3.やつら怪獣部隊 出てこい出てこい

3.やつら怪獣部隊 出てこい出てこい


 月が二つ輝き、遥か南に二つの輪が巡るこの夜空。

 疲れ果てたのかフラーレンはテントのベッドで眠っていた。

 私の腕に抱かれたこの魔娘2もベッドに横にした。私は外にハンモックを吊るして寝ようか。

 前の世界でキャンプした時、子供達がハンモック大好きだったなあ、私の子供も好きだったなあ等と前の世界を思い出しつつ、前の世界で醸した日本酒をちびちび遣りながら、夜を過ごした。

 時間を自在に行き来出来、死ぬ事も無いに睡眠も飲食も不要だ。私は寝ずにいても、飲まず喰わずでも死なない、いや死ねないのだ。

 なので敵が来る危険がある夜は、ひたすらチビチビやりながら夜を過ごす。来るか来ないかは予測できるけど、それが癖になってしまった。


 敵はもう来ないと思い、寝入った。次の朝。

「キェ~~~~!!」絶叫で叩き起こされた。

「この泥棒猫ーー!」うむ。泥棒猫って本当に言う人、凄く久々に見た。

「なにさこの寝取られヘナチョコ女!」この世界でもヘナチョコって言うんだ。

 格闘が始まったみたいだ。止めに行くか、もう少し待つか。待とう。

 待った結果、布面積の少ない二人の姿は大変な事になったんで、チョップ一閃!「服を直しなさい」

 朝日が直線状に光るお蔭で色々見えなくてよかったね。


 凄い顔でにらみ合う二人。

「よくもおめおめと生きてられたもんね!あのフニャチンおぼっちゃま共々討ち死にしちまえばよかったのよ!」

「あんたこそ魔竜もロクに扱えないでこんなところでイビキかいて!」「流石にイビキはかいてなかったぞ?」「うるさいわね!」

「はん!あんただって結局負けた癖に!私のご主人様にね!」「はぁ?」

「ゴ・シュ・ジ・ン・サ・マ!彼こそ私の本当の婚約者!ご主人様よ!」

「こんな冴えないヒト族がぁ?」「あんたの目はホンット節穴ねえ!だからあんなフニャチン横取りして喜んでんのよ!」「何よこんな加齢臭親父…え?あれ?」何が起きた?

「ねえフラーレン?何で私が君の御主人様なの?」

「何を言ってるのよぉ。あんな巨大で逞しいモノ見せつけられたらぁ、メロメロよぉ?」え?魔族って私がイセカイマンってバレテーラ?それと言い方ァ!

「魔族の女はね、強い者に惹かれるの。でも、優しさがあったらもっと惹かれちゃうのよぉ?」

「そ、そうよ、コイツよ!私の僕を倒しちゃった奴う!でも強くておおきいのぉ!」ピンク髪が私に発情した?お前も言い方ァ!!

「近寄んなクソジェラリー!ご主人様が汚れるー!」ピンク髪はジェラリーって言うのか。嗚呼またくんずほぐれつに。

朝の光が再び直線状に強まる!


「あのさあ。戦っても勝てないでしょうが君」

「うわーん!」あっさり認めやがったピンク髪。

「私はフラーレンと旅に出る。彼女がやりたいことを探して、行ったことが無い土地へ行って、美味い物食べて美味い酒飲んで、色々経験するんだ」

「色々経験ですってえ?!あんな経験やこんな経験!ひと夏の経験なんかしちゃったりなんかしちゃったりてこのチョンチョンがあ!」広〇太一郎かな?

「あたしも連れてけー!」「「え"?」」

「もう魔貴族とか令嬢とかやだー!あの巨竜使えば勇者なんかひとひねりだからさ!からよ!からね?てな事言われちゃってその気になってやってみりゃ!ハイそれまでよ!何よこれ!」

「フン!私の知ったこっちゃないわよ、せいぜい私のご主人様に土下座でも土下寝でもして詫びる事ね」

「わだじもごじゅじんざまのドレイになりまずー!!づれでっでー!!」土下寝した!

「とりあえず朝飯にしようよね?」

「「うまうま」」


 ただのベーコンエッグトーストだけど偉大だ.美食は世界を平和にするんだ。

「あ~魔界にない新食感~!」

「外で食べる食事って新鮮~!」お?この娘達中々いい事言うなあ。

「旅に出りゃあ色々狩った獣を料理して美味い物と美味い酒飲んで、そして温泉でのんびりして。この世は天国だぞ!」

「「天国イヤ」」え?


「だって天国って魔族にとって禁忌よぉ?」そうなんだフラーレン。

「天国に意識はありますか?!」カーッ!!キハダの響きが脳内に響き、ジェラリーが突然仁王立ちした!

「もし意識と言う物が時間と空間に関する意思とすればそれは無い!勿論快楽の意識も無い!」脳裏に冬〇透のバイオリンの独奏曲が流れて来そうだ。

「ジェラリー君。それが君の行動の原理なのか?」

「そうです!天国がなければ地獄もない!あるのはこの現実だけやが!この様に捕らえられた私の現実には掟の一切は成立しない!なぜなら」

「うるせえこのエロガキ!」フラーレンがラ〇ダーキックかました!よかった危うく新幹線に飛び込むところだったよ。この世界に新幹線あるか知らんが。

「まあ君達の倫理観と人間つうかこの世界の倫理観が違うのはよく解った」

「花を~盗んだ~若~者…」「「止めい!」」

 こいつ精神病んでるな。ピンクはヤンデレとはよく言ったものだ。

「まあのんびり行くさ。ついてきたけりゃついて来い。だが何となく戦いの日々になりそーな気がする。敵は勇者か新しい魔王か。それでも来るか?」

 二人は黙った。


******


 ちょっとピンクヤンデレのジェラリーが言っていた新魔王というのが気になって、彼女達がやって来た道を遡って魔族の領土に建物探訪すると…

 ほ、ほ~。これが魔王城。トップライトというより天井ナッシングな解放感。これ勇者さんが!ぅ解りましたぁ~。


「うむ、やはりそうか!我が目論見はドンピシャリだったのじゃ!」おお!絵に描いたようなのじゃロリ魔王様!

 だが魔王と言うには魔力…私にはサーモグラフィーで温度を感知するみたいに魔力が見えるのだが、周りのムチムチ魔族女達より遥かに…低い。


「魔王様。私どもは憎き勇者の弱点を捕らえました」「おお!してその弱点とは?」

「勇者は巨大化できませぬ」そうなのか。そらそうだろ普通。

「よって巨大魔竜を勇者と戦わせれば」「じゃが無様に破れたのう?」のじゃロリ様お怒りだ!

「あの訳の分からぬ巨大騎士」「イセカイマンじゃと」「は?」

「ヒト族共があの巨人をイセカイマンとよんでおるそうな」「なんと戯けた名前」

 自分で名乗ってないよ?あのクレバーじゃないクレビーが言っただけだからね?

「しかしその戯けたイセカイマンとやらを勇者から遠ざけてしまえば済む話。

 次はマンチェスター理論に従って三体の巨竜を勇者に向かわせます」この世界にもマンチェスターいたんだ。

「三体とな。それだけの数を操れる者がおるのか?」

「身分は低いものの優れた者がおりました」

「そいつが前魔王イケイケだったころにおれば勝っておったのにのう」

「前魔王様は等身大バトル大好きッ子でしたので」バカじゃん?

「よし!その者にヒト共の王都を襲わせるのじゃあ!かっかっかー!」こののじゃロリ新魔王、可愛い。だが許さん。


******


 その頃王都では。

「魔物をブチコロセー!ついでにあのデカイ奴もブチコロセー!」こちらも解放感!を遥か彼方に通り越し、瓦礫の山と化した王城の真ん中で、国王が僅かな貴族を前にキレまくっている。

 いの一番に逃げまくった騎士達が「ハッ!」としれっと恭しく敬礼してるがその数も僅かだ。大半はバツが悪いのと王都がボロボロなので「故郷にでも帰ったんだろう」。

 王都を出た騎士達は低級な魔物を狩った。それならまだいいが、動物の能力や外貌を受け継いだ亜人を捕らえて「こいつは魔族だ!」と点数稼ぎとばかりに王都へ連行している。さあて私の出番か?


「お止めなさい!」逃げ恥騎士達と亜人達の間に一人の女性が立ちはだかる。その頭には…魔族の象徴たる角。

 褐色に光る肌に長い黒髪、豊満な体付き、そして理知的な眼鏡の美女。う~ん、属性盛り盛り。

「この人達は亜人です。魔族ではありません。魔族を捕らえるのなら私を捕らえ、この人達を」

「うるせえ!テメェも逮捕だぁ!」捕まった。しかし彼女は動じない。どうやら何やらお考えがあるみたいだ。

 なので私は捕らえた者達、特に女性陣にいかがわしい事をしようとする奴におしおきをした。

「うわ蜂に刺された!」「ぶべ!石に躓いて顔面投地!」「靴の中に石ころが!」「豆腐の角に頭ぶつけた!」


 瓦礫と化した王城に替わって王の住まいとなった離宮。

 王城の様に聳える尖塔は無いが、三階建てで細部に装飾が施され、中庭を囲んでコの字型に連なる建物、その中央のドーム状の屋根は王家の財力を誇示する迫力があった。


 そんな豪華な離宮に辿り着いた騎士達は…何故か騎士というより落ち武者みたいになっていた。

「ききき貴様等は明日王の御前で火あぶりにしてやるからな!」「折角アレコレしてやろうかと思ったのにー!」「足が痛ぇー!」「鼻が折れたー!」ザマァカンカン何とかの屁!ザマァカンカンとか桜〇智以来聞いた事ないな。


******


 何か八つ当たりみたいな処刑劇の生贄にされた亜人さん達。彼らの牢屋に私は陣中見舞いを配った。

「明日助けますんで暫く茶番に付き合って下さいね~」と夕食を配った。何か皆唖然としていた。

「おいしー」猫亜人の子供がサンドイッチをほおばる。可愛い。この子の親も、ようやく安心した様に食事を摂り始めた。


 そして。

「君は予定通り巨竜を呼んでいいですよ」と眼鏡っ子魔族に食事を配った。流石に彼女は驚いた。

「何故知って…」「私は時間と空間を自由に操れるので、美しい貴女が何をするのかも解るのです」

 そう言うと何か嫌な顔された。気障な文句はあれだな「但しイケメンに限る」って奴だ。

「まあ思いっきりやっちゃって下さい」

「この街に住む人間たちも殺しますよ?それに戦に出るであろう勇者達も。貴方はそれでも私を殺さないのですか?」

「この王城で暴れる分にはいいですよ。戦いを覚悟している勇者達とも存分におやんなさい。

 しかし人々が住んでいる街に出る前に、巨竜は倒す。ここに捕らわれた人も、街に住む罪の無い人達も死ぬべきじゃあ無い」

「私にとっては魔族以外は死ぬべき罪人です!」

 眼鏡っ子は私を睨んだ。

「この戦いを始めたのはどちらか、それはもう遥か昔の事です。しかし私達は多くを失いました。特に勇者の手で!」

「う~んその辺言い出すとどちらも納得できる結論が無いんだけど」

「貴方にはそれが解るとでも言うのですか?」

「私はここに昨日来たばっかりで今調べてる最中なんですよ」

「そうですか…ではここを去って下さい」「ダメ」「巻き添えを食いますよ?」

「私は貴方を助けたい。貴方はこんな事で戦ったり傷つくべきじゃない!」

 私は彼女の美しい瞳を見つめた。


「目がイヤらしいですよ?」

 ダメだった。

「でもお気遣いはありがとう。私は私の正義の為に戦います」「そうですか。では私は貴方を助けるために」

「それはイヤ」「さいでっか。ほなバイナラ」私はその場から消えた。

「時間と空間の操作…無敵ね」眼鏡の奥の美しい瞳が光った。

 そうです無敵は素敵です。


******


 翌朝、中庭の処刑台に並べられた亜人達、そして眼鏡っ子魔族。

 そして残酷ショーを楽しもうと建物中央ドームのバルコニーで酒飲んでるハゲ国王。

 その後ろには招かれていた勇者レイブ以下のパーティーが。

「あの人達は亜人じゃないか!魔族ではありません!」

「いいや、魔族だ。王都を破壊した罪を負うべきなんじゃ。そうしなければ王都の人々の心は休まらぬ」

「罪の無い人達におかしな理由を付けて危険な目に遭わせるのは止めて下さい!」

「勇者の分際で国王たる儂に盾突くつもりか?」

 国王の名の下で勇者に認定されたレイブは押し黙った。

 てかそこで押し黙っちゃっていいのか?


「本日はお日柄も宜しく処刑開始!」何故か全身包帯の逃げ恥騎士団長が処刑台に火を放つ!

 もうハゲ国王ニヤニヤが止まらない。処刑台の前面が燃え上がる!


 すると!

 処刑台前面から炎が地面を伝わって離宮正面に向かって走る!そして建物の中まで炎が続き…

 爆発!大爆発!再び中〇特撮みたいな大爆発!建物の感じかららしてエ〇パイの大倉山記念館みたいか?!

 今度は私の仕込みだ。処刑台に火を点ける者は自分の足元に火を点けられる覚悟をしろってもんだ!


「ぴょーん」ハゲ王様が爆発に弾き出されて空飛んだー!そして中庭の噴水におっこちたー。

「わーい」逃げ恥騎士団は一目散に逃げた。

「わーい」離宮のメイドさん達も一目散に逃げた。

「恩人殿ー!早く逃げるんだー!」遠くでハゲ国王抱えた勇者パーティーが走って逃げてる。


 逆に処刑台の炎は消えていた、というか私が消した。亜人達の何人かはこの茶番に噴き出していた。

「皆さんすみませんねー」と私は処刑台の拘束具を叩き割って亜人達を逃がす。

 そして最後に眼鏡っ子を助け出すと。


 彼女は豊満な胸の谷間から小さい銀の筒を取り出し、口に含んだ。

 その筒…笛から奇妙な音楽が聞こえた。

 そして、大地が揺れた!


******


 ゲヴァグヴォオオー!

 大地割りそそり立つ姿!咆哮と共に地底から巨竜が現れた!

 地上に現れた地底怪…もとい巨獣、じゃなかった巨竜は、四つ足で歩き、長い尾を振るった。

 眼鏡っ子は笛を奏でながら私と対峙した!

「イセカイマン!(ピー)私の使い魔とー(ピュロロー)戦いーなさいー(ペロロー)!」

 半分歌ってないかな?あれか?笛の音と合わせるためリズム取ってんのかな?

「今日がお前のー(ピャララ)命日だー」陰気な歌ァ!


「言っただろう?私は君を助けるって」

 巨大な地底怪…巨竜に立ち向かい、私は時間を止めた!そして腹をコルセットで無理くり抑えて鎧をえっちらおっちら着込んだ!んで光る魔石を用意して…時間再開!


「うおまぶし!」眼鏡っ子がひるむ中、私は巨大化&閃光&巨大化&閃光を繰り返し!

 地底巨竜に飛び蹴りをかました!すっ飛ぶ巨竜と離宮中央のドームが激突!豪華な内装が崩れ、ドームがはじけ飛んだ!やっぱりいいなあミニチュアワーク。ミニチュアじゃないけど。

「うきー!我が離宮がががー!」勇者に抱えられたハゲ国王が目玉飛び出させて喚く喚く。


 地底怪もとい巨獣じゃなかった巨竜…もう怪獣でいいや。地底怪獣は私に立ち向かうや、俊敏にジャンプをかます!巨体に似合わぬ動きを私は受け止め、投げ飛ばした!

 王都は三度パニックとなった。豪華な離宮は怪獣プロレスの会場となった。

 その危険な現場の中に立つ眼鏡っ子は、更に笛を吹くと…


 ゲヴァァアッ!ゲヴォァアアッ!

 王都の外壁を崩し、二匹目の怪獣が現れた!大きな頭と長い尾を振りかざし、ブっとい二本脚で大通りを離宮に向けて進撃して来る!

 よく見ると前回倒した奴にツノつけて色塗り替えた感じだ。早くも改造怪獣かあ!

 彼女の笛の音は止まない。高音を奏でると今度は空から甲高い鳴き声が響いた!


 巨大な翼を広げた翼竜の様な、しかし胴体が大きいマッハ怪獣が飛行音を響かせ空から迫って来る!

 三大怪獣が離宮に揃い踏みし、イセカイマンを取り囲んだ!てか私を取り囲んだ!

 おお!豪華複数怪獣登場回だ!セット広いな、今は無き11ステージかな?今日は盆か正月かな?


 等と緊迫感溢れるシチュエーションで緊迫感無い事考えたまま次回に続く!

 やっぱり豪華と言いつつ予算は2回で均等割りかぁ。

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