30.貴方と一緒ならどこへでも行ける

 イセカイ温泉の出城の出城(??)即ち元の出城を迎賓館として私達は退去し、新たに外郭線辺りに構えた屋敷と温泉で落ち着いていた。

 フラーレン始めとする妻達。決死隊の娘達。レイブ…?クレビーにホーリーにシルディー??ササゲーさんとペディちゃん???

「あったかいのだー!きもちいーのだー!」「うふふ暴れちゃいけませんよ」オオゥ。ちゃんと湯浴み着は着てるな。


「すっごい恥ずかしいんだけどー!」「いーじゃん気持ちいーしー」「ちょっと肌を晒し過ぎてる様ですが…」勇者スキスキ隊は反応それぞれだ。いつもムチムチな格好のシルディがそれを言うのは解せぬ。

 なおレイブは鼻血寸前なので上向いてオデコ冷やし中。


「どうしてこうなった…」「魔導士殿がフラーレン達と温泉で軍議をしようとしたからですよ?」

「ササゲーさん、貴方私にナイスバディを見せたかったり…」「私はイケメン好きですので」「妾もじゃ―!」

「「うわっはっは!」」爆笑すんなスキスキ隊!

「宰相殿は男の真価を理解しておりませぬ!」フラーレン、マジ怒りしないで!

「冗談じゃ!快く思わぬ男と湯を共になぞするものか」え?

「冗談は兎も角」どっちだよ!

「フラーレン、ジェラリー、ライブリー、エンヴォー、イコミャー。無理な使命を与えてしまい、誠に済まなかった。

 エンヴォーの部下たちにも、悪かった。皆無事でよかった」

 湯から立ち上がり、ササゲーさんは妻達に向かって頭を下げた。

「サササ、ササゲー様!そんな畏れ多い!わたわた!」慌てふためくフラーレン。

 決死隊の娘達も平伏してる。溺れるのでやめようね。

「これからの世の中、お前達の様に人族と分け隔てなく話し、笑い、共に生きていける者こそが必要です」


「あの人、凄い力を感じるわ」

「下手したら人族の王より王様らしいかも」

「私の母に似た迫力をお持ちですわ…」

「ああ。四天王や魔王よりも、違う意味で強い!」おお、鼻血収まりそうかレイブ。だが視線はササゲーさんの胸元に向いてるぞレイブー!!

 あ、三人からつねられた。


「魔導士殿。これから異次元の敵とやらと戦われるのか?」

「そうです。異次元については以前お話した通りですが、奴等はどこからでも、どの時代でも、思うように操れる。

 レイブがこの世界に連れて来られたのも、ペディちゃんが魔王の魔力を持ったのも、ガカイヤーが現れたのも全部異次元が好き勝手に世界をいじくった所為です。

 そいつらを叩いて、二度とこんな事を指せない様に脅さない限り、異次元からの介入は続きます」

「気が遠くなるわ…」空を仰ぐササゲーさん。豊かな胸がこぼれそうなんで気を付けて下さい。


「しかし何等かのミスで前魔王敗北後数日でペディちゃんが魔王になり、奴等も慌てています。

 それに、かつての勇者キッダルトが遺した武器もあります。

 私達の代で、奴等異次元人に乗り込んで戦う力はあります!」

「ちょッと待って、キッダルトの武器にそんな力…」ホーリーが言うのを遮って

「そうよ!異次元にカチ込みして魂取ったらぁ!」クレビーが立ちあがって言う!おお、結構ナイスです。

「乗り込むんですか?」ササゲーさんが真剣な眼差しで問いかけ、私が答えようとすると。


「私達も行きます」フラーレン達が言い放った。

「異次元の事はよく解りませんが、下手したら帰って来られない、そう言う所でしょ?」彼女の目は真剣だ。

「いや、必ず帰る」

「ならなおさら、私達を連れて行って下さい!」

「あの武器は勇者達の魔力で動くんだ、君達が手伝える事はない。自ら危険に突っ込む事はないよ」


 だが、フラーレンは

「嫌!貴方がいなかったら嫌よ!私達は貴方が居たから生きてるの!いなかったら死んだも同じよ!

 お願い!もし他の世界を彷徨う事になっても、私達と一緒に居て!」

 泣きながら抱き着いた。


「オッサンあんたね。女心を解ってやんなさいよ」冷たい目をしたクレビーが言う。

「まー好きな女を危険に巻き込みたくないんだろうけどね」更にホーリーが反語的に畳みかける。

 シルディーは…「魔導士殿の心のままに」と呟いた。ある意味一番キツい。 


 ジェラリー達も。

「置いてっちゃったらぁ、アタシ別の男になびいちゃうかもぉ~」

「あなたがそれを言ってもフツーにありそう。私は絶対なびかない」「何よー!」

「何も出来ない訳じゃないわ。回復魔法だって使えるし破壊活動も出来るし!」

「もしもの時に手ぇ足りん時は、役立つかもしれんよー?」

「「「そうですよー!」」」


「ありがとうみんな!でもイコミャー、温泉宿どうするの?」

「臨時休業だわー!」


 あー。もうちとマドーベースとマドーシンクラーについて調べなきゃ。


******


 イセカイ温泉迎賓館にて軍議。

「何で儂を呼ばなんだー!」絶叫するデファンス王。

「お父様…」死んだ魚の様な目で親を見るシルディー。

「待て!助平心じゃない!儂はお前が小さかったころ、一緒に風呂に入ったり、水遊びしたりしたかったんだ!

 可愛いお前が無邪気に笑う笑顔を見たかったんだー!!」

「オッサンはすけべなのじゃー!」ペディちゃんが笑う。「トホホホ…」しょげるデファンス王。

「まあ、ここまで立派に育てて貰ったんだ。いつかは温泉で父親の背中を流してやるのも孝行だよ」と助言。

「魔導士のオッサンもすけべなのじゃー!」「助平ですねえ」やめてペディちゃん、ササゲーさん。

「親子、家族。仲が良い事は大事だぞ?」アッタマーイ王が何か哀愁漂わせていい事を言った。


 呆れた様に笑ってシルディーは言う。

「じゃあ、早く戦いを終わる事と致しましょう!」


 ササゲーさんが続ける。

「同時に、魔国では勇者と魔王が無条件に戦いを始める事を禁じましょう。

 人族の国が魔国に不逞を働いた時はその場を叩き人族に真意を問い質す。魔族も同じ。

 それで埒が明かない時は戦争、で」

「人族、先ずはわが国だけでも同じとすべく動議を図ろう」

「カナリマシも同意しよう。魔族は平和と互助の要だ」

「争いが広まらぬ為の取り決めが肝要かと」「「うむ!」」

 流石優秀な統治者同志、話は早い。お互いの脳裏では凄い利害計算が走り回っているだろうけどね。


「そして今は」

「あのならず者をだな」

「ガカイヤーとやらを捕らえましょうね」

 三者の視点はガカイヤーとエバリが逃亡した敵国、ヒヨリミー王国だ。


******


「ガカイヤー、もう駄目だ!いくらジタバタしても追い詰められるばかりだ!」

 焦ったエバリが下手に出て降伏勧告を言い出した。

「シャラップ!やめラいかー!」ガカイヤーがエバリにビンタを張った。

「オぉーケー、オーケー!」あれ?ジ〇リー伊藤と中〇哲の配役、前回と逆になってない?


******


 カナリマシ南方にヒヨリミー討伐隊が結成されていた。

「キレモン伯爵!」

「やあ魔導士殿!話が急で驚いたでしょう」

 うん。羽化する肝心のシーンがスっ飛んでましたよ。なんちて。

「奴等を追い詰めれば、また貴方の言う『異次元に通じる穴』が現れるでしょう。

 今度新たに発見した王都の武器を使えば、本当の敵、異次元人の元へ突入出来る、これは本当ですか?」

「いや、こっちもまだ調べている段階だが…」


「オッサン!もう目途は付いてんだからね!」鼻息も荒いクレビー。

「頼もしい事言うけど、大丈夫か?」

「ちゃんと調べてあるんだって!オッサンが動かしたタキオンエンジンのお蔭でね!」

 おお、あのクレビーが私に笑顔で応じている。こいつもいい顔をする様になったなあ。

「スケベな面でコッチ見んな!」嫌な顔するなあ。


「信じて良い様ですね?」「ああ、あの子達は優秀だ!」あ、クレビーの奴照れた。

「じゃあ、レイブ、行こうかな?」

「はい!ホーリーとシルディーは魔導士殿達とマドーベーサーへ!クレビーは私と一緒にマドーシンクラーへ!」

 瑳〇哲朗っぽく渋い感じで命令するレイブ。

 私は一同を王都地下のマドーシンクラー作戦指令室へ瞬間移動させ、更にマドーシンクラー付近で発見されたモノレールで私達はデファンス領都を越えてマドーベーサーへ向かった。


******


 並行してキレモン伯はヒヨリミー王国国境へ迫り、国境を護る砦に

「我が国に謀反を行ったエバリ元伯爵及び偽の勇者ガカイヤーを引き渡せ!」と宣言した。

 更に諜報部隊が国境を越え、両者捕縛のため侵入した。


******


「あ、ササゲーさん?あ、はい。ペディちゃんをお願いしますねー」とガールズトークっぽいノリで話しつつ、

「レイブ、お願い!このタキオン加速器からタキオン粒子を動力炉に注入、そして推進エンジンを起動!」

 レイブは加速器に向かい勇者の魔力を込めた、そしてクレビーも!

「タキオンエンジン、始動おー!」クレビーがダミ声で叫ぶ!

 そして『動力システム』と表示されたパネルを押すと…

 神殿一帯の地面が振動する。


******


 神殿跡でボッタクリっぽい商売してたアシヒッパ元王も、彼が養っていた子供達もイセカイ温泉で保護されていた。

「い~湯だねぇ~」「おじちゃん、ここいいとこね~」「そうよ~。ごはんもおいしーよ~」

 ノンビリお湯につかって寛いでいた。他の小さい子は風呂で遊んでいた。

 その時地面が揺れた「あらら大変よ~」王都の方を見ると!


 地面が砕け、その中から何か金属製の巨大な物体が大地を離れ宙に浮かび上がった!

 中央に円形の動力部を設け前後左右に推進部を持った物体…

 それは正に、巨大な鳥の様であった!


「おー!またイセカイマンの仲間が出たか―!」

「あれイセカイマンの仲間なのか?」

「ああ!絶対そうだよ!俺はイセカイマンキ〇ガイなんだ!」

「あんたもか、俺もイセカイマンキ〇ガイでね!」

 イセカイ温泉の観客達はビール飲みながら巨大要塞の出現を昭和の巨〇戦みたいに眺めて楽しんでいた。

「わー、あれがイセカイマンの武器かー。カッコイイなー。あたちも乗りたいなー」

「遊覧船じゃないのよー」元王様と子供達もノンビリ眺めていた。


******


 二重構造のシンクロトロン、その内側がマドーシンクラー下部にあり、継ぎ合わされた金属の隙間から光を放っていた。その中央下部には円筒状の格納部がある。そこにイセカイマン2号ことマドーレムが収納されているのだ!


「この遺跡自体が、巨大なマドーキーみたいな空飛ぶ魔道具だったのか…」

 唖然とするレイブと対照的に、クレビーはモニターに必死に向かっていた。

「よおし!このままマドーベーサーに向かうわよ!」


******


 ヒヨリミー国内では、キレモン伯率いる騎士団が逃げるエバリとガカイヤーを追っていた。

 ガカイヤーはエバリの馬車に魔力を放った!転がり大破する馬車!騎士団はエバリの馬車を取り囲み、ガカイヤーと距離を置いた。そして、ガカイヤーは同行する三人衆をまたしても吸収し、

「武器召喚!今度は4人合体、巨大ガッタイヤーだァ!」

 すると中空に魔法陣が現れ、その内側に異次元に通じる穴が開いた!

 三人はガカイヤーに抱き着き、円陣を組んで回転を始めた!


 だが!


「うおまぶし」出現するイセカイマン!

 中空に開いた穴に向け光線(光る魔石を放ちつつ、空間圧縮で飛んで来る武器を捻り潰す)を放った!

「邪魔すんじゃねえー!」回転する三人を放り投げるガカイヤー、無表情なまま投げ出され、南〇人間大砲宜しく向かってくるかつての聖女達!

 イセカイマンは攻撃を止め、三人を受け止めた。イセカイマンの掌で、少女達は無表情で---しかし、涙を流していた。


「へっへっへ!テメェは甘いんだよ!見ろ!そいつらの魔力を使って生まれる、巨大ガッタイヤー様をよぉ!」

 異世界に開いた穴から、黒い手足と四色の胴当て、四つに分かれた兜を持った、イセカイマンの倍はある巨大な怪人、ガッタイヤーが登場した!


 イセカイマンは魂を失ってもなお涙を流す少女達を地面に降ろし、心の中で怒りの炎を燃やした!


******


「何だあの巨大な黒い巨人は!」

 遠くヒヨリミー国内を映すマドーシンクラーのモニターに、イセカイマンと、その倍はある巨大なガッタイヤーが映し出されていた。

「俺もマドーレムでイセカイマンと戦う!マドーシンクラーの方は、頼むよ!」クレビーに口づけしてレイブは駆けた。

「ほんわあ~」クレビー、一瞬呆ける。が。

「ん!早く駆け付けなくちゃあ!」キリっと表情を正した。闘志満々である。


 レイブは「マスタースイッチオン!オールスイッチオン!マドーレム、サリー、ゴー!」とマドーレムを発進させ、遺跡に向かうマドーシンクラーを後にした。


******


 倍の大きさがあるガッタイヤーの足元を牽制し、イセカイマンは敵を翻弄していた。

「鬱陶しいんだよ!ガキがぁ!」蟻を踏みつぶす様にガッタイヤーはイセカイマンに足を繰り出す、しかしイセカイマンはダッシュで反対側の足を掬い、なぎ倒した!


 倒れ込むガッタイヤー、しかしそこに向かって飛来するもう一人のイセカイマン、マドーレム!

 華麗に空中一回転し、倒れ込むガッタイヤーの頭にキック!

 爆発し、反対側に飛ばされるガッタイヤー!


 着地し、古代な敵に対峙し並び立つ二人のイセカイマン!


 怒り狂うガッタイヤーの攻撃をイセカイマン達が防ぐ一方で、マドーシンクラーは遺跡へ向かう。

 この先に待つのは、巨大ガッタイヤーの暴虐か、イセカイマン達の勝利か?!

 どうする異世界、どうなる異世界!


…では また来週…

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