第5話 泉の水を浄化しよう
・・・落ちたよ、落ちた。
ゆらゆらと現在泉の底に向かって沈没中。
どーしよう?
泉の底に沈んで行きながら、どうやって脱出しようか考える。
だが、俺様はラノベ大魔王! 読みまくったラノベの中にはスライムが活躍する話も多い。
そういやスライムが池の水を吸い込み、ジェット噴射のように吐き出してその推進力を脱出に利用していたような話もあったな!
俺も早速真似してみよう。
・・・・・・
口、どこ!?!?!?
ぜ~んぜん水を吸えない!
というか、口の概念がなかったわ! この残念スライムが!
と言っている間に泉の底に着いてしまった。
(どーしよう?)
泉は水面からの光が漏れ、多少ではあるが光が底にも届いている。ただ、全体に淀んでいるため、透明度はいまいちだ。
(とにかく、泉の底を這いずり回って探検だな!)
泉の底はヘドロが溜まっているようなことはなかった。
これで、泉の水そのものが汚染されていることが想像できた。
(ただ、長い間汚れた水が流れ込んで汚染されてしまっているのか、汚染源自体がこの湖にあるのか、見極めないとだめだな)
泉の底をスルスルと移動していく。体を広げるように移動していくと、浮力が働くのかふわふわとした感覚がある。
(まるでマンタにでもなった気分だな)
俺が気持ちよく泉の底を優雅に移動していると、何だか黒くなった魚が二~三匹俺を突きに来たので逆に取り込んで吸収してやった。
吸収するときに、何か毒とか悪いものがないか意識してみると、やはり具合の悪そうなものがあるのか、吸収する時に何か引っかかるような成分があるような気がした。そこで吸収する時にその成分だけ別にしようと頑張ったら、体内の一部にその成分だけ別に保管できた。・・・分離したこれが何かはわからんが。でもきっとヤベーやつ。
その他、泉の底に沈んでいた草や苔みたいな物も吸収していった。ちょっとずつ毒物っぽいものがあるらしく、別に隔離されていく。
・・・一回やると、次から自動的に隔離されていくな。結局これが何かわからんけど。
(ん?・・・何だ?)
何だか奥の方に淀んだ黒い靄みたいなものが体から出ているデカいトカゲみたいな生き物がいた。
(うわ~、絶対この泉が汚れているのはコイツのせいだよな)
トカゲモドキはこちらを見つけると泳ぐようにやってきて、大きな口を開けて襲い掛かってくる。
(ざーんねんだったな! 俺様という無敵スライムはお前のようなトカゲモドキの噛みつきなど効かないのだよ!)
俺様はトカゲモドキ全体を包み込むように体を左右に大きく広げていく。トカゲモドキは焦って爪を振り下ろして来る。水の中とは思えないようなスピードだが、それも俺様には効かないのだ。振り下ろされた前足ごと取り込んでいく。
思いっきり強力に消化するイメージを出すと、見る見るうちにトカゲモドキは俺様の体の中に吸収されていった。もちろんヤバイ毒っぽい成分は分離だ。
これで泉も平和になるだろう。
と、言っても自浄作用が働くのはずいぶんと時間がかかるだろうな。
だが、チートもスキルもないが、泉の主スライムくらいにはなれる気がしてきたぞ。
生きる希望が見えてきた!
俺様がラノベを書くなら、ザコキャラって自虐してビビってた主人公が急に無敵スライムを自称し出した件(笑)
・・・まあ、このまま泉の底で生活するわけにもいかんけど。
せっかくだから、泉をもっときれいにするためにひとつ俺様が一肌脱ぐとしますか。スライムだから肌無いけど。
ジェット噴射に失敗した俺は、まず水をどうやって取り込むか考えていた。
さっきのようにモンスターならその対象を包み込んでしまえばいい。では水ならばどうするか? その答えがこれだ!
俺はスライムの体の一部をタコの口のように丸く細くした。イメージはホースだな。
ここから水を吸い取る。
(おおっ! 成功だ。体内に水が入ってきたぞ)
タプタプと水を吸ってスライムボディが膨らむ。早速吸い込んだ水を毒素や汚れだけ分離してきれいな水にして放出しよう。
同じようにホースをイメージして伸ばした触手の先から綺麗にした水を放出していく。
(・・・・・なんだかオシッコしてる気分だな)
泉の水を浄化しているはずなのに、なぜか背徳感に襲われてしまった。
・・・・・・・・
ピュリファイピュリファイピュリファイ・・・
呟きながら延々と泉の水を浄化していく。
そして二か月後(笑) もういいって?
(うおっしゃー! カンペキだ!)
泉の底から水面を見上げる。僅かしか光を通さなかった泉は今、完璧な透明度をもって燦燦と太陽の光を泉の底まで届けている。泉の魚たちも質の悪そうな者たち以外は取り込むことをせず、自浄作用に任せている。そのうち泉の生き物たちも綺麗な水の中で生活することにより、生態系は回復して行くだろう。
(いー仕事してますねぇ)
俺は自画自賛で泉の底から水面を見上げる。
(・・・どーやって脱出しよう!?)
結局、問題は解決していなかった。
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