第19話 集めた情報をまとめよう


さてさて、奇しくも全員勢揃いしたんだな。


「ローガ達もヒヨコ隊長も良く戻って来てくれた。お疲れさん。早速だが、報告を聞こうか」


『ははっ! それでは我から報告を行いましょう』


ローガがずいっと前に出る。ヒヨコたちにも出来るところをアピールしたいのかな?


『この森から北にはしばらく行きますと大きな滝があります。滝壺はこの泉よりも大きく、より水の確保が容易になりましょう。周りの魔物は殲滅しないように指示を受けておりましたので調査程度にとどめておりますが、比較的大物としてはキラーグリスリーかジャイアントパイパーくらいが生息しているようです』


ふむ、この場所から北に行くと大きな滝があるのか。マイナスイオンを浴びに出かけるのもいいかもしれないな。


『北東には森の奥深くに<迷宮ダンジョン>がありました』


おおっ!<迷宮ダンジョン>! ファンタジーっぽいな。


「<迷宮ダンジョン>ってどんなものだ?」


『<迷宮ダンジョン>は魔物の住処ともいわれており、我々のようなもともと獣が魔素の取り込みで魔獣へ変化した種族の他に、ダンジョンの奥深く魔素の濃い地域から生まれ出でる者達もいます。ダンジョンの奥深くに潜れば潜るほど手ごわい魔獣が住むと言われております』


「へー、ローガは物知りなんだな」


『いや~、それほどでも』


と言いつつ、胸を張って相当尻尾をブンブン左右に振っているな。

褒められると嬉しいらしい。

部下は褒めて伸ばすことにしよう。


『<迷宮ダンジョン>はソレナリーニの町の冒険者たちが探索に通っているようです。同じような姿の連中が町と<迷宮ダンジョン>を行ったり来たりしております』


ああ、冒険者たちが稼ぎに来ているのね。そこそこ人が出入りしているのなら、ローガ達では中の調査は難しいな。


「さすがに<迷宮ダンジョン内の魔物調査は難しいか」


『そうですね・・・我々では人の目に留まるでしょうから難しいですね』


『それでは我々にお任せください』


と、ヒヨコ隊長か。

さすがに足元をちょこちょこ走り抜けるヒヨコは目立ちにくい?のかな。


「<迷宮ダンジョン>内でも視界は確保できるのか?」


トリ目って、暗いところはダメなんじゃなかったかな?


『大丈夫です! お任せください、ボス』


「わかった、今すぐじゃなくていい。<迷宮ダンジョン>に出かける前に調査してもらうとしよう」


迷宮ダンジョン>があるってわかった以上、一度は出かけてみたいよね。尤も人間の冒険者も頻繁に来ているようだから、今の姿のまま出かけて行くとこっちが狩られてしまう可能性が高いしな。対策を練ってからじゃないとだめだな。


「ヒヨコ隊長たちの調査はどうだった?」


「ははっ! ソレナリーニの町周辺および、町の中の情報を収集してまいりました」


ビシッと傅いて報告するヒヨコ隊長。ホントブレないね、隊長は。


『ソレナリーニの町は規模といたしましてはカソの村の軽く十倍以上はあるように思えました。町自体も町を覆う壁があり、四か所の入り口には兵士が二名待機しており、町に出入りする人間をチェックしておりました。町に入る際はどうも何かを渡しておりましたので町に入る際は何かアイテムが必要になると思われます』


「それはたぶんお金だな。金、銀、銅などの金属で出来ている丸いものだと思われる」


尤も、俺もこの世界に来てから一度もお金見てないけどね!

イリーナにこの国の事や通貨の事を後で教えてもらおう。

如何にポンコツでもそれくらいはわかるだろう。


『おおっ! ボスは物知りですな!』


ローガが俺を褒め称えているのでついつい胸を張って鼻を高くしよう。

スライムだから鼻も胸もないけどな!


「町中の雰囲気はどうだ?」


『街中はかなりの人間が生活しているようです。ボスのチェック要求がありました施設では、冒険者ギルド、商業ギルドがありました。その他宿屋、武器屋、防具屋、雑貨屋、錬金術屋などの名前も確認することができました』


「なるほど、思っている以上に店が充実した町のようだ。食事が出来るところも多かったか?」


『はい、人間がいろいろ食べている建物もかなり多かったです。いい匂いがしておりました』


『ピヨピヨ~(俺、人間に食べ物もらったぞ~)』


『ピ!ピヨッピ~?(なにっ! ホントか?)』


『ピヨピヨ~(あ、俺ももらった。うまかったな~)』


何だか知らないが、ヒヨコたちは人間にご飯を貰っていたようだ。

人気があって何より。


『情報としましては、裏通りにある鍛冶屋兼武器防具屋が知る人ぞ知る名品を扱う店らしいです。後、町の北側にあるスラム街では何やら不穏な動きがあるとか。その他代官のナイセーはこのあたり一帯を治めるコルーナ辺境伯の覚えも良く、評判が高いようです。町自体の評価も高いようで、今後の発展に商人たちが期待しているようでした』


おお、なかなかいい情報じゃないか。結構今でも発展しているようなイメージだけど、今後さらに発展して行けるような町なのか。ソレナリーニとかいう名前なのに全然それなりじゃないぞ、これは期待大だ!


『ただ、町の雰囲気をよく観察してきましたが、人間族以外の種族がほとんど見当たりませんでした。ボスが町に行く場合は工夫が必要だと思われます』


うん、ヒヨコ隊長。君は完璧だ。満点花丸をあげよう。


・・・おお? 気が付けば、イリーナ嬢が俺の横に正座して座っている。どーした?


「イリーナ嬢、どうした?」


「むっ、スライム殿。いい加減嬢付けもさん付けもやめて、どうかイリーナと呼び捨てで呼んではもらえまいか」


いや、その天丼もうお腹いっぱいですけど!?

クッダクいらないから!


あ、でもそう言えばスライムについて調べてきてくれるって言ってたっけ。


「・・・イリーナ。そう言えばスライムについて調べてきてくれるって言ってたね。何かわかったかい?」


俺はイリーナの方を向いて聞いてみた。


「イ、イリーナと呼び捨てに・・・、クッ抱く・・・あ」


いや、クッダク早すぎるからね! 妄想すっ飛ばしてますから! てか、「あ」って何? もしかして・・・


「ス、スライム殿に早く会いたくて・・・調べて来るのを忘れてしまった・・・」


やっぱりー!! ポンコツ過ぎるわ!

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