第2話 知らなければよかったと今も思う
お昼までの部活動を終えた私は家庭の事情で持たされていた携帯電話を使い、「部活終わったから着替えて家に行くわ」と
正直面倒ではあったのですが断ったところで二度手間になるだけな気がして、私は
「あれっ、
「俊子。今日って何人でお祭り行くんだっけ」
「六人じゃないの?」
「だよね。じゃあこのアイスの量おかしくない?」
なんて人数の倍以上あるアイスの話をしているうちに、一緒にお祭りに行くグループの出遅れ組三人が揃い、私たちは環奈の家である七階建のマンションへと自転車で向かいました。
私と俊子の家が近所で、俊子の家とコンビニが近所。コンビニから環奈の住むマンションまでは自転車で五、六分という距離です。
そしてマンションに行くためには陸橋の上か下を通る必要があって、自転車で陸橋を登るのが嫌だった私たちはいつも通り陸橋下の道を選び、マンションの方に繋がる線路下の短いトンネルを通る道を進んでいきます……。
「暑さでアイスが溶けてるー。あっ、でも、私んじゃないからいいか!」
「それだとアイスいらないって言うんじゃない?」
「それはダメだ! このアイスに今日の予算の半分使ってる。やっぱ急げ!」
マンションまであと少しというところででした。
ちょうどトンネルが見えるくらいのところで、前から男の子がこちらに歩いてくるのが目に入ったのです。
私はすれ違った男の子は見覚えがあるような気もするし、ないような気もする程度の印象でした。
「……」
ですが俊子は男の子の横を通り過ぎた後も二度三度と振り返って、私たちが来た方向に歩いていく男の子を見ていたのをよく覚えています。
この時に俊子にどうしたのかと聞いていればよかったのでしょうが、私はカゴの中のアイスがとにかく心配でしたし、もう一人も何も言わなかったので特に気にしませんでした。
「あつい……。誰だ七階にエレベーター乗っていったやつ……。エレベーターはやくこい」
マンションへと到着した私たちはすぐにエレベーターを呼び。七階から降りてくるエレベーターを待っている間に私はこう言ったのですが、普段なら何かしら反応してくれる俊子は何も言わず、冷房が効いているエレベーターの中になってようやく口を開きました。
「ねぇ、
「あ、あぁ、そっか。たっくんだ!」
「だよね、そうだよね!」
「やっぱあの子変わってるわ」
私はそこでようやくすれ違った男の子がたっくんという男の子で、見覚えがあった気がしたのが正しかったんだと思いました。
「?」
しかし、もう一人はたっくんがわからないのか反応が悪く、それを見たからか俊子はそれ以上たっくんについて何も言いませんでした。
私も環奈の家に着いてからは本当にアイスの数だけいた人数へのアイス配りと集金や、当時みんなやっていたテレビゲームに参加したりして、そんな事は頭の中から完成に消えていました。
俊子も普通にしていたので再び話が出ることもなかったのです。
そうしてみんなで遊んでいるうちに時刻は夕方になり、環奈の家での遊びはお開きとなって解散。お祭りに向かう私たちは最寄りの駅に向かいます。
今度はマンションの反対側の道から、陸橋の上の道を通り、そのまま真っ直ぐ駅に繋がる方の道を通って……。
「ミカー、帰りの電車って二十一時のやつ?」
「二十時のやつ! 花火最後まで見てたら補導されるからな!?」
「はぁ? じゃあ私たち何しにいくの?」
「オ、マ、エ、が、言い出したんだろうが!」
二駅先に向かう電車を待っていると環奈はそんなことを言い出すし。乗るはずだった電車が一時間経っても来ないことにも苛々していた私は、「電車来ないし、もう解散にするか……」と本気で考えていました。
数日後に控える地元の花火大会の前に二十日のお祭りも行こうと言い出したものの、後は全てノープランのリーダーを私がフォローしてこの日を迎えただけに決定権は私にあったのです。
だけど結局。私が解散を宣言するより前に遅れていた電車が到着し、すでに十八時を過ぎていたのですが私たちはお祭りへと向かいました。
ただ、駅前からの移動と帰りの電車の都合とで出店のある場所まで行くのは断念となり。私たちは駅前をぶらぶらして、帰りの電車の時間まで駅ビルから花火を眺めるだけになってしまいました。
そしてこの裏で
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