第3話
その日の夕食は豪華だった。郷土料理なのだろうか、
「美味しい……」
出された
「よかった、よかった」
宏輝たちの食べる姿を見て、おばあさんは言った。
「
娘さん―—、
「そうそう、育ち盛り男の子って聞いていたから、唐揚げとかガッツリしたやつのほうがいいかなってさ〜」
おばあさんの息子さん―—、
“冬眠狩り”と聞いて怖くなったけれど、こうしてあたたかく迎えてくれて、味方になって守ってくれる人がいる。それを感じて、宏輝は少しホッとした。
「一輝君は中学生?」
宏輝の横に座る一輝に裕介さんが声をかけた。
「はい。中一です」
一輝はメガネをクイッとかけなおして答えた。
「ほぉ〜。一輝君は賢そうだ。裕介のときとは大違い」
おばあさんは笑いながら言った。
「お袋、今それ言うのかよ〜」
「そういえば、裕介君は勉強が苦手だったもんな〜」
あははと笑い声が響く。それに驚いて寝ていた裕介さんと美桜さんの息子、
「あらあら……」
美桜さんが抱っこすると那由他君はすぐに泣き止んだ。
「すごいなぁ……」
思わずまじまじと見ていたら、
「抱っこする?」
と美桜さんが言ってきた。
「えっ、いいの……?」
静かにね、と言いながら宏輝にそっと那由他君を抱かせてくれた。
ずしりと柔らかい重みがくる。あったかくって不思議な感じ。そっと触れるように人差し指を近づけると、小さな手が宏輝の指をぎゅっと強く握った。
宏輝は何だか初めて「いのち」に触れたような気がした。
小さくて、弱くて、でも愛おしいもの。守らなくてはいけないもの。
自分もそういう存在だったのだろうか。
そんなのことを考えていたら、那由他君がまたぐずり始めたので、美桜さんにお礼を言って那由他君を戻した。
その日は案内された部屋で兄と二人で寝た。慣れない布団のせいで、なかなか眠ることが出来なかった。
❄︎
翌日、冬眠先として案内されたのは保田家の離れだった。
保田家は築年数もそこそこの古い家だが、一方の離れはというと、わりと最近建てられたものらしく、洋風の造りをしたしっかりとした建物だった。
元々はおばあさんの旦那さん——、おじいさんの趣味のための部屋だったらしい。おじいさんは趣味で絵を描いていて、
けれど、実際に使うことができたのは半年ほどで、風邪を
「せっかく作ったのに、今は
玄関は寒くならないように二重にしてあった。寒い地域はそういうふうに作られることが多いらしい。
外のガラス戸を開けて、さらに奥の鍵のついた扉を開ける。
離れの中は、流しとテーブル、絵を描くスペースがあるシンプルな造りだった。部屋は一つしかなかったが、家具を片付ければ、眠るには十分な広さだった。どれも宏輝たちが来る前に綺麗にしてくれたらしい。埃は見えなかった。
「僕らが時々様子を確認するから安心してね」
部屋に飾られた絵を見てまわっていると、裕介さんが優しく笑いながら言った。
❅
実際に眠るのは予定では一週間ほど先だった。
自分たちの眠る時期は厳密には決められていない。だるくなるくらいの眠気が二日続いたらもう冬眠の合図なのだ。
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