだけ。  何の気なしにリモコンを手に取りテレビを点けた。


『今日の占いカウントアップSUPER』


 髪の毛を整えながらテレビを横目で見る。もう朝の占いが始まっていた。      いつもなら、ゆっくりこの占いを見て家から出ていく。


 占いってまったく信じてないんだけどね。私。なんとなく見てしまうのよね。そう思いながら私はヘアアイロンで寝癖を大急ぎで直す。


『今日の占いです。今日の最も良い運勢は』


 こんな慌ただしい朝を迎えた私ではないのは確か。


 そう思いながらも密かに1位を期待しているちなみに私はふたご座。ふたご座こい!


『やぎ座のあなた』


『長年の成果が表れ好評価


チャレンジ精神がプラス方向へ


友達からの助言が成功の鍵


ラッキーアイテムは時計です』


 ほらね。と思いつつ、1位ではなかった事にガッカリ。


 別に占いとか興味ないんだけどね。私。友達とかが、高いお金払って占い師に見てもらったとか聞いたら、バカじゃないの?って思うもん。


『さあ続いて2位から6位の発表です』


 ブラウスのボタンを閉めながら次の発表を待つ。だが、残念ながらそこにもふたご座は入っていなかった。


 あら、ここにも入っていない。まあ、別に占いとかどうでもいいだけどね。私。


 初詣に行って、みんながおみくじを引いても、私は引かないもん。なんかその一年、ただ一度のおみくじで決め付けられるのってすごく嫌じゃない?


『次は6位から11位以内の発表です』


 なんとか支度を終え、占いの続きを食い入るように見る。


 そろそろふたご座が来るはず。まさか最下位じゃないわよね。ここで来ないと最下位……。来いふたご座。


『それでは6位です』


6位、7位、8位、9位、10位……。


『11位はおひつじ座の人』


『単調な日々が続きブルー


ショッピングで気分転換』


「ちょっと、待って。なんで、ふたご座が出てこないのよ!! 」


『そして、今日もっとも運勢が悪いのは。ごめんなさい。ふたご座のあなた』


「くそーー!」


 最下位ってやっぱり、気になるわよ!


あーあ。今日1日、憂鬱だわ。


 私はリモコンを片手に立ち上がった。一応、説明とラッキーアイテムも見ておかないとね。テレビを消すのはその後。まあ、信じてないんだけどね。


『ふたご座のあなたは想定外のハプニングに遭遇。なんだかんだあって死んじゃいます』


「ええーーー! 嘘でしょ!? 死ぬの私!」


 持っていたリモコンを地面に落とした。


 うそ! ふたご座の人全滅!? それに、なんだかんだってなに!?


『でも大丈夫! そんなあなたのラッキーアイテムは、棺桶です』


「大丈夫じゃないわよ! 棺桶って! それもう死んでるから!」


『今日も元気に逝ってらっしゃい』

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