第八話 掃討作戦
アンディたちが仏像集落へ入ったその頃。賊徒とドローンの一掃作戦を行い、爆弾を炸裂させた傭兵団が廃墟に入って状況を検分していた。賊徒に襲撃され、奪われた廃墟を取り返すと言う、あまり意味のなさそうな任務ではあったものの、依頼を受けたからにはそれを遂行するだけだ。
そうは思っても、副団長の心の
爆弾の炸裂によって廃墟の真ん中辺りには直径およそ二百メートルくらいの大穴が開いていた。穴の深さは深いところで二十メートルほどありそうだった。まだ所々に煙が上がっている。
賊徒がどうなったかを捜索していた団員たちが戻って来て、副団長に報告した。
「周囲を確認しましたが、生存している賊徒の姿はありません。十人程度の賊徒の死体らしきものが見つかりましたが、会敵時の人数より若干少ないようです。爆発で消し飛んだのかも知れませんが……」
団員の懸念に、副団長は賊徒の数名を取り逃した可能性を考慮した。
「何人かは爆発に巻き込まれる前に離脱した可能性もあるな。取り逃しに関しては今後対策が必要だろう」
「そうですね。
「まあ、ほぼ壊滅させられていれば、しばらくは動けないだろうがな……」
賊徒が他のグループと共闘する事例はなくはない。だが、襲撃を終えた後は必ずと言って良いほど、頭目同士の潰し合いが始まり、負けた方が吸収される。吸収して勢力が大きくなるのは一見いいことではないが、頭目の求心力だけでは組織が成り立たないのも事実で、裏切りによるグループの分裂が起こる。今まで討伐した賊徒の頭目たちを
それに比べ、ドローンの兵装や行動パターンには徐々に変化が見られた。中には進化と言って差し支えがないほどの違いを見せるものも確認されている。地上ドローンの重武装化は最も
地図端末を監視しているオペレータ役の団員が副団長へ状況を伝えた。
「副団長。爆弾の爆破の前に検出したドローンの位置情報と照合した結果、集まったドローンは全て爆弾によって破壊された模様です」
「周囲にドローンの機影はないか?」
「周囲千メートル圏内には、ドローンの探知に反応なしです」
副団長がこの作戦に
「検証はデータを持ち帰って研究者に任せるとして。爆弾による爆発を探知してドローンが集まることはあり得そうか?」
団員は少し思案して、返答した。
「爆発の直後であればその可能性は充分にあります。ただ、その時点で賊徒が既に掃討されて、ターゲットがいないのであれば、引き返して行くでしょう」
「我々が爆発の確認に戻るタイミングが悪いと、集まって来るドローンと
大穴を見下ろして副団長は、もうひとつ大きな問題について思案していた。爆薬の量の調整が難しい。ある程度爆弾に指向性を持たせないと爆風で毎回大穴を開けてしまう。この規模の穴を埋めるのも
それと作戦を遂行するたびにジャミングユニットの貴重な電子基板を失うことになるし、爆薬自体も
「指向性爆薬の調達と、ジャミングユニットの
エンジニアたちの努力の結晶……苦労して再生した電子基板を、爆弾に詰めて破壊するのだ。何とも
「任務の遂行のためだ。悪く思わんでくれ……」
副団長は大穴に再び目を向け、ため息混じりに呟いた。
傭兵団の賊徒とドローン一掃作戦は、
しかし、破壊される間際に極性反転の情報がドローンから発信されていた。受信した情報を元に『システム』はジャミング波極性反転の学習と分析を行い、ある結果に
それを元に、ジャミング波を無効化するコードの記述を開始した。
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