第26話 みおみお先生と妹の成長

 その妹がいまいるバトントワリング部は愛里えりが高校三年生のときに新設された。

 「たしか、バトントワリング専門の先生が来たから、って、バトントワリング部ができたんだったよね」

 「うん」

 芳愛よしえは最高の笑顔に戻った。

 「みおみお先生、すごく優しいし、それに、教えてもらったとおりにやると、ちょっと前にできなかったところが、あれ、なんでできなかったんだっけ、って思うぐらいなんだよ」

 妹は、身を乗り出して、目を輝かせて言う。

 「それでもなかなかできなかったら、じゃ、こっちやってみようか、とか、別の目標を言ってくれるし」

 妹がその先生に懐いているのはよくわかった。同時に、指導者として全幅の信頼も寄せているのだろう。

 この「みおみお先生」というのが、そのバトントワリングの大会で全国レベルまで行った経験のある先生だ。しかも、生徒がたくさんいるバトン教室で先生のアシスタントをやっていたという。つまり生徒に実演を見せる役割だ。

 それは、すごいに決まっているのだが。

 みおみお先生。

 これがあだ名ではないのも、またすごいところで。

 本名で三尾みお美央みおというのだ。

 「だって、三尾って苗字の人が好きになって結婚したんだからしようがないじゃない」

と言って笑っていたのを覚えている。

 もっとも、結婚する前は小見おみ美央だったという話もあるので、あまり変わらないのでは、という気もするのだが。

 愛里は習ったことはないけど、だれにでも話しかけてだれとも仲よくなるというタイプの先生だった。担当科目は体育ではなくて家庭だったはず。

 芳愛はそのみおみお先生に指導してもらって、順調に成長しているらしい。

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