自己犠牲と自己保身による存命のための挙手性
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今回のブラックユーモア焙煎度
苦味:★★★★
強い酸味:★★★
野性味:★★★★
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小さな村があった。村人達は魚や動物を狩り、それを町へ売りに行く。そうやって生計を立て細々と暮らしていた。
ある夜のこと、山賊達に村が襲われた。
それは、村の男達がほとんど町へと下って留守の時だった。
抵抗した村人は惨殺され、生き残った村人は家畜を収容する木製の檻に押し込まれた。
襲撃の成功を祝って、山賊達は宴を開く。
たき火の前で、強奪した食べ物と酒を飲み交わし、陽気にはしゃぐ。
宴も終わりに近づいた頃。
「お頭、こいつらどうしますか」
子分が檻に入っている村人を指した。
「そうだな。いつものやるか」
お頭は飲みかけの酒を片手に立ち上がり、檻に近づいてこう言った。
「お前らの中から一人殺す。死んでもいいというやつは手を挙げろ。誰も手を挙げなければ全員殺す」
お頭は酒をぐいっと一口飲む。
檻に入っている村人達はどよめいた。
子分達はその様子を嫌な笑みを浮かべながら観察してる。
「なんだ。誰もいないのか。それでは皆殺しだな」
お頭はそう言うと「おい」と子分を呼び寄せる。
「待て。俺を殺せ」
檻の中にいた青年が名乗りを上げる。
「ほう、お前か。いい度胸だ」
「ああ。だから他の者は助けてくれ」
青年は目をつむり頭を下げる。
「いいだろう。こいつを出せ」
子分が青年は檻から引っ張りだす。
「よし、あとは全員殺せ」
お頭が子分に命令する。
「まて!約束が違う」
青年はお頭に勢いよく言い放つが、子分達に頭を掴まれ地面に叩きつけられた。
お頭は倒れた青年の頭を踏みつけて地面にグリグリと押し付ける。
「はて。そんな約束したかな」
お頭が小首を傾げ、ふざけた口調で言うと、子分達が一斉に笑い出す。
「何回見ても、このザマは面白いよな」
お頭も腹を抱えて笑う。
青年は取り押さえられたまま、檻の中の村人が一人一人殺されていく様を見せつけられた。
雄叫びをあげ、悔しくて涙が滲む青年に向かってお頭が冷めた口調で言う。
「安心しろお前は殺さない。さんざんこき使った後、奴隷商人に売り渡してやる」
青年は手枷をはめられて、アジトへと連れて行かれた。
……しばらく後。
山賊達のアジトが襲われた。
それは、生き残った村の男達の復讐だった。
アジトへ連れられてる中、青年は密かに目印を記していたのだ。
それを村の男達は辿ってきた。
「無事でよかった」
牢獄から助け出される青年。
「いてて、わかったよ。そんな乱暴にするなよ」
そしてその牢獄には、山賊達がぶち込まれる。
「どうするこいつら?」
「殺せ」
「こいつらには、しかるべき報いを」
村人達が話し合う。
「いい考えがある」
青年が村人達にある提案をした。
青年は山賊達に言った。
「お前達の中から一人、生かす。生きたいという奴は手を挙げろ。それ以外は全員殺す」
山賊達は顔を見合わせる。
「どうした? 誰もいないのか? それなら全員殺すぞ」青年は言う。
お前らちょっとこい、お頭は子分達に言うと身を寄せ声をひそめる。
「みんな、いいかよくきけ。俺が手を挙げる。奴らの隙をついて俺がお前らを助け出す必ずだ。どうせあいつらには、皆殺しをする度胸なんてない。大丈夫だ」
「……え、え? そんな事うまくいきますか? 大丈夫ですかね」
「俺は信じろ。お前らはおとなしくいていろ」
「へっ、へい」
お頭は子分達を無理やり納得させると手を挙げた。
「俺だ。俺を出せ」
お頭は子分達を助ける気など毛頭なかった。自分が助かりたい。ただそれだけだった。
「よし。わかった。みんなそいつを出してくれ」
村人はお頭は牢獄から引きずり出し、後ろ手に縛る。
よし、青年が言うと、牢獄に火が放たれた。
子分達は阿鼻叫喚の中、燃え盛る火に焼かれて絶命していった。
「……ひでー」
お頭は惨状を見て呟く。
村人達は立ち尽くすお頭を傍らにあった椅子に座らせ、くくりつけた。
「まずは誰からいく」
村人の一人が言うと、青年が手を挙げた。
「まずは俺からだ」
青年は椅子に縛られたお頭のふとももめがけて、ナイフを突き立てた。
お頭は痛みに顔を歪め躰を飛び上がらせる。
「ぐあぁぁ。おい、約束はどうした。殺さないはずだろ」
「安心しろ俺達は約束通りお前を殺さない。殺さずに報いを受けさせる」
青年は、突き刺したナイフをグリグリとねじる。
「うう、ぐぐあ」
お頭の額に脂汗が噴き出る。
青年はしばらくナイフでいたぶった後、言った。
「次は誰がいく」
村の男達、全員が手を挙げる。その光景を見て自分の末路を悟ったお頭は大声で叫んだ。
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