14.深く深く謎を求めて

 古の勇者が遺した遺跡、それは勇者の魔力で空を飛び巨大怪獣と戦う戦闘機の基地であった。

 その遺跡に迫る、古代から召喚された見境なく暴れる二大怪獣。

 そこにイセカイマンと、遺跡を飛び立った、勇者レイブが操縦する魔導戦闘機マドーキーが立ちはだかった!

 イセカイマンとマドーキーの、新たな戦いが始まった!

 BGMは出撃!〇AFのアップテンポアレンジかワンダバM〇Cワンダバ抜きで!


******


 マドーキーを400年守って来た謎の遺跡、いやこれはもう基地だ。


 早速基地を調査する。全体は白い壁に囲まれ、各所に魔力センサーの様な黒パネルがある。

 私が触っても魔力が無いせいか反応が無い。レイブが触れば、壁は扉となって開く。

 扉から続く廊下を先に進み、今度はシルディーに触ってみて貰うと…反応して開いた。

「昔来た時は何も反応しませんでした。何故今になって…」

「勇者と知り合って、君達は新しい力を得たんじゃないか?さっきレイブが言っていた聖槍や聖杖、聖盾にはそんな力があったんじゃないか?」

「そうよ!あの時私達は、強くて激しい力を得て、敵を倒すのが凄く楽になったのよ!」

「それが勇者とその仲間に与えられた力か…まずはこの基地の全容を把握しよう」

「基地?」「昔の勇者は多分ここに色々な仕掛けを作って魔族と戦う準備をしていたんだ。まだ色々あるかも知れない」

 と、通路の真ん中に柱が、そしてその丁度人の目線あたりに…ディスプレイだこれ。

「じゃあクレビー、ここに手を」「私に命令しないでぶびっ!」シルディーさんが脳天にチョップしてた。

「わかったわよ!」と手を触れるとディスプレイに文字が浮かぶ。「フロアマップ、これを押してくれ」

 すると上層部に「作戦指令室」と…ヤ〇トの第一艦橋かよ!今、君のもとに!


 その作戦指令室に入ると、周辺にコンソールがあり、突き当りに一際大きいモニターが。

 それに向かって入口右に1つ、4つ程様々なディルプレイやスイッチが並んだ席がある。ホントに艦橋…いや、某月面基地?

 異世界モノがSFモノになっちゃったよ。

「これ作った奴と、飲みたかったなあ…」望郷の念に駆られるなあ。だが言語が違う。私の故郷の人間ではないだろう。


「レイブ、右の席に座ってパネルを触ってくれ」すると中央モニターに基地のフロアマップが示された。

 中央に円筒形のランチベイ(発射スペース)、その周囲を囲む様にマドーキーが何機か、別のエリアには「マドーカー」と書かれた何かが、そしてその反対側の一際大きなスペースは「未完成」と表示された。

「まだ何か作られていたみたいね」ホーリーが別の席でモニターを操作するが「第二基地準備未完了」と赤い表示が。

「第二基地ってもしかして神殿かアンタがいた遺跡?」

「いや、あそこには魔族と共通の魔法陣があった。ここを作ったマニアとは違うだろう」「マニア?」

「あ…うむ。ここを作った昔の勇者を、敬意を込めてマニアと呼ぼう」「どういう意味?」「キ〇ガイだ」「敬意無いじゃん!」

「見て、魔導士の…オッサン!」「オッサン?」「どうでもいいわよ!ここに何か日記とか書いてある!」

 ホーリーの席のモニターに、記録データの一覧が階層状に示されていた。


 それは、古(400年くらい前、微妙)の勇者の、孤独に耐え、未来に残した日誌であった。

「何が書いてあるんですの?!」「魔導士殿!」「あー、ちょっと待ってくれ」私はデータを拓く様ホーリーに指示した。


******


 古の勇者キッダルトは、「地球」の技術者だった。そしてやっぱりSFマニアだった。

 色々資格を持っていた様だが中々辛い青春時代を終え、ブラックな状況の中死にかけ、引きこもり、この世界に召喚された。


 愛すべき仲間(みんな美少女)を得、聖剣や仲間達の武器を得て魔王を倒した。その直後、やはり武器は消えた。


 王国に帰還し、厖大な富を与えられた。しかし彼は王国に留まる事無くこの地に逃れた。王国は彼を危険と判断して暗殺を企んだのだ。

 キッダルトは愛すべき仲間(みんな美少女)を守るため、また魔王の再来に備え、自らの技術力と財力をつぎ込んでこの基地と武器を作った。

 彼は勇者としての特殊な魔力を魔法金属のミスリルに通し、仲間にもその魔力の波長を測定し、その魔力にのみ反応する勇者専用の武器を作った。それがこの基地、マドーベーサーとマドーキー、マドーカー、そして主力となる物であったが彼は試行錯誤中に天寿を全うしたのだ。マドーカーってのもあるんだな?戦闘車両かな?


 キッダルトはこの基地は心正しい勇者のみに託すと書いた。科学が進んだ世界にいた彼は、協力な兵器による無差別大量破壊を知っていた。例え勇者の力を持つ者でも、凶悪な殺意、強欲を持つ者にはこの基地を動かす事は出来ないとしている。

 人を大切にし、仲間を慈しむ『正しい心』の持ち主のみが動かす事が出来るとしている。

 そして最後に。

「いつの日か人族と魔族の戦いが終り、

 -互いに譲り合い共に生きる日が来る事を-

 -自分の様に異世界から連れ出される者が居なくなる事を-

 -この世に戦いや異世界転移をいたずらに齎す者が居なくなる事を-

 何より我が子達が幸せに生きていける世の中が末永く続く事を、心から祈る」

 そう締めくくられていた。


******


「子供を成したんだ、愛した娘達と。その子達が幸せに暮らせたのなら本望だろうな」

 時空を自在に操作出来る私には、この基地から離れた城で育ち、街で学び、友を得、愛する人と出会い、家族に囲まれて生涯を全うしたキッダルトの子孫が見えた。それは…

「うわっ!」

 後ろでクレビー達3人がスゲー泣いていた!私が読み上げたキッダルトの日誌を聞いてボロ泣きしてた!

「うわーん!勇者キッダルト可哀想ー!」

「故郷へも帰れず王国からも裏切られ、さぞご無念だった事でしょう!ううー!」

「こっ、こんなの理不尽よっ!うわああん!」

「ちょ、ちょっと待ってみんな。古の勇者は仲間の娘達と子供が出来て幸せだったんじゃないかな?」

「うわー」「うああ」「うう…」一斉に泣き止んだ。

「…キッダルトは3人の仲間の娘とこの地で幸福に結婚して、子を産み、育て、そして死んで行ったぞ?その子達も同じだ」

「「「レイブー!」」さま!」「うわー!」感動台無しの女達欲望塗れの戦の幕は切ーって落とされたー!


「じゃなくて!その子供達の末裔がだな!」

「恐らく私達デファンス家なのでしょう」シルディーの言う通りだ。

「え?って事は私達も?」「あー、クレビーもホーリーも赤の他人だよ」「何適当言ってんのよー!」

「シルディーが古の勇者の末裔だったのも、この基地の存在を知っていたのも偶然だ。いや、キッダルトの怨念が運命の糸を紡いだのかも知れない」

「何でそう言い切れるのよー!どうせ出鱈目でしょうがー!」

「キッダルトの後に現れた勇者と、このデファンス領の繋がりが無い。他の勇者は、凱旋した後の消息が上手くぼかされているが、皆油断したところを殺されたか適当な暮らしで満足させられて歴史から消えたかだ」

「嘘ばっかり!」

「いいえ!レイブも命こそ狙われませんでしたが二束三文で王都を追われるところでした。私は魔導士殿の言う事の信憑性が高いと考えます」とシルディーが賛同してくれた。

「私もそう思う。キッダルトの後の勇者とのつながりもなさそうだし」ホーリーも補足する。

「多分キッダルトの後に現れた勇者には、彼の言っていた『正しい心』にそぐわない何かがあったのだろう。

 もしかしたらデファンス家に記録があるのかもね」


「救国の英雄を暗殺しようだなんて、人族もコスイのね」

「魔族も同じ。四天王が生きていたら内輪の戦いも起きた筈」

「わかるわー」

「私もご主人様と同じ、こんな場所でのんびり愛する人や子供達と暮らす方が幸せだったんじゃないかなーって思うわ。あんな貴族の欲望めいた所よりも」遠い目で婚約破棄の事でも思い出したのだろうかフラーレン。

「魔族の人も、辛い目に遭ったんだなあ」「そうよ?」「今は、魔導士殿と一緒にいてどうなんですか?」

 お?ビビリ君が自分から大人の女性に声を掛けたぞ?!

 フラーレンは微笑んでレイブに答えた。

「幸せよぉ?死ぬしかないところを助けてもらって、自由に生きて、人族相手に商売したり駆け引きしたり、宿敵だったあなた達と謎の中を探ったり。こんな面白い事滅多にないわ!」頷くライブリーにエンヴォー。


「そうですか!」レイブも笑顔で応える。

「だから好きな女の子のために必死になりなさい!さっきアレに乗って戦ってたみたいにね!」

「解りました!」いい笑顔だ。

「クレビー!ホーリー!シルディー!俺は君達を護る!そして…」

「「「そして?!」」」目を輝かせるスキスキ隊

「そ、し…て。」急速に萎むダメ勇者、の背中を引っぱたくジェラリー!レイブの瞳に光が宿る!

「!そして愛する!」「「「ほわ~!!」」」スキスキ隊、レイブに群がる!色々アレな事になってる!


「うわぁ~、見ちゃいられないわ~」「焚きつけたのアンタでしょ?」「いえ、とても素晴らしい励ましでした…」妻達4人も笑顔だ。

「この様子をキッダルトや家族達が見ていたら、きっと笑顔になってくれるだろうなあ…」そう思わずにいられなかった。


******


 色々調べ、遺跡には自動防御システムがあり、モノレールの駅に通報できる事が解った。

 私達は一旦領城に戻り、辺境伯へ報告する事にした。

 帰りのモノレールはさしずめ勇者ハーレム新婚旅行みたいなイチャイチャ騒ぎだった。空き缶を沢山結んで走らせたい様な感じだった。アレって実際見た事ないな。最後に見たのTVの中でも「東〇大地震M8.1」くらいだったかな?


 そして、ダンジョンの先の埋もれていた軌条を「チェースっ!」した先は…ラ・ディファンス領城の地下だった!

 モノレールの駅から続く階段は…「ただいま!」「ぬぉわ!」「いやん!」辺境伯の私室に繋がっていた!

 うむ。辺境伯とご夫人のイチャイチャは見なかったことにしよう。


 気を取り直して大広間にて報告を受けたデファンス辺境伯は遺跡の伝承の概略を知っていたのか、静かに頷き、考え込んだ。

 そしてレイブに向かって

「我が祖先、古の勇者は共に戦った娘達を愛し、守り通したそうだな。お前にその覚悟はあるのか?」

「はい!命を懸けて守ります!辺境伯の御令嬢、シルディー様も!賢者クレビー、聖女ホーリーも共に愛し、守り続けます!辺境伯に負けぬ様に!」

「一言多いよ!してその言葉、決して違うなよ?!」「はっ!」

 単純な、しかし決意を込めた約束が男と男の間で交わされた。

「歴史は廻った。古の勇者様もお喜びになるであろう…」

 居合わせた辺境伯の臣下達の間にも、深い感慨が感じられた。

 本当は、自分の娘が正妻となるか側室となるか等、色々な問題もあるのだろう。

 だが辺境伯は、己が娘の愛した男の決意を、先ず第一に認めたのだ。


******


 辺境伯領都の夜は賑わっていた。領主令嬢が勇者と共に帰って来たのだ。

 新たな魔王や王都を破壊した怪獣の噂が心配の種であったが、それらが謎の巨人に退けられ、しかも今日は勇者自らも怪獣を倒したという噂が瞬く間に広がり、祝杯を挙げる人が多かった。

 その町の灯りを眺め、勇者と彼を愛する3人の娘、そして私達は、遺跡に眠る勇者と魔王の謎、そして果てしなく続けられた人族と魔族の戦いの秘密に迫る決意を新たにした。


 戦いを鎮め、平和な時を作る為に、戦え自分!戦えイセカイマン!そして勇者達!


******


 一方、戦いを途中で古代怪獣に任せて魔王城へ戻った宰相ササゲー。

 私は過去に戻り魔王城の様子を覗き見た。

 その玉座で彼女が見た物は…激しく絶叫し、のたうつのじゃロリ魔王だった!


「いだいー!いだだ!いだだ!痛いのじゃあー!!」

 魔王は頭を抱え転げまわっていた!その様子は極めて深刻だった。

「魔王様ー!一体、一体何が起きたのだ!」

「いだい!いだい!頭が割れるのじゃ!助けて!たすけてー!いだだだー!」

 宰相ササゲーさんが彼女のあまりの苦しそうな姿に狼狽えていた。

「うわーん!いだい!いだいよー!」

 のじゃロリ新魔王。魔王とは言う物の、見たままの10歳児だ。謎の激痛に襲われた姿は、子供そのものだった。

「誰か!ああー!魔王様!ペディちゃん!」

 ササゲーさんが魔王を抱きしめた。

 一体魔王に何が起きたのか、宰相ササゲーは彼女をどうするのか?!


…では また明後日…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る