変異先

 ある日親友が死んだ。だから俺はあいつの人生を代わりに生きることにしている。リアルが充実してるとは言いにくい俺には強くてニューゲーム状態なので俺は親友に感謝しつつ、最早あいつの面影は「変異した」からの存在した事実だけとなった。そんな中あいつの彼女だった俺の彼女と初めて会うことになった。


 歳のせいかヤることしか考えていなかった俺はできる最大限で女子ウケする服を選び、ホテルを予約した後プランを考えようと思ったが親友のことを打ち明けるながれなどは全て当日の俺に任せることにした。

 当日彼女は全身黒のワンピース、ノートが数冊入る大きさのブランドもののバッグを身に着けて時間ちょうどに厚底の短いブーツでやってきた。純粋に綺麗だった。

「これ、私の一張羅なの」

と言ってはにかむ彼女を前に俺はなす術がなかった。動揺しながらも似合ってると伝えると今度はふわりとした笑顔でありがとう、と返ってくる。俺はまさに幸せの絶頂期にいた。俺は服を褒められるついでにデートが初めてだったこととあまり金銭に余裕が無いことを見抜かれた。気分は言うまでもない。

 そして俺達はまず町の観光をした。モチーフの分からない像や無駄に高いタワー、広いだけの公園などを巡った後近くの有名だという定食屋で昼食となった。正直彼女の容姿はかなり浮いていたが、それでも美味しそうにハンバーグを頬張る彼女を見ているとそんな思いもすぐに無くなった。昼食後は町の探索の続きをすると称して少しずつ親友との思い出の公園に向かった。首元が一瞬ヒヤリとしたがなんてことは無い。ただの公園だ。ブランコが彼女に乗られてキィキィと呻いている。そんな彼女の隣に座り、俺の親友と事の顛末を話した。

 彼女は泣きだすわけでも嘘だと笑うわけでもなくただ一言

「そっか」

とだけ残して視線を厚底のブーツに移した。少しして立ち上がり、彼女は

「でも、私が好きなのはその親友君じゃない」

そう言うと彼女は心地よい西日に照らされながら微笑んだ。答えるように彼女を抱きしめると、どこか寒気がした。暖かい日差しの中。風は吹いていない。だが背筋の凍る思いだった。親友が見ていて嫉妬したのだろうか、誰の為にもならない良心がこの子と別れろと俺に訴えかけた。その良心は親友の声がした。

「ごめん」

そう言って俺はその場を逃げ出した。公園から彼女の叫ぶ声がする。ああ、こんな良心さえなければ

「「もう少しで、やれたのに」」

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コウフク論 くりぃむ @under-tale

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