クリスマス




 こいつ、何で俺の実家のこたつで寛いで。

 寛いで、いる、の、か?

 よくよく見れば、死んだ、いや、腐敗しかけた魚の目になってないか?

 あれだけ眠っていても回復しきれてないのか。

 いや。そうだよな。

 回復できねえよな。

 この一万円のクリスマスケーキを丸ごと食うでもしねえと、回復できねえよな。

 だから、クリスマスケーキがある俺の実家に来たんだよな。


 母親、父親、妹が、にまにまにまにま笑いながら俺とこいつを見ている。

 あーなんかなあ。

 働かない頭でも何かを期待しているのが分かる。

 友人か、恋人か。

 クリスマスだし恋人か?

 まあ何か言われたわけでもなし、放っておこう。


 あ~~~。クリスマスケーキが骨身に染みる~~~。

 ちょっとしかねえし、噛みしめながら食おう。


「まあまあまあ。二人ともまだ疲れているみたいだし、今日は泊まっていきなさい」

「はい」

「ああ」


 疲れているから、しょうがない。

 拒絶より受容に流れるのは、しょうがないしょうがない。

 

 この日から、こいつが俺の実家を度々訪れるのもしょうが。

 ないか?







(2022.12.27)


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クリスマスケーキ 藤泉都理 @fujitori

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