4.異世界の中の神秘の森ヘ

 王都の宮殿に出現した地底怪獣、マッハ怪獣、再利用怪獣!

 三大怪獣に取り囲まれたイセカイマン、ピンチ!


 眼鏡っ娘がマッハ怪獣の肩に飛び乗った、その姿は、やっぱり布面積が超少ない痴女服!眼鏡なのに痴女服!属性追加ァ!

「貴方達、イセカイマンを倒すのよ!」

 彼女が笛を吹くと、地底怪獣が飛び掛かる!それを交わすと再利用怪獣がタンクの様な尻尾を振るう!それを飛んで躱すとマッハ怪獣が飛んで来る!

 眼鏡っ娘の笛に合わせ、抜群の間合いで怪獣達が連携攻撃を仕掛けて来る。さあどうしたものか。


「勇者ー!あいつらを何とかしろー!報酬払わぬぞー!」

「すみません国王様!俺の力では1匹でも叶わなかった。しかもそれが3匹!」

「まってレイブ!あの魔族をやっつけるのよ!きっとあいつがあの魔竜を操ってるのよ!」

「そうか!ありがとうクレビー!」「きゃっ!褒められちゃった!」「あー、いいなー」「羨望!」

 何かコミカルにえげつない事話してるな勇者パーティー。

 と、早速放たれた火球がマッハ怪獣の肩に当たった!

 眼鏡っ娘が悲鳴と共に飛ばされた!私は宙を飛び彼女を受け止めた!


 私の手の上で彼女は呻いていた。

 そして三大怪獣は動きを止めた。

「イセカイマン!今よー!」あの矢鱈突っかかって来る賢者が私に命令してきやがる。テメェ何様だ?

 幸い指揮者を失った怪獣は大人しくなっている。やっつけるなら今か。

「止めて…」

 小さい声が聞こえた。

「お願い…止めて…」手の上の眼鏡っ娘が力を振り絞って私に頼んでいる。

 そりゃあのクソ生意気な女、しかも他人の彼女の頼みと、メガネ巨乳の頼みだったら後者一択!

 私は彼女に向かって頷き、全身を光る魔石粉で覆って姿を消した。テレポーテーションっぽく見えた、かな?


「イセカイマンが消えた!」

「彼は味方じゃなかったのか?」「なんできえちゃうのぉ~?」「遺憾!遺憾!」勇者パーティーは不満を唱える。知った事かっての。


 巨大な怪獣たちは、いつしか寝入ってしまった。


******


 眼鏡っ娘が目を覚ました。既に夜だ。

 私は焚火を前に、肉を焼き、酒を飲んでいる。美女の寝姿を肴に。


「何でアカデミーの英俊がご主人様と一緒にいるのよ~」ヒソヒソとジェラリー。

「知らんがな!どうせ新魔王様の命令で無茶させられて倒されたんでしょうよ!」更にヒソヒソとフラーレン。

「君達知り合いなの?」

「知り合ってなんて無いわよ!あの子は魔界の英俊のライブリー!平民のくせして魔界で恐れられた魔獣使いなのよ!下手したら四天王とも戦えるんじゃないかって天才よ!」

「その天才をやっつけたって…やっぱりご主人様あぁ~スキスキ大好き~」

「こらあ淫乱ヤンデレピンク!ご主人様はわ・た・し・の!ご主人様よ!」

「おっとそのライブリーさんがお目覚めの様だ」「「ヒィッ!」」


「大丈夫。少し前から起きていたの。…どうやら私は負けた様ね。あの子達は?」

「寝てるよ。あの場所で三匹とも」「倒さなかったの?」「君が頼んだんだよ?殺さないでって」

「え?…」

「色々事情があるんだろう。大人しく寝ている分には戦う理由はない。君が引き上げさせれば王国も勇者も手出しできないだろう?」

「な、何で?」

「君は理由もなく戦ったり、他人を傷つける人じゃない。理不尽に捕らえられた亜人の身代わりを申し出たじゃないか。君は心の優しい人だ、私はそう信じる」

 心なしか、眼鏡っ娘のライブリーさんが赤くなった気がする。焚火のせいじゃないだろう。


「「ガビーン!!」」後ろで二人がハモってる。

「あ!あ!あの英俊にしてクイーン朴念仁のライブリーがメスの顔を!」

「四天王から妾にすると言われたのを袖にした男ギライのライブリーが御屋形様に色目を!」

「な、何それ!色目とかメスの顔とか、そんなんじゃないから!」更にツンデレ属性キター!もう属性天元突破!

 などと逸る心を抑えつつ、私は彼女に尋ねた。

「君が三匹も巨大な魔物を操るのも、魔力の力じゃなくて君の心の優しさの力なんじゃないか?」

 驚いたライブリー。そして俯いて答えた。


「あの子達、いいえそれだけじゃなくて、私は大きすぎて居場所がない巨竜達の世話を志願したの」

「何でよ?あんただったら四天王の妾になってウハウハ出来たでしょうよ?悔しいなー!」好きでもない四天王のしかも妾って、それウハウハなのかジェラリー?

「あんたん家脳筋の武家だったわね。色々やっかみとか大変だったのかしら?」

「御明察。学問だけ出来た私を父は蔑み、兄達はいじめたわ。それが四天王から無理な誘いがかかる様になったら手の平を返したわ。母は父の機嫌を伺うばっかり。

 私はそんな男たちも、こびへつらう女達も嫌だった。あの子達と静かに魔界の隅っこ暮らしをしたかった。

 でも、戦いの声がかかってしまった…」ライブリーの目に涙が浮かんだ。


「よし出発!」「「「え?」」」

「今から三大怪獣脱出作戦を決行する!幸い今は夜で勇者一行もダメダメ王国のヘナチョコ騎士共も酒飲んで寝てるだろう。今の内に三匹を王都から連れ出そう」

「無理です。愚かな人間の手を逃れても新魔王様の手の者があの子達を再び戦いに向かわせるでしょう!」

「行先は魔界じゃないさ」「「「え?」」」

「遥かな土地が、故郷さ。第二のね」「「「???」」」


******


 もう城壁が用を成していない王都。ホイホイと侵入して三大怪獣が眠る離宮へ。

「何で貴方達も来るの?危険よ?」

「何でって、え~何でかな?」アホみたいなジェラリー。

「御主人様のお役に立つなら、どこでも行くわよ!」愛が重いフラーレン。どっちも綺麗で可愛いのだが重い。

「ありがとうね」笑顔のライブリー。

 ハア。隣で見てるだけで癒される。と、私と目が合うとあからさまに嫌そ~な目つき。

「まあアレだ。早くズラかろう」ライブリーはまた胸の谷間から笛を取り出して吹く。

 子守歌みたいな優しいメロディだ。


 目を覚ました三大怪獣は、声も上げずにライブリーを見て、ゆっくりと歩き出した。

「凄いわ。あんな巨竜を三匹も。しかも大人しく。この娘に喧嘩売ったら死ぬわ…」フラーレンが青い顔してる。褐色肌だけど。

「あんだけ大人しいと可愛いかもねぇ」呑気だなあジェラリー。でもその気持ち、解らんでもない。

 このまま、ゆっくりゆっくり。


 爆発が起きた!火魔法が飛んできた!

 グョキェグォエ!

 ブギャゴオオ!

 ケンゴゲッゴゲンゴギェエ!

 三匹が暴れ出した!

 飛んできた方には勇者達!こんのバカチンがあ!

「糞勇者。お前は私を怒らせたな?」

「恩人殿。何故魔族の味方をする?!」

「馬鹿に何言っても馬鹿だから理解できまい!

 お前の今の攻撃に、この事態を悪化させる以外の何の意味があるってんだ?!」

 駄目だ。コイツは馬鹿だ。正義なんかじゃない。

 状況を見極め、冷静に判断し、犠牲や被害を最小限に見積もる頭脳が無い奴に正義を語る資格は無い。

 ただの戦争大好き気違いだ!


 暴れる怪獣たちは炎を吐いて離宮を破壊した。炎の中に崩れる離宮。

 そこに愚かにも繰り出される勇者スキスキ娘の攻撃。


「恩人殿!魔族の勝手を許す事など出来ない!」

「だから立場じゃなくて状況を見ろ馬鹿!今コイツラは王都から出てくところだっただろ!どう見ても!」

「また新しい戦いの準備でも始めるんじゃない!」

「だったら王都の外までついてってそこで見極めろって馬鹿が!」

「見敵必殺は戦いの基本だ!」

「そこで多くの人が踏みつぶされるのが戦いの基本か?お前は人が死ぬのが大好きなんだな!」

「俺はそんな事言ってない!」

「言ってないけどやってんだ馬鹿!」

「違う!違うんだ!」

「ブサ中年!あんたにみたいな悪人にはレイブの正義なんてわかる筈無いわよ!」

「ああ解りたくないね!無駄な戦いを引き起こして大勢の人を巻き添えにして勝手に正義ぶってる餓鬼なんて死ねばいいさ!貴様等クソ女達も死ねばいい!」

「ひっどーい!魔族の女と一緒に死ねえ!」「待て!短慮だ!」色々大きい戦士の子が賢者を止めにかかったが、別の角度からクネクネ聖女の魔法が飛んできた!


 だがそれははじけ飛んだ。ライブリーが魔力で弾き返した!

 彼女は悲し気に微笑んで私に言った。

「有難う、でもやっぱり駄目だったわね?」


 頭に来た。

「駄目なんて言葉は最後まで取って置け!」私は怪獣に向かって走った。

 その時、地底怪獣の吐いた炎が直撃した!

「恩人殿ー!」「「ご主人様ー!」」「ザマーミロー!」

 勇者の、魔族娘の声が聞こえた!一部心無い賢者の声も聞こえたが気にしない。

 爆発の瞬間は、彼等彼女等からは見えなかった!屋〇有作!

 私は異空間から鎧を転送させ瞬時に装着し、魔石発行のエフェクトもスっ飛ばして巨大化して瞬間移動した。


「きゃー!イセカイマンだわ!」何故か歓喜する賢者クレビー。この女ェ。

「「「エ"ー?」」」魔族娘ズもジト目でクレビーを見下げ果てている。


 私は怪獣たちの前に仁王立ちした。体当たりしてくる怪獣達、だが敢えて技を喰らい、堪えた。

 二撃、三撃、怪獣達の攻撃は続く。しかし怯まない。怯むことは許されない。

 それは怪獣達を救う事にも、王都の人々を守る事にも、眼鏡っ娘の願いを叶う事にもならないのだ!

 怪獣は再び動きを止める。私はライブリーに向かい、頷く。

 ライブリーも答え、笛を吹く。


「魔族め許さん!」「許さないのはこっちよ!」

 勇者の放つ火魔法をフラーレンが…受け止めた!

「あんたバカ?」怒鳴るジェラリーが攻撃を仕掛けようと魔力を貯める!

「今は堪える時よ!戦う時じゃない!」フラーレンがジェラリーを止めた。

「まったくもう!不愉快ねぇ!」

 賢者クレビー達の魔法をフラーレンがジェラリーが食い止め、ライブリーの笛の音を護る。

「停戦!停戦!」クレビーとホーリーの肩を掴むシルディー。

「見なさいよ!戦いなんてすぐ終わるのよ!」フラーレンの声に上を見る勇者パーティー。


 大人しくなった怪獣達。イセカイマンの差し出した手の上にライブリーが乗った。

 イセカイマンの歩みに合わせ、怪獣達が王都の外へ歩き出す。

 笛の音が優しく怪獣達を導く。まるで戦って死んだ怪獣や魔族へのレクイエムの様に優しいメロディが。

 そして怪獣達は去って行った。


******


 王都の郊外には、新魔王率いる巨竜遣い立が待機していた。

「どうもあの娘は忠誠心が感じられんと思ったらやっぱりこうなったかー。皆の者巨竜を奪うのじゃ!」

 しかし、イセカイマンは角竜を持ち上げた。

「何じゃ?何するつもりじゃ?」

「シュワーっ!」イセカイマンは空へ飛びあがり、角竜を運んで飛び去った。

 マッハ怪獣が後に続く。地底怪獣は地面に潜って消えた。

「な、何なのじゃああー!」のじゃロリ新魔王は三匹の巨竜を失って終わった。チャンチャン。


 怪獣達は、異世界の人族も魔族も未だ知らない、遥か遠くの巨大な島へ運ばれた。実り豊かな樹々の繁るこの島で、彼らは暮らすのだ。

「もう戦いなんて無いのよ。貴方達はここで静かに暮らしてね。私は、まだやらなきゃならない事があるの」

 元の大陸ではまだ登っていない朝日がイセカイマンと肩の上ライブリーを照らした。ライブリーは朝日に輝く涙を浮かべ、怪獣達に別れを告げた。


******


 テントの中では三人の魔娘が仲良く寝ている。目が覚めたら賑やかになるだろうか。

 フラーレンもジェラリーもいい子だった。頑張ってくれた。よかった。

 ライブリーとも仲良くやっていけるだろう。

 しかしなんだ。美女三人の寝姿、眼福だ。明日は温泉でも掘って更なる眼福を目指すか。いい話台無しだなあ。

 よし、ちょっと飲みに行くか。


******


「ウィ~ヒック、俺は駄目な奴なんだー!」

 人質の子供宇宙人をス〇シウム光線で撃っちゃったか?ぼうやー!してしまったか?

 酒場では勇者が管巻いてた。

「駄目な奴はあの中年デブオヤジよ!レイブは何も悪くないわ!」

「恩人殿が言う通り、俺はただあの人の邪魔をして騒ぎを大きくしただけじゃないか!」

「きっとあの中年デブハゲオヤジはきっと悪い事を企んでるのよ!次は魔竜が10匹に増えて攻めて来るわ!」

「酷い言われ様だな」私はジョッキを賢者の頭の上にボンと乗っけた。

「恩人殿ー!!」「何すんのよ中年キモデブハゲオヤジー!」「ハゲとらんわ!」

「あんた何しに来たのよ!」

「酒を頂きに。怪獣もいなくなった事だしね。まあ若者よ、今は悩め、そして足掻け」と、二杯目を頼んだ。

 うむ。またビールも造るか、エールだけじゃなくてピルスを。あと冷蔵庫も。


「俺は間違った事をしてきたのか~」

「最初の内は仕方ない、魔王軍もイケイケで攻めて来たからな。お前は一度は人類を護ったんだ」

「じゃあなんで恩人殿はー!魔族をー!守るんですかー!ナジェマモルンディスカー!」

 どっかの仮〇ライダー並みに呂律が怪しくなってきた。

「何故戦うか、何故また魔王が忽然と現れたのか。どうしたら勝てるのか、犠牲を少なくできるのか。敵を倒すだけじゃなくて視野を広く持てって事だ」

「中年は説教臭いのよ!何をどうしたらいいって言うのよ!」「抽象的ぃ~?」

「それを君達が探すんだ。他人から言われただけの正解に何も意味はないさ。あ、ワイン一丁。」

「軽っ!」「しょせんオッサンのお説教よぉ~」「勝利…条件?」

 どうもこのおっきい娘はただおっきいだけじゃないな。色々考えている様だ。勇者君はもう寝てるし。後の二人は知らん。

 うむ。ワイナリーもまた作るか。

 この世界での生活も長くなりそうだ!


**来週に続く**

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る