第6話 ジェット噴射で脱出しよう


(さてさて・・・、どうやってこの泉の底から脱出しようか?)


汚れた泉も浄化出来た。

これ以上俺が泉の底で魚のマネをしている意味も無いだろう。

もっとも、マンタの如く湖の底をふわふわと泳いでいるのも気持ちいいけどね。




どうやってこの湖の底から脱出するか。




まず、触手をプロペラのようにぶん回して上がれないか試しにやってみた。

だが、水中で全然素早く触手を動かすことが出来ない。水の抵抗は相当なものだ。


体をうすーく伸ばしてゆらゆらしてみても、ゆらゆらするだけで湖面に上昇することは出来ない。そりゃそうだわな、上昇する水流がないんだから。


後は空気を含んで、風船のように膨らんで上がっていくか、水圧をジェット噴流のように吐き出しロケットのように飛び出すか・・・


タコの口をイメージしてホースを作り泉の水を取り込む事は出来たんだ。

爆発的に吸い込んだ水を吐き出すイメージが完成すれば脱出も可能だろう。


まずは細いホースからより巨大な大筒をイメージ。タービンを回すかの如く巨大な渦をイメージして水を吸い込んでいく。


エネルギーをぐるぐるしながら吸い込んでいくので水の圧力がハンパないことになっている。


準備が出来たところで、その砲身ともいうべき大筒のような口を泉の地面に向ける。




ヒュィィィィィィィン




圧縮した水を一気に打ち出そうと体内の水をコントロールする。

なんだか巨大戦艦が波動砲でも発射しそうな雰囲気だが、ここは真面目に泉を脱出できるよう最善を尽くす。




(ファイエル!)




心の中で発射ボタンを押す。

心の掛け声が自由同盟側ではなく帝国側なのは特に意味はない。

そして一気に水が自分の体から出て行く感じがする。




(うぉぉ!?)




圧倒的な圧力がかかりスライムボディがひしゃげるように悲鳴を上げたかと思うと、カタパルトで打ち出されたかの如くの勢いで泉の中を上昇していく。




ザッパーーーーーーン!!




泉の水面を突き破るかのごとき勢いで飛び出す俺。




(うわわっ!?)




泉の真上、結構な高さまで打ち出される。このまま落下すると、また泉にぽちゃんして逆戻りになってしまう。それはまずい。永久機関になってしまう。ドーン、ポチャン。ドーン、ポチャン。


・・・ダレ得だよ。


そんなわけで、ポチャンしないように策を練る。




(秘技、スライムムササビの術!)




と言いつつ、体を薄っぺらく伸ばして風の抵抗を受けるようにする。


今考えれば落下傘みたいな形にすればよりゆっくり地面に降りられたのかもしれなかったが、今さら変えようとしても間に合わない。


ムササビっぽく風を受けてふわりと飛んでみたのは良いが、全くコントロール出来ず。


近くの木の枝にガサガサと突っ込む羽目になった。


近くにいた鳥が音にびっくりして逃げて行く。


(いや、悪いね、悪気があったわけじゃ・・・)


ガサガサと葉っぱや木の枝に突っ込んだものの、木の枝にひっかかり落下は免れたようだ。


と思ったのもつかの間、枝からずるりとスライムボディが落ちてしまう。




(わっ)




ドスン、ドタン、ボデン、ドサッ!




まるでパチンコの玉よろしく枝から枝へ落ちて行き最後は地面に墜落する。


(イタタタタ・・・って痛くはないのか、スライムだし)


結構な高さから落ちたはずだが、怪我などなく、痛みも無い。


この時ばかりはスライムボディに感謝だな。




(それはそうと、このジェット噴射、何か他にも使えないか?)




ということで、とりあえずいろいろ試してみることにする。


まずデローン型で立つ。周りからは見られない位置、つまり体下に発射口を準備。


弱い勢いで打つ。




ボシュン!




水の噴射とともに体がちょっと浮き上がる。




なるほど、いい感じだ。

噴射する強さと持続時間によっては空も飛べるかもしれない。

早速やってみる。




ヒュィィィィィィン!




ドパンッ!!




ブシューーーー!!




勢いよく噴射した水によって俺様は空中へ弾き飛ばされるように飛んでいく。




グラリ




体勢が傾いた瞬間、噴射した水を止めていないことに気づく。




あ、いかん。




無理に体勢を戻そうと捻ったため、その場でシュルシュルシュルとねずみ花火のように水を噴射したまま回転し出してしまった。とりあえず水を止めよう。


ひゅるひゅると地面に落下した俺はとりあえず一息つく。


あー怖かった。


そういや相当周りに水をまき散らしてしまったな。ついでだ。周りの森に水でもやるか。


潤いは大事だからな。


そう言って俺はスライムホースを泉に垂らすと、ホースをずっと長くして移動し始める。もう一本水を吐き出す側のホースを製作して移動しながら木々に水をやっていく。


イメージは消防車のポンプ車だな。


自分の体内に溜め込んだ水を使用するのではなく、吸い上げてそのまま噴射する感じ。


スライム生活に慣れてくれば、いろいろなことが出来そうだ。


俺は泉の周りにある木々に水をやりながらこれからの事を考えた。


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